第140話 先行する者
「ブルルン! 舞奈の頭上で舞奈たちのサポートしておいてくれ!」
「了解ブル!」
俺の指示に対してそう返すなり、舞奈の頭上へと移動し始めるブルルン。
更にそれと同時に、防御支援タイプの魔法を後方から舞奈たち全員に付与した。
――よし、これである程度は問題ないだろう。
俺は敢えて戦闘に参加せず、後方でそっと自身に隠蔽魔法を使った。
この状況下なら、俺ひとりであればバレないのではないかと考えたからだ。
そして……それは正解だった。
魔法を使って加速すると、舞奈たちを追い抜き、迫る異形たちの合間を縫って先へ先へと進む。
遂に異形の姿が見えなくなり、通路と階段のみが続く。
かなり下へ……地下へ下りて来たな……とそんな風に思いながら進んでいくと、唐突に扉が現れた。
ふむ……他に通路はないな。扉を開けるしかなさそうだ。
俺はトラップや待ち伏せを考え、慎重に目の前の扉を開ける。
だが、トラップも待ち伏せもなく、そこには大きな部屋――否、部屋と呼ぶにはあまりにも広すぎる空間があるだけだった。
多数の培養槽が整然と並んでおり、その全てに、赤、青、緑色のいずれかの液体が満ちている。
「くっ! 防衛用の人造モンスターが押されているだと!? 何なんだ、あのふたりの女子生徒と養護教諭はっ!」
いきなりそんな声が聞こえてきた。聞いた事のない声だが、おそらく黒野沢だろう。
発した言葉の内容からすると、俺がここにいる事には、まだ気づいていないようだ。
俺は隠蔽魔法を維持したまま声のした方へと向かう。
と、程なくして、男――黒野沢の姿を見つけると同時に、
「……ええい、くそっ! 実験結果は既に転送済みだ……この施設が失われるのは惜しいが、他の場所で製造も研究も可能だ。……爆破装置でこの施設ごと奴らを葬り去ってくれるっ!」
なんていう物騒な言葉が聞こえてきた。
一瞬、俺に対して言っているのかと思ったが、依然として気づいている様子はないので、どうやら独り言のようだ。
想定外の事態に激昂しすぎて、考えている事が全て口から発せられてしまっている――要するに、つい叫んでしまっている……といった感じだろうか?
まあ何にせよ、爆破装置なるものを起動させるわけにはいかない。
加速魔法で速やかに黒野沢に近寄ると、腕力を増強。
黒野沢を掴み、勢いよく引っ張りながら後方へと投げ飛ばした。
「がっ!? ぐはっ!?」
カチャカチャとキーボードを叩いていたので、そこから奴を引き剥がせば、とりあえず大丈夫だろうと仮定して実行に移したが……これでは不十分な可能性もゼロではないか。
警戒を怠らないようにしないと駄目だな。
そんな風に考えた所で、床に倒れ込む形になった黒野沢が俺の姿に気づいたらしく、「なっ!?」という驚愕の声を発しつつ、俺を凝視してきた。
ま、さすがにあんな事をすれば、隠蔽魔法の効果は切れるからな。
「き、貴様は……転入生の……!? ――貴様は……貴様たちは一体何者だ! どうしてあんな常人離れした動きが出来る! 特に貴様! どうやってあの群れをすり抜けたのだ!」
なんていう問いの叫びを、困惑と憤怒の入り混じった表情で発する黒野沢。
やれやれ……質問はひとつずつにして欲しいものだ。
ようやくここまで来ました……SCROLL1も大分長くなりましたが、もう少しで決着です。
といった所でまた次回! 次の更新は、4月13日(水)を予定しています!
……が、その次は最近多くて申し訳ありませんが、1日多く間が空きそうな感じです……




