第7話 舞奈の持ってきた物と隠蔽魔法
「あの子の所に調べに行くのは良いと思うけど、全員で行く必要はなさそうな感じだね。私は今の内に『上』に連絡して、少し調査を依頼しておくよ」
そう亜里沙が言うと、それに続くようにして、
「もし呪いだとすると、私が行っても出来る事はなさそうな気がしますね……。私は部屋に戻って、持ってきたノートパソコンで、この辺りの地図や伝承などを確認しておこうと思います。そっちから何か分かるかもしれませんし」
なんて事を言う舞奈。
「舞奈、そんなもの持ってきてたのね……」
「まあ……なにか調べようと思った時には、スマホよりもキーボードとマウスが使えるノートパソコンの方が楽ですからね。それに、そこそこスペック高いのでゲームも動きますし」
「……それ、キーボードとマウスも持ってきたって事よね……?」
「もちろんです。あ、ゲームパッドも持ってきましたよ! ちょっとかばんが重くなりましたが、身体強化魔法を使えば問題ないですし」
何故か自信満々にそう答える舞奈に対し、かりんがため息交じりに、
「……身体強化魔法を使ってまで、ノートパソコンを持ってくるというのが舞奈らしい……というべきなのかしらね。さすがに据え置きのゲーム機は持って来なかったみたいだけど……」
と言って、額に手を当てながらやれやれとかぶりを振った。
「――最初はどうしようかと思ったんですが、私が所持している据え置きゲーム機だと、一人用のソフトしか持ってなかったのでやめました」
「そう言われてみると、たしかにそうね」
「私たちが最近プレイしてるのも、携帯ゲーム機にも据え置きゲーム機にもなる奴だしねー」
「4人だと、ちょうど良い感じになるんですよね、あれ」
「舞奈お姉ちゃんがぶっちぎって稼いでるよね……今」
「分析能力が凶悪なのよ……。その前のアイテムをガンガンぶつけ合うレースゲームでは、1カップ4コース全てダントツの最下位だったから、ある意味ではトントンな気もしなくはないけれど……」
かりんがそんな風に言ってため息をつく。
あのゲーム、どこに行ってどんな物件を買うかとか、どのルートで進むかとかが割と重要になってくるからな。ゴールするだけが全てじゃないし。
状況を分析出来る舞奈には圧倒的に有利な気がする。
「――って、それはまあいいわ。舞奈は部屋に戻ってノートパソコンでゲームするらしいから、私たち3人で咲彩の部屋に行ってみましょうか」
「しませんよ!? ちゃんと調べますよ!?」
「冗談よ」
舞奈に対してそんな風に返しつつ、咲彩の部屋の方へと向かおうとするかりんを、
「ああ、待った。一応従業員専用区画になるから、隠蔽魔法で隠れて行った方がいいかもしれん」
と呼び止め、速やかに隠蔽魔法を発動する俺。
「よし、これで大丈夫だ」
という俺のその言葉に、セラがわざわざフロント係の前まで行って手を振りながら、
「凄い……! 目の前にいるのに全然気づかれない!」
と、そんな風に言ってくる。
「まあ……気配察知能力に優れた人間だと気づかれる可能性はあるけどな」
「そんな人、そうそういないと思うよ」
「そうですね。私たちも魔法を使った所を見ていなかったら、認識出来ていないと思いますし」
俺の発言に、そう返してくる亜里沙と舞奈。
……そんなものだろうか……?
「この隠形の魔法、私も覚えたいわ……。今は存在を希薄化する手段が、使えなくなってしまっているし……」
かりんがセラに同意しつつ、ため息交じりにそんな事を言う。
それに対して俺は、
「ま、舞奈の生命維持の為に霊体の特性の大半を失っているからな……。もっとも……そうしたのは俺なんだけど」
と言いつつ、頬を掻く。
「うぐっ。なんというか……色々とご迷惑を……」
「あ、ううん、仕方ないと思ってるわよ。舞奈を助けるにはこれしかなかったわけだし。それに……霊体よりも今のこの身体の方が、利点も多いし……ね」
かりんが舞奈にそう返した所で、俺たちの所に戻ってきたセラが、
「気づかれないのは分かったし、そろそろ行こうー」
と言ってきたので、俺は「ああ」と返事をして頷いてみせる。
「そうそう、もし何らかの大掛かりな魔法を使わないといけないような場合は、なるべく人に見られないようにしてくれよ? あの子の両親に見られる分にはまだいいけど、それ以外の宿の人とかに見られると、隠蔽するのが面倒だからね」
咲彩の部屋に向かって移動しようとした俺たちに対し、そう釘を差してくる亜里沙。
「分かってる。もし、そうする必要がある時は、見られないように注意するさ」
俺は亜里沙に答え、その場を後にした。
うーん……。まだなんとも言えないが、なんとなく大掛かりな魔法を使わないといけないような状況になりそうな気がしているんだよなぁ……。十分注意しないと。
と、そう思いつつ。
思ったよりも大分長くなったので、ちょっと話の進展が悪いですが、ここで一度区切りました。
主に、ノートパソコンとゲームについての部分で、想定外に会話が膨らんだというかなんというか……
なお、何のゲームをしているのかは……まあ、なんとなく分かるのではないでしょうか。
いずれどこかで、その辺のあれこれも外伝的に書いてみたい気はします。
とまあそれはそれとして、次の更新ですが……実はここで区切った事により、既にこの後の部分も出来上がっていたりします。
なので、ちょっとだけ微調整してすぐに出せる状態ですし、明日(7月22日(金)に)更新してしまおうと思います!
まあもっとも、今日の話よりは短くなるとは思いますが……




