第120話 アルケインネクサス
「と、透真っ!? そろそろ抑え込むのが限界なんだけど……っ!? 一旦、拘束を解除しても大丈夫かしらっ!?」
あとは、こいつをどうにかして破壊するか分離するだけという所で、そんなかりんの焦り声が聞こえてきた。
構成まで一気に調べるのはさすがに難しいか。
一旦解除してから、再拘束して貰うしかないな。
「一旦解除していいぞ! でも、あと1回か2回頼むと思う」
「ええっ!? 呪符があと1回ギリギリ行けるくらいしかないんだけどっ!?」
俺の言葉にそう返しながら拘束を解除するかりん。
というよりは、拘束を引きちぎられたと言うべきか。
「く……うぅ……。あいつ……拘束を破る力が……徐々に……増して言ってる……せいで、予想以上に……呪符の消費が……激しい……のよ……」
術を破られた反動なのか、かりんは肩で息をしながらそう告げてくる。
なるほど……『学習』する『疑似生命』……ってわけか。ゴーレムやブロブといった魔法生物の類とは大違いだな。まるで使い魔のような性質だ。
と、そんな事を思いながら、突っ込んできた異形を受け流す俺。
……って、待てよ? 使い魔?
………………。
「ああ、そうかっ!」
「グギャァァ!」
俺の攻撃を受けた異形が、物凄い速度で地面をバウンドしながら吹っ飛んでいく。
……あ、しまった。勢い余ってうっかり強い魔法を撃ってしまった。
ま、まあ、生命力も大幅に強化されているみたいだし、大丈夫だろう……多分。
「急に……大声で……どうしたのよ……?」
まだ完全ではないのか、少し荒い息をしながら問いかけてくるかりん。
「ああいや、離れた場所から遠隔操作するような感じで『変異』させたのであれば、使い魔のように何らかの『アルケインネクサス』があるはずだと思ってな」
「ある……けいん……ねくさす……?」
「あー……簡単に言えば、変異させた側との繋がり――変異という命令が何者かから送られてきた際に、それを受け取って実行する部分だ」
「な、なるほど……?」
「で、その部分の作用を逆方向へと捻じ曲げてやれば、変異状態を戻せる……はずだ。まあ、それだけじゃ根本的な解決にはならないというか……もうひとつ対処しなければいけないものが残るんだが、そっちはまあ、さほど難しい事ではないからな」
良く分かっていなそうなかりんにそう説明し、吹き飛ばした異形へと視線を向ける俺。
お、どうやら立ち直ったようだな。
「えーっと……いまいち理解が追いついていないけど、そのアルケイン……ネクサス? とやらをどうにかする為に、動きを封じる必要がある……と?」
疲労状態から復活したかりんがそんな風に言いながら、同じく復活し、こちらに対して動き出した異形へと顔を向ける。
「そういう事だ。……ただ、『アルケインネクサス』を探るのは動きが止まっていなくても大丈夫だ。むしろ、動いている方がつかみやすいくらいだ。だから、重要なのは術式の書き換えを行う時だな。こればかりは動かれている相手に対して行うのは、なかなか難しいからな」
「だったら、それを探る所から私がどうにかして抑えておくわよ。その方が早いでしょ?」
かりんは俺の説明に対しそう返すと、迫ってくる異形に向かって一歩足を踏み出した。
……ん? 抑えておく……?
想定よりも長くなっている異形戦ですが、もう少しかかりそうです……
といった所でまた次回! 次の更新は……2月5日(土)の予定です!
――完全に余談ですが、『アルケインネクサス』は、透真がこちらの世界の言語で一番近いものに翻訳している感じです。
向こうの世界の言語で表記すると、『マギルターザームスナ』となります。
転移魔法「テーオルタ (転移印)」の「ルタ」が印……(後ろに伸ばし棒があると英語の[of]の様な意味合いになります)
武器生成魔法「エルマギオン (生成・魔法武器) 」のマギが魔法……
みたいな感じになっていて、『他者連結 (ザームスナ) の (ー) 魔法印 (マギルタ) 』(表記は右側から)となります。
本編中では一切出てこないような内容ですが、一応法則があるという事で……




