第6話 黒い影
その後、咲彩の現状について聞いた所で、話は一旦区切りがついた事もあり、咲彩の両親は仕事と咲彩の看病に戻っていった。
それを見送った所で、
「……さて、しばらく出来る事はなさそうだけど、この後どうしようかしらね?」
と、かりんがそう告げると、鈴花が、
「あ、私は、ちょっと行ってみたい所があるんだよね」
と言って紘都の方を見た。
当然ながら紘都は、
「うん。じゃあ、僕もそれに付き合うよ。行ってみようか」
と返した。
どこへ行くのか気にはなるが、まあ邪魔をするつもりはないので、後で聞くとしよう。
「俺は一旦部屋に戻ってから、咲彩の様子を見て来るわ」
雅樹は、ある意味わかりやすい行動だな。
◆
――というわけで、再び先程の4人にセラを加えたメンツになった。
「……ところで、さっきから疑問に思っていたのですが、普通にオカルトな話をしていたのに、随分とあのふたりは理解を示している感じでしたが……もしかして、千代田さんの所と何か関係が?」
と、そんな疑問を口にする舞奈。
……千代田? ……ああ、桜満の事か。
うーん……。いつも桜満と呼んでいるせいで、急に名字で言われると、一瞬誰だか分からなくなるなぁ……と、そう思いながら、
「言われてみるとたしかにそうだな……」
と、舞奈の発言に同意しつつ亜里沙の方を見る俺。
すると、亜里沙は、
「ああ、ふたりとも昔は刑事だと言っていただろう? 現役だった頃に、警察の中に存在している『そういった部署』とも何度か協力した事があったらしいんだ。で……今回、ふたりはその伝手を使って色々と情報を収集していてね。『私たちの事』もある程度知っているみたいなんだ。それについて、さっきふたりが何も言わなかったのは、一種の『暗黙の了解』という奴さ」
などど、肩をすくめながらサラッと言ってきた。
つまり……あのふたりの前であれば、『その手の情報』を隠す必要はないって事か。
「なるほど……そういう事ですか。それならば納得です」
そう舞奈が言った所で、そこで今まで無言だったセラが、
「だとしたら、アレについてもふたりに話していいのかな?」
なんて事を唐突に口にする。
「アレ? もしかして、咲彩を発見した時に無言でじっと山の方を見ていたのが、何か関係していたりするのか?」
そう問いかけると、セラは俺に頷いてみせ、
「うん……。実は……咲彩お姉さんに、黒い影……のようなものが纏わりついているのが、その時からずっと見えてたんだけど……なかなか話せるタイミングがなくて……」
と、そんな風に言ってきた。
……黒い影のようなもの……?
俺は、すぐさま咲彩の部屋のある方へと意識を集中してみる。
……なるほど。黒い影かどうかは分からないが、たしかに魔力を感じるな。だがこれは……
「セラの言う通り妙な物を感じるな……。魔力は魔力なんだが……怨念のような力で歪められているというか……例えるなら……そう、高位のアンデッド、デーモン、ドラゴンなんかが使う、呪法や呪術のそれに近い」
俺が感じ取れた魔力についてそう述べると、
「そうね。たしかに感覚を研ぎ澄ませてみたら、あの子が寝かされている部屋の方から、邪な気を感じられるようになったわ。……かなり薄い……いえ、何かで『隠されている』せいで、集中しないとすぐに感じられなくなってしまうけど」
などと、俺に対して頷きながら言ってくるかりん。
「ふたりの話からすると、咲彩さんになんらかの『呪い』を植え付けられている……と、そう分析出来るのですが……?」
「そうねぇ……。呪いというのは、相手にバレないようにかける事が多いという性質上、『それ自体がわかりづらく――感知しづらくなっている』……そういう代物が多いわ。だから、その可能性は大いにあるわねぇ」
かりんの発言に対し、かりんが頬に人差し指を当てながらそんな風に答える。
それに関しては、向こうの世界でも同じだったな。
「うーん……たしかに呪いの可能性は高いが……。ふたりに話す前に、もう少し詳しく調べてみたい所だな。――とりあえず、咲彩の所に行ってみるとするか」
そう俺が口にすると、セラがビシッと右手を上げて、
「私も行く……!」
と、力強く宣言してきた。
おおぅ。なんだか良くわからないが、随分とセラがやる気だなぁ……
冒頭の部分、前回の話に含めても良かった気がちょっとしていたりします……
といった所でまた次回!
次の更新は平時どおりとなりまして、7月21日(木)を予定しています!




