第111話 千堂璃紗のもとへ
あけまししておめでとうございます!
……ま、通じなければ通じないで、新たな方法を考えれば良いだけか。
そう自分の中で結論づけ、
「――そうですね。すぐに向かうとしましょう。彼女がいる場所まで案内をお願いします」
と、亜里沙に対して言う。
亜里沙は俺の方を見て頷くと、
「ここからだと少し離れているから車で向かうよ。まずは駐車場へ行くとしようか」
と、告げてくる。
飛行魔法で一直線に行ってもいいが、まあ車があるなら車でも問題ないだろう。
舞奈が「了解です!」と言いながら両手をグッと握る。
かりんもまた同意するように頷……こうとした所で、ふと大津原の遺体へと視線を向け、
「って……待って、これ――大津原の遺体はどうするの?」
という疑問の言葉を口にした。
「無論、回収して貰うよう伝えてあるから問題ないよ。この後、専門の班が来るはずさ」
亜里沙がそう答える。
ならば安心だなと思いつつ俺は床に印を刻み、そして校舎外へとゲートを開いた。
「とりあえず、ここにもすぐに戻って来られるようにしておいた。千堂璃紗をどうにかしたら様子を見に戻ってくればいいさ」
そう告げてゲートをくぐり、校舎の外へと出る俺。
他の3人も俺に続いてゲートをくぐってくる。
――白骨化した遺体のそばに落ちていた千堂璃紗の生徒手帳……
もうひとつの隠し部屋で死んでいた大津原……
そして、5階部分の隠し部屋と3階部分の隠し部屋で異なる培養槽……
もしもこれらが、『敵』が俺の――というか、向こうの世界の『魔法』に似た力を有していて、その力を行使した結果だとしたら……少し見方と考え方を変えた方が良いかもしれないな……
亜里沙の車が停めてある駐車場に向かって走りながら、俺はふとそんな事を思った。
◆
「ここだよ」
「病院と研究所を兼ねているんですね」
「それに随分と広いわね……」
亜里沙に対し、舞奈とかりんが車内から窓の外を見ながらそんな風に言う。
たしかにふたりの言う通り、そこは結構な広さがあった。
市街地から離れた場所という事もあり、周囲は木々――林も見える。
「あ、念の為言っておくけど、研究所が一緒とはいえ、千堂璃紗をモルモットのように扱ってたりはしないからね?」
「……という『フリ』じゃないわよね?」
亜里沙の言葉に、かりんが疑いの眼差しを向けながらそう返す。
「ないない。キッチリ研究所側も監視しているから大丈夫だよ」
運転中じゃなかったら肩をすくめていそうな、そんな表情で答える亜里沙。
「まあ、もしモルモットにしてて、その結果異形化したとかだったら、研究所を吹き飛ばすから問題ないさ」
「何やら、とても恐ろしい事をサラッと言いましたね……」
「……間違ってもいきなり破壊するのだけはやめてね?」
半分冗談なのだが、舞奈と亜里沙にそう返されてしまった。
「冗談が冗談に聞こえないのよね……」
などと言って、やれやれと首を横に振ってみせるかりん。
む、むぅ……。これが『滑る』という奴か……?
向こうの世界では、この手の冗談も受けたんだがなぁ……
――そんなやり取りをしている内に、白を基調とした建物の玄関が見えてくる。
研究所と病院のちょうど中間に位置する建物だが……どっちに属するのだろうか?
なんて事を思った直後、ガシャァァンというガラスが盛大に割れる音が響き渡り、3階部分から何かが飛び出して来た。
……いや、『何か』じゃないな。『異形』だ。
――頭から触手めいたものが多数生えており、腕が異様なまでに長く、そして6本もある、そんな『異形』が飛び出してきたのだ。
……状況から考えて、コレは『千堂璃紗』で間違いないだろう。
だが、異形化の速度が早すぎやしないか?
ここまで急速に変化するなんて例は聞いた事が……
――っと……考えるのは後だな。
今はまず、コレをどうにかしなければ……っ!
実は新年らしい外伝(日常話っぽいもの)を差し込むというのも少し考えたのですが……なんというか、急展開状態でそれを差し込むのは、ちょっと微妙というか、タイミングが悪すぎる気がしたので止めました。
とまあそんなこんなでまた次回! そして、その次の更新ですが……1月5日(水)か1月6日(木)を予定しています。
なるべく1月5日(水)に更新しようとは思っているのですが、6日にずれ込む可能性がそこそこあります……




