第97話 舞奈を救った力、舞奈の考え
「蘇生魔法……ではない、ですか?」
「それ……どういう……事?」
舞奈に続き、かりんもこちらを向いて疑問を口にする。
「俺は、蘇生魔法のような高度な回復魔法なんて使えないからな。だから……かなり強引な方法を使って、魂をその身体に無理矢理繋ぎ止めたんだ」
「強引な方法?」
「簡単に言えば、完全な死を迎えないように、仮初の生命を与えた感じだな」
「仮初……? で、でも、心の臓も動いているし、血色も悪くないわ。生ける屍――えーっと……アンデッド? だったかしら? それの類には見えないけど……」
俺の説明にそう返してくるかりん。
「死霊術ではないから、そこは安心してく……いや、死体ではないというだけで、やっている事は死霊術の一歩手前みたいなもんか……」
「良く分からないブル。ご主人、もう少し詳しい説明をお願いするブル」
俺の呟きに対して横から使い魔が、首を傾げる代わりに身体を傾けて、そんな言葉を投げかけてくる。
「あー……今の月城の肉体は、俺の魔力とかりんの霊力を、使い魔を中継し、生命力に変換する事で維持されているんだ。だから……この『流れ』が切れると、舞奈の生命活動は即座に停止してしまう……。そんな危うい状態なんだよ」
「なるほどブル。使い魔に似ているブルね」
「そ、その『流れ』というのは切れるものなの?」
納得する使い魔と、更に問いかけてくるかりん。
……舞奈は、さっきから完全に無言だ。
「……そう簡単には切れないな。俺が死んだらアウトなくらいだ。ただ、俺から距離が離れる程、『流れ』が悪くなっていく関係で、色々な所に支障をきたし始めるが……。ああ、離れるって言っても、100キロとか200キロとかそんな単位での話だ。数メートルとかじゃない」
「私からしたら、何百キロも離れたりするとマズいって以外は特に問題ない気がするのだけど……」
「そうは言うが、俺が強制的に魂を縛っているようなもんだからな。正直言って、呪いと大差ない代物だよ」
首をかしげるかりんに、俺は腕を組みつつ、やや自虐気味な口調でそう答え、首を横に振る。
と、その直後「成伯さん!」という語気の強い声と共に、舞奈が俺の方を……いや、俺の目をじっと見つめてくる。
そして、
「――それは、呪いなんかじゃありません。それは、私を……私の命を繋ぎ止める『絆』です。だから、そんな顔をしないでください。……先程から、ずっと顔が暗いですよ? その理由も、その感情も『分析』して理解しています。してしまっています。――そして、だからこそこう言わせてください。……そんな風に思う必要はありません。成伯さんは私の命を繋ぎ止めた事を素直に喜んでください。呪いめいているとか、魂を縛っているとか、そういうのはどうでも良いんです。なぜなら、私の感情――私の心が今感じているものの中には、『とても嬉しい』以外のものなんて存在していないんですから」
と、一気にそんな事を喋りきり、そして笑みを浮かべてみせた。
……俺の思っている事も考えている事も、全て『分析』されたのか……
……その上で、そんな風に言ってくる……か。
だったら俺は……
「そうですそうです。そうやって笑顔で喜んでください。そして、改めて――私の命を繋ぎ止めていただいて、本当にありがとうございます」
笑みを浮かべる俺にそう言ってくる舞奈。
そして……それに対し、俺はこう答えた。
「ああ。どういたしまして、だ」
と。
そんなこんなで一段落です。
そして、第1章である『SCROLL1』も、もうかなり終盤です!
といった所でまた次回! 次の更新は11月18日(木)を予定しています!




