第132話 校長の行方
――千堂璃紗の一件から3日後……遂に校長――黒野沢の行方が判明した。
「ふむ……川沿いの廃工場か。まさかそんな所にいるとはな」
「正確には元廃工場、だね。新しい会社が買い取って既に稼働しているし。……まあもっとも、その会社はペーパーカンパニーだったし、近隣の住民も稼働している事は知らなかったくらいだけど」
俺の言葉にそう返し、やれやれだと言わんばかりに首を横に振る桜満。
「ちなみに、どうやって判明したのですか?」
「近隣の住民から『夜な夜な幽霊や怪物を見かける』とか『唸り声のようなものが聞こえる』とか、そんなオカルトめいた話を聞けてね。もしやと考えて調査したら……」
舞奈の問いかけに対し、桜満がそう返事をし、
「大当たりだったってわけね」
と、かりんが言葉を引き継ぐ形で言って、そして問う。
「それで……確保は出来たの?」
「出来た……と言えれば良かったんだけど、殊の外抵抗が激しいというか……『魔物』と呼ぶのがふさわしいような、そんな異形どもが多数徘徊していてね、容易には近づけない状況なんだよ……。偵察を行った者たちからは銃を何発か撃ってみたが、まったく倒れないどころか、負傷を気にする素振りすらなかったと言われたし」
そんな風に説明する桜満。
ふむ。高い生命力があり、なおかつ痛覚が皆無か、ほとんどない……って所か。
「魔物と呼ぶのがふさわしい異形……ですか。それって……」
「うん。例の異形化する因子を組み込まれた実験動物、あるいはホムンクルス……もしかしたら、何らかの方法で攫ってきた人間そのもの……って可能性もあるかな」
「なるほど……既に量産されていたという事か」
桜満の舞奈に対する返事を聞き、俺がそう口にすると、
「なら、学校に設置されていた諸々の装置は、あくまで研究用だったという事ね」
と、俺の言葉を引き継ぐように言うかりん。
「ま、そういう事になるね」
桜満が肩をすくめてそう答えると、
「ロクでもない事するブルね……。それと……規模を考えると、その校長という人間ひとりの所業じゃないブルよね」
なんて事を身体を左右に振るわせながら言うブルルン。
「そうだな……。ちなみにその工場を買い取った人物が誰なのか判明していたりしないのか? その人物を見つけ出せば裏にいる存在も分かりそうだが……」
「……例のショッピングセンターの駐車場で殺された男だったよ。そして、あの男が買い取ったペーパーカンパニーの社長という『設定』になっていた」
俺の問いかけに対し、そう答えてくる桜満。
「設定……。つまり、あの人の経歴は完全なウソ――偽装だったという事ですね。しかも、他にもいくつもの偽装がされていた……と、そんな感じですか」
「うん、その通りだよ。さすがの分析力だね」
桜満は舞奈の言葉に頷き、そんな風に答えると一度言葉を切り、腰に手を当ててため息をついてから、
「お陰でバックに存在する企業についてはさっぱりさ。稲郷を中心とした班が調査を続けているけど、正直尻尾を掴む事すら難しそうな状況だよ」
と、そう言葉を続けた。
ふーむ……そういう状況か。真の黒幕まではまだまだ遠そうだな。
校長を確保する事で、少しでも手がかりを得られればいいんだが……
クライマックスが近いと言ってから、思ったよりも長くなってしまいましたが、ようやく今度こそ、この章のクライマックスが見えてきました……
といった所でまた次回! 次の更新は普段の間隔通り、3月16日(水)を予定しています!




