第4話 咲彩の両親
「うちの娘を運んできていただき、感謝いたします」
一段落した所で、咲彩の父親――板長らしい――から、感謝を述べられた。
「いえ、さすがにあそこで寝かせたままにしておくわけにはいきませんし……」
「そうっす。当然の事をしただけっす」
俺たちを代表するようにそんな風に言う亜里沙と雅樹。
「それにしても……まさか、雅樹君が訪ねてくるだなんて思わなかったわ。ここに引っ越した事を伝えられなかったと咲彩からは聞いていたのに」
雅樹の言葉に対し、そう言ったのは咲彩の母親だ。
そしてそれに続くようにして、咲彩の父親が、
「そういえば、咲彩が手紙を送ろうとしたものの、住所が分からずに断念したのだったな。いずれ、直接行ってみるなどと言っていたが、さすがに遠いから簡単に行くわけにもいかなかったし」
と、先ほどとは変わって、少し崩した口調でそんな風に言う。
「え、えっと……まあ、なんというか……そこらへんは色々な偶然が重なったというかなんというか……」
雅樹がどう返事をするべきか困った表情で、頭を掻きながら、そう口にする。
……『なんというか』って2回言ってるし……相当だな。
仕方がない……
「そうだな。――『オカルト研究部の課外活動の一環』としてここに来たのは、ある意味運が良かったと言えるな」
そんな感じで、雅樹のフォローをしておく俺。
ちなみに『オカルト研究部』というのは、無論出発前に亜里沙が言っていた通りなのだが……何故そうする事になったのかというと、亜里沙が言うには、そんな風に言っておけば『魔法』や『霊的な存在』――あるいは、『破壊の化身の魂の欠片』が絡む『何か』が起きても、誤魔化しやすい……と桜満が言っていたのでそうしただけで、特に深い意味はないらしい。
だが、たしかに言う通りかもしれないな。
てな事を考えていると、亜里沙が首を縦に振って「うん、たしかにね」と同意した。
そしてそのまま咲彩の両親の方を向き、続けて問いの言葉を投げかける。
「ところで……娘さん――咲彩さんは、寝付きが良いというか……一度寝たら簡単には起きないとか、急に寝てしまうとか、そういうのがあったりするのですか?」
「いえ、そのような事は今まで一度もありませんね……。まあ、寝付きは良い方だとは思いますが……」
「なるほど……。そうなると……あそこで寝ていたのが、やはり謎ですね……。『何か』によって強制的に睡眠状態に陥った……と考えるべきでしょうが……」
咲彩の母親の言葉を聞いた亜里沙が、頬に手を当て小さいくため息をつきながら、そんな言葉を紡いだ。
――『何か』の部分を少し強めに言ったり、何やらわざとらしい仕草をしたりしているが、両親から少しでも情報を聞き出す為の『思考誘導』といった所だろうか。
「……それなのですが……」
亜里沙の誘導の効果があったのか、しばしの思案の後、そう呟くように切り出す咲彩の母親。
「……? なにか気になる事でも……?」
「あ、いえ……。その、寝ていた理由とは無関係な気もしたもので……」
首を傾げる亜里沙に対し、咲彩の母親はそんな風を返して、告げようとした言葉を飲み込んでしまった。
うーん……。これは少し強めに一押しすれば、話す気になってくれそうな気がするな……
よし、ここで『亜里沙から聞いた情報』を告げるとするか。
今回は、話的にはあまり進展していませんね……
といった所でまた次回!
次の更新は平時通りの間隔となりまして、7月15日(金)を予定しています!
※追記
オカルト研究部云々の所で、文脈がおかしくなっている所があったので修正しました。
また、上記を直す際に前後の繋がりが不自然になった為、そちらも調整しました。




