第14話 ウニョーン
暴れていた咲彩が静かに寝ているのを確認した所で、セラが部屋に戻ってきて、
「――モヤモヤを感じなくなったけど……終わった? あ、外は誰も来なかったから大丈夫だよ」
と、そんな言葉を投げかけてきた。
「ああ、見張りありがとうな。こっちはとりあえず……問題のない状態にはなったぞ」
「さすがトー兄様。あとは元凶をどうにかする感じ?」
俺の返事に、両手をパシッと合わせながら再び問いの言葉を紡ぐセラ。
「そうだな。……元凶は学校にいると考えるのが妥当な気もするが……セラ、さっき寝ている咲彩を発見した時に、纏わりついているのを感じていたと言っていたが、山の方からもそれを感じていたのか? 山の方を見ていたよな?」
「あ、うん……。咲彩お姉ちゃんに纏わりついていた黒い影みたいなものなんだけど、ウニョーンって感じで山の方から伸びていたんだ。トー兄様が咲彩お姉ちゃんを起こそうとした辺りで、それが薄くなり始めて、最終的にはウニョーンってなってた部分が完全に消えちゃったから、そっちは関係ないかなって、そう思ってさっきは言わなかったけど……」
セラが俺の質問に対し、左右に何かを引っ張るようなジェスチャーをしながら、そんな風に答えてくる。
「ウ、ウニョーン……?」
「ウニョーンはウニョーンだよー。こんな感じでウニョーンウニョーン」
かりんとセラがそんな会話をする横で、俺は顎に手を当てて思考を巡らせる。
……俺が咲彩を起こそうとした辺り……? もしかして、俺が睡眠魔法を解除する魔法を咲彩に使ったのが、意外な形で影響を及ぼした……のか?
もしそうだと仮定すると、山の中に『どこか』が存在しているという事になるが……その場合、今度は学校から山へどうやって移動したのかという話になる……
いや……『どこか』というのは、おそらく異空間かなにかだろう。
さっき、死獄の螺旋だの黄泉の冥闇だのと、それっぽい言葉を吐いていたしな。
であれば……学校と山、双方に入口があってもおかしくはない……か。
「な、なあ……ウニョーン――じゃなくて、咲彩はちゃんと目覚めるのか? このまま眠ったままって事はない……よな?」
雅樹が不安そうな表情で、咲彩と俺たちを交互に見て、そう問いかけてくる。
かりんとセラが、ウニョーンウニョーン言ってたから、一瞬引っ張られたな……?
「ああ。眠ったままだったのは、さっきの怨霊による呪いが『そういう状態にしていた』と考えて間違いない。で、今の魔法でその部分を無効化したから、肉体と精神の疲労が回復し次第、目覚めるはずだ」
「……その『回復し次第』つーのは、大体どのくらいなんだ?」
「そうだな……本人の回復力にもよるが、一両日中には回復すると思うぞ」
「一両日中……か。なら、一安心だぜ……」
俺の説明を聞いた雅樹が、胸に手を当ててほっと安堵の息を吐く。
「一両日中に目覚めるのなら、それを待ちましょうか。これ以上何かをするのなら、直接話を聞くのが一番早そうな気がするし」
「そうブルね。ブルルン、凄く疲れたブル。そろそろ温泉に入りたいブルよ」
かりんの発言に同意してそんな風に言うブルルン。
「……なあ、そのヌイグルミは一体なんなんだ? どこから湧いて出てきたんだ?」
「ブルルンは使い魔ブル。ご主人に呼ばれて顕現したブルよ」
「使い魔……! たしかに魔法使いと言ったら使い魔だよな!」
ブルルンの話を聞いた雅樹が、少し興奮気味にそう返す。
しかし……本当に雅樹は適応力が高いというか、今の状況をごくごく自然に理解し、そして受け入れているなぁ……
まあ、舞奈も似たようなものだったけど。
なんとも酷いサブタイトルに……
他にこれといって特徴的な会話がなかったもので……
それはそれとして、ブルルンが温泉温泉行っていますね……?
といった所でまた次回!
次の更新は、次の話が大分出来ている事もあり、再びいつもより1日間隔が早い形になりまして、明後日8月7日(日)を予定しています!




