第145話 雅樹へ伝える話
SCROLL1の最終話です!
――黒野沢の一件から1週間ほど経過したある日の昼休み……
『前に相談されていた『食堂をやっていた一家』の引越し先だけど、判明したよ』
学食で皆――雅樹、紘都、鈴花、舞奈、かりんの5人――と共に昼食を摂っていると、桜満からそんなメッセージが届いた。
『ほう、さすがだな。それで……どこなんだ?』
『東北も東北、もう北海道が近いくらいの場所だよ』
俺の問いかけにそう返しつつ、青い線が下部に引かれた良くわからない文字列――たしか、URLとかいう代物だったか――をメッセージにくっつけてくる桜満。
それを指で押してみると、画面に、とある温泉旅館の紹介ページが表示された。
なるほど、この旅館がそうなのか。
たしかに位置的には、この島国の中心になっている一番大きい島――『本州』と言うんだったか――の最北端に近い場所だな。
というわけで早速、正面の席に座る雅樹に声をかけ、スマホごと旅館の紹介ページを見せる俺。
「ん? これって、温泉旅館のサイト……だよな? これがどうかしたのか?」
「この旅館が、この間雅樹が話していた『食堂をやっていた一家』の引っ越した先だそうだ。少し前に知り合いに、暇があったら調べておいてくれと言ってあったんだが、今さっき判明した」
「マジか!?」
「えっと……その知り合いって何者……?」
俺の説明に対し、雅樹と鈴花からそれぞれ異なった反応を返してくる。
「あー……まあ、警察関係者……だな」
「それも、結構な地位の、よね」
俺の返答にそんな付け足しをするかりん。
「そ、そんな所に知り合いが……?」
「ま、色々あってな。……っと、それより雅樹、例の旅行券まだあるだろ? それを使ってここへ行くのはどうだ?」
鈴花に話をすると、あれこれ追求されそうなので、さらっと話を雅樹の方へと切り替える。
「あ、ああ、たしかに行けるな。行けるが……」
「行けるが? 何か問題でもあるのか?」
歯切れの悪い雅樹に対し、首を傾げつつ問う俺。
「いや、その……な、なんつーか……俺ひとりで行くにはちょっとこう……ゆ、勇気が出ないというか……」
なんて事を、少し顔を赤らめながら言ってくる雅樹。
「いや、勇気が出ないって……」
「何故そこでチキンになるのかな……」
俺と紘都が呆れた表情でそう返すと、雅樹は、
「そ、そう言われても、いざとなると……なんかこう……な」
などという要領を得ない返事をしてきた後、
「そ、そうだ! ふたりも一緒に来てくれ! 無論、費用は俺が――っていうか、旅行券で補う! 額面的には3人でも余裕だかんな!」
なんていう、想定外の事を言ってきた。
まあ、20万円分もあるのでそりゃ余裕だろうが……どうすっかな。
と、そう思っていると、
「待って待って! それなら私も行きたいっ!」
と、鈴花がガタッと腰を浮かせて食い気味に言ってきた。
「温泉……良いわね。私も行きたいわ」
「ですね!」
かりんと舞奈までそんな事を言ってくる。
「いや、さすがに20万円分の旅行券で6人分っつーのは厳しくねぇか……」
と言って自身のスマホを取り出して何かを調べ始める雅樹。
「ああ、俺と月城とかりんは『別の報酬』で行けるから、もしこの6人で行くっていうんなら、旅行券は残りの3人で使えばいいぞ」
舞奈やかりんも行きたいと言っている事もあり、俺はそんな風に告げる。
「マジか!? じゃ、じゃあもうこの6人で行く……か? ちょうどゴールデンウィークだし、開校記念日の休みを合わせると、今年は10日以上休みがあるしな。まあ、予約が取れりゃあ、だが」
という雅樹の問いかけに、
「うんまあ、僕に異論はないよ」
「同じく!」
「はい、皆さんで行きましょう!」
「そうね」
紘都、鈴花、舞奈、かりんが続けてそう答えた。
その事を桜満に伝えると、『引率役』として亜里沙を連れて行くと良いと言われた。
そして『今、予約も取った』と、そんな風に言ってきた。……よ、よく取れたな。
ともあれ、あっさりと予約が取れた事もあり、その事を皆に伝えると、
「お前の知り合い、すげぇな!?」
「それで? その予約した日っていうのは、いつ?」
と、驚きの声を上げる雅樹と、特に驚きもせず日にちについて問いかけてくるかりん。
というか、かりんがやたらと目を輝かせているな……。そんなに温泉が好きなのか?
「ああ、日にちだが――」
俺はそう切り出して、皆に桜満から送られてきた予約日を告げるのだった。
そんなわけで……SCROLL2のメインの舞台は、東北地方の温泉地です!
今作はSCROLL(章)ごとに大きくメインの舞台が変わる想定です。
(一度行った所であれば、魔法(転移門)で簡単に行き来出来るので、こういう形にしています)
ただ……肝心のSCROLL2に関してなのですが、プロットが(一度大幅に書き直した為)まだ完成していない状態でして……
誠に申し訳ありませんが、SCROLL2の開始まで1ヶ月くらい間が空くと思います…… orz
ゴールデンウィーク中に一気に進める事が出来たら、もうちょっと早くなるかもしれませんが、とりあえず次の更新に関しては、約1ヶ月後だと思っていただけますと幸いです……




