第14話 弓道場にて
――というわけで、早速弓道場へとやってきた俺たち。
ふーむ……。部員の数は、多いとも少ないとも言い難い感じだな。
弓道場の広さを考えたら、丁度いいと言えるかもしれない。
なんて事を考えていると、
「あ、兄さん、紘都兄ぃ、おかえりなさい。……って、そっちのふたりは?」
と、ひとりの女子生徒が声をかけてきた。
兄さんと言っているので、千堂部長の妹だろうか? 紘都とも随分親しそうだが。
「先日話題に上がった編入生の成伯と、その成伯に校舎の案内をしている月城だ」
「ちなみに、僕と同じクラスだよ」
「あっ、そかそか! そういえば言ってたっけね。――私は千堂璃紗。言わなくてもわかると思いますが、そこの部長の妹です。あと、紘都兄ぃとも一応幼なじみですね」
千堂部長と紘都に紹介された璃紗がそう告げてくる。
「紘都の幼なじみって雅樹だけじゃなかったんだな」
「あー、言われてみるとたしかに一応そうなるかも……。まあ、小学校も中学校も違うんだけどね」
そう返してくる紘都に、俺は首を傾げる。
「うん? どういう事だ?」
「ウチは川を渡った所にある神社でな。守谷やその両親とはその関係で祭りとかの行事があったりすると、良く顔を合わせる事が多かったんだよ」
と、千堂部長。川というのは学校のすぐそばを流れる川の事だろう。
「問題はその川でして……あそこを県境にしている関係で、向こうとこちらで、小学校と中学校は学区が異なるんですよ」
千堂部長と璃紗が、紘都に変わってそんな説明をしてくる。
「なるほど、そういう事か」
そういえば、向こうの世界の日曜学校的な存在である小学校や中学校は、学区というもので通う学校が決められている……と、資料で読んだ記憶があるな。
んで、高校も公立の場合も各領……じゃなかった、都道府県の枠に縛られるらしいけど、この学校は私立なので、そういった枠とは無関係であり、こうして同じ学校に通っている……というわけだな。
「それで、成伯先輩は弓道部に興味があるんですか?」
「いや、むしろ俺が興味をもって連れてきたんだ。少しばかり弓の技を見せてもらいたくてな」
璃紗の問いに、俺が答える前にそう答える千堂部長。
「兄さんが興味を持つなんて珍しいね。――あ、弓はこれを使ってくださって良いですよ」
そんな風に言いながら俺に弓を手渡してくる璃紗。
「ああ、ありがとう」
俺はそれを手に取り、そして気づく。
弓道には射る時に作法がある、という話だったが、その作法を俺は何ひとつ知らないという事実に。
「あ、そういえば……弓道には作法というのがあると聞きましたが……俺は弓が扱えるだけで、作法までは知らないのですが、そこら辺はどうすれば良いでしょう?」
考えても仕方がないので、素直に千堂部長にそう問いかけてみた。
「なーに、今回は弓道としてやるわけではないし、作法など気にせずとも構わんよ。向こうの的に向かって、射て見せてくれればそれでいいさ」
そう言って、ここから30メートル程度離れた場所に並べられている的を、指差す千堂部長。
ふむ、なるほど……。方法はなんでもいいからアレを全部射抜けばOKって所か。
弓道としてやるわけではないなら、どうにかなりそうだな。
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本日は、あと1話投稿します!
※追記
2012/12/15
璃紗のイメージ絵を追加しました。
今回は大分修正しました……
(興味のある方は活動記録を御覧ください)




