第137話 マジック・プラクティス
何故かりんは舞奈のその蛮行を止めなかったのだろうか……?
そう思い、かりんの方へ視線を向けてみると、かりんは俺の視線に気づいたのか、目の前のオークもどきを倒し終えるなり、
「……言っても聞かないから諦めたわ……。それに、もう二度と殺されるような不覚を取らないようにするためだ、自分の命は自分で守るためだ、なんて言われたら、全力で止めるのも何か違う気がしてね……」
なんて事を言って肩をすくめてきた。
「……成伯さんやかりんにこれ以上迷惑をかけるわけにはいきませんし、何より……私自身が、魔法の力を行使出来るのにも関わらず、それをまともに使う事なく殺されたのが嫌なんです。……力不足はもう嫌なんです。このままじゃ、私は以前と……何も変わりません。『お祖父様を超える』という目標を達成する事が出来ません」
と、そう言いながら掴んだままのハーピーもどきを放り投げ、コボルトもどきを吹き飛ばす舞奈。
……なるほど。なんとなくだが舞奈が思っている事は理解した。
元々舞奈が魔法を覚えようとしていたのは、不足している運動神経を魔法で補い、舞奈のお爺さんの技――古武術の技を物にして、出来る事ならお爺さんを超える為だったしな。
あんな風に一方的に殺されるようじゃ、話にならないと思っているんだろう。
たしかに今の舞奈の魔法はそこまで強力じゃないし、古武術の技を会得するに至るにはまだ遠い。
だけど、だからといって気絶するまで練習を続けるのはさすがにな……
そう考えた俺は、
「気絶するまで練習するのは、あまり効率的、効果的とは言い難いな」
と言いながら、魔法の矢を乱れ撃ちし、とりあえず手近の邪魔な異形数体を纏めて蹴散らした。
そして、舞奈の方を見て告げる。
「だから、しばらく俺が教えてやろう。『効率的に』強化出来るようにな」
そう、こうすれば無茶する事なくしっかり強くしてやれるというものだ。
「えっと……でも……これ以上迷惑は……」
「あー、いや……実の所、気絶するまで練習される方が問題でな……。なにしろ、俺とかりんとブルルン、そして月城は、月城の生命を維持するために『繋がって』いる状態だ。だから、舞奈の気絶は俺たちにも影響を少なからず及ぼすんだよ」
「た、たしかにその通りブルね!」
俺の言葉に続くようにして、そんな風に同意するブルルン。
……いや、正確に言うなら同意するフリだな。
舞奈が何回気絶しようが、俺たちに悪影響は一切ないからな。
俺の発言は、あくまでも舞奈に今の方法を止めさせるための方便でしかない。
……というのを分析されたりしてないよな……
と、少し不安になったが、
「そ、そうだったんですか……。そ、それは申し訳ありません……」
なんて事を心底申し訳なさそうに舞奈が言ってきたので、大丈夫そうだ。
……ああでも、ちょっと強めに言い過ぎたかもしれないな……
舞奈の表情を見ながら、そんな風に思う俺だった。
割と普通に会話していますが、一応戦闘中なんですよね……(汗)
とまあ……それはそれとして、次の更新ですが……
少々予定が詰まっている関係で、なかなか時間が取れない為、少し空きまして……4月3日(日)を予定しています。
ここの所、間隔が空きがちで申し訳ありません……
※追記
次回の更新予定日が誤っていたので修正しました。4月3日です!




