第126話 考える舞奈
タイトルからも分かる通り、今回は舞奈視点です。
「か、かりん、大丈夫ですか?」
なにやら苦しそうな表情をしているかりんに対し、私がコピーした符を渡しつつ、そう問いかけると、
「ま、まだ大丈夫だけど……。正直、相手の抵抗が……思った以上に早く……強くなってきてて、ちょっと……このままいったら……マズイ、わね……っ!」
などと、返事をしてきました。
「たしかに、符の消費がさっきよりも激しくなっていますね……」
少し余裕のあった先程までと違って、今はもう私が生成する端からどんどん消耗されている状態です。
生成速度を上げてはいますが、これ以上はさすがに厳しいですね……
と、思いながら符をコピーし続けていると、
「舞奈……。符をコピーする速度を……上げるとか、出来ない……かしら……っ?」
なんて事を苦しげに、しかし申し訳なさそうな顔をしながら言ってくるかりん。
「すいません……実はもう既に上げていまして……。これ以上の速度にするのは、さすがに厳しいというか……どうしても粗悪品になってしまいます」
そう返しつつ、模倣魔法を発動。
生み出された模造品の符を舞奈へ渡していきます。
「模造品でも符術が維持出来るのは、完全に同じだと言っても過言ではないほどのコピーをしているからこそなので、劣化した粗悪品では、おそらく符術が崩壊してしまうと思います……」
「でも……このままだと……多分、追いつかなくなる……わよ……っ! 既に、徐々に……崩壊し始めて、いるし……っ!」
そんな風にかりんが言葉を返してきた通り、少しずつ拘束する符の数が減っていっているのが、私の目にも良く分かる程です。
なので、かりんの発言がもっともな事は理解しています。
しかし、そうだからと言って粗悪品を作り、符術が崩壊してしまったら元も子もありません。
成伯さんの進行状況はどうなっているかと思い、符をコピーしつつ目だけ向けて見ると、大量の魔法陣と魔法文字と思しき見た事のない大量の文字が成伯さんを中心に描かれ、そこから更に異形へ向かって魔法文字の羅列によって作られた線が幾重にも走っていました。
魔法陣の数は変わらず、魔法陣から伸びる線の数がさっきよりも増えていますね……。
という事は、あの魔法陣全てから線が伸び切れば完了……といった感じでしょうか。
そう仮定するなら、残りは1/3……
これまでの時間から考えると……やはり、符の消耗度合いが危険な状態ですね……
「かりん、逆に符の消耗を減らすにはどうすれば良いんです?」
「……あいつの抵抗を……阻害する……。意識を、符の拘束から……そらす……とか、かしら……ね」
私の問いかけにそう答えてくるかりん。
それを聞いた私は、符をコピーする手を緩めないように注意しつつ、思考を巡らせていきます。
――抵抗を減らす……? 意識をそらす……?
うーん、横から攻撃を仕掛けてみるとか……でしょうか?
ダメージを受ければ、さすがに符術への抵抗は弱まるでしょうし。
……でも、それは駄目ですね。
それだと、成伯さんの展開している術式を確実に阻害してしまいます。
だとするなら、攻撃を当てないようにする……とかでしょうか?
さすがに近くで素振りをしてみせた所で、効果はないでしょうし……
……攻撃するそぶりを見せながらも攻撃を当てず、意識だけを逸らす事が出来ればあるいは……という感じですが、そんな事どうやってやればいいのでしょう?
……攻撃するように見せかけつつ、攻撃を当てない……
ギリギリで攻撃を逸らす……? 目の前まで行って殴りかかるフリでもしてみればいいんでしょうか?
……いえ、そもそも近づく際に、周囲に展開されている術式に触れてしまいかねませんね……
うっかり触れて術式を壊したりしたら大変です。
触れずに――というか近づかずに攻撃を仕掛けつつ、なおかつ当てない方法となると……遠隔攻撃ですかね?
……ううーん……。術式に触れる心配はないものの、遠隔攻撃はその軌道を変えるのが厳しいですね……。チャクラムやブーメランみたいなものなら、なんとか出来そうですが、そんな武器は手元にも近くにもないですし……そもそも、武器自体がありません。
かりんが武器を生み出す魔法を使えるようになったみたいですが、今のかりんに魔法まで使う余裕はないでしょうし……
っとと……思考に集中しすぎて、模倣魔法の発動が遅くなっては本末転倒というものですね。
私は一度意識をかりんから受け取った模倣元となる符へと向け直し、模倣魔法の発動に集中……しようとして、ふと気づきました。
武器は模倣魔法を、実行はブルルンちゃんを、それぞれ使えば良いのでは……? と。
おそらく次も舞奈視点になると思います。
といった所でまた次回! 次の更新は、2月23日(水)を予定しています!




