第123話 呪符のコピー
「――とまあ、そういう感じだ」
俺はかりんと異形の相手を交代し、異形の攻撃を防ぎつつ、かりんにこれからする事の説明を行った。
……にしても、異形の攻撃が単調というか一辺倒なのもあるが、段々と攻撃を防ぐだけならば、会話しながらでも余裕になってきたな。
「……うわぁ……。それ、キツいとかいう話じゃないんだけど……」
とても嫌そうな顔で難色を示すかりん。
それに対して俺は、
「拘束時間を伸ばす手段って何かないのか?」
と、そう問いかけた。
「……そうねぇ……。魔法で呪符を作り出せれば、あるいは……」
「……魔法を呪符で作り出す……か。うーん……そっくりの幻影を作り出す魔法なら使えるが、完全に同じ物をコピー出来る魔法は俺には使えないな……」
かりんの言葉にそう返した所で、ふと舞奈の資質を思い出す。
舞奈って、広く満遍なく資質を持つタイプだったよな……。という事は――
「――舞奈なら、その系統の魔法への資質もあるな。上位の魔法は使えないから、短時間しかその姿を維持させられない下位の魔法になるが、性能そのものはまったく同じ物になるはずだ」
と、思考を巡らせながら口にする俺。
もっとも、上位の魔法でもコピーした物を永続的に維持出来るわけではないが。
なにしろ、魔法である以上は、術者の魔力が維持には必要だからな。
「とりあえず、舞奈に来てもらって試すしかないわね」
「……そうだな。ブルルンを通じてこっちに来てくれと伝えよう」
◆
「――という事ブル!」
「わかりました! すぐに向かいます!」
私はブルルンちゃんから成伯さんの作戦を聞き終えるなり、そう返事をして阿良木先生と稲郷さんの方を見ます。
「ああ、聞いていたよ。こちらは気にせず行ってくるといい」
「はい!」
勢いよくその言葉を口にすると同時に、魔法で加速して廊下を駆け抜ける私。
えっと、外へ出るには……この先を左に曲がって階段を……
……いえ、それは時間の無駄ですね。
私は思考をやめると、一直線に廊下の突き当たりにある窓へと走り、窓を開けました。
そして、加速魔法を解除し、別の魔法を発動させると、そこから勢いよく外へ飛び出します。
これが一番のショートカットですよね、やっぱり。
と、視界に成伯さんとかりん、そして異形化した璃紗さんの姿が入りました。
さすが成伯さんというべきか、異形の攻撃を易々と捌いていますね。
「成伯さん! かりん!」
声を大にしてふたりの名を呼びつつ、全力疾走。
私の存在に気づいたらしいふたりは、こちらを一瞬見た後、立ち位置を入れ替えるように動きました。
そして、かりんが大きな盾を生み出し、成伯さんの代わりに異形と対峙します。
……って、え? 盾を……生み出した? もしかしてあの盾は魔法……?
あれ? そうすると、かりんも魔法が使えるようになった、という事なんでしょうか……?
そんな疑問を懐きつつも、大きな盾で異形の攻撃を防ぎ続けるかりんを横目に、成伯さんのもとへと到着する私。
「――月城舞奈、ただいま参上! です!」
という言葉と共に、ビシッと敬礼してみせる私。
……まあ、その……別に敬礼する必要はないのですが……。でも、一度やってみたかったんですよね、こういうの!
最早、『戦闘』ではなくなりつつあるという……
とはいえ、倒す事が目的ではないので、どうしてもこうなってしまうんですよねぇ……
といった所でまた次回! 次の更新は……2月14日(月)を予定しています!




