第96話 魔法の結果
新たなる魔法の『名』を口にし、俺が上手くいってくれと願った直後……俺の魔法陣から一直線に、金色の光の線が舞奈の魔法陣へと伸びる。
更にそれに続くようにして、その光の線に絡みつくかのような螺旋を描きつつ、赤色と青色の光の線が伸びていく。
……そして、3本の光の線全てが舞奈の魔法陣に到達すると同時に、舞奈の魔法陣から光の柱が生み出され、舞奈の身体をその中に飲み込んだ。
眩すぎる光のせいで舞奈の身体が見えない。
だが、魔法は発動した。
後は『想定した通りの結果』になっているかどうか……つまり、成功したかどうか、だが……
展開されている魔法陣や紋様的に、術式には問題ない。今の所、想定しているような状況になっている。
故に成功している……はずだ。
……確信が持てないのは、これが古来から存在する既成の魔法ではなく、今ここで新たに生み出された……俺が生み出した魔法であり、誰も『結果』を知らないからだ。
今の所、想定していた通りの状況で魔法――術式の処理が進行しているとはいえ、果たしてそれ自体が本当に正しいのかどうか分からないのだ。
――期待と不安の思考が堂々巡りを繰り返す。
それは、一瞬だったかもしれないし、そうではなかったかもしれない。
ともかく、堂々巡りの思考が繰り返された果てに、遂に眩いばかりだった光が収まり、舞奈の身体が再び目に入った。
「っ!」
舞奈の傷も血も全て消えており、刺さっていたナイフもない。
魔法によってそれらが全て消え去った事が分かる。
……一見すると成功しているように見えるが……
直後、魔法陣が消え、魔法――術式の処理が全て完了した事を告げる。
……どう……だ?
俺がそっと舞奈に近寄ると、それに続くようにして、かりんと使い魔もやってくる。
「どう……なの?」
「……上手くいったはず……だが……」
かりんの問いかけにそう答えた所で、舞奈の瞼がピクリと動いた。
「っ!」
その瞬間、俺は舞奈の為に生み出した蘇生とは異なる、しかしその生命を繋ぎ止める事の出来る、『新たな魔法』が成功した事を確信した。
「ん……う……?」
舞奈の口から声が漏れ、そして目が開かれる。
「舞奈!」
かりんがそう呼びかけながら抱きつく。
「かり……ん? ……あ……れ……? 私……たしか……刺されて……」
舞奈の口から再び声が漏れる。
「ああ。死にかけていた……否、死んでいたがどうにかした」
俺は色々な物を全て飲み込み、それだけを口にする。冷静に。
本当はもっと口にしたいし、顔だってもっと喜びを伝えたい。
でも、そういうのを吐き出すのは、かりんだけでいい。
この生命を繋ぎ止める魔法は……舞奈にとっては――否、かりんにとっても、呪いのようなものなのだ。
だから……それを使った俺は、喜ぶわけにはいかない。
そんな事を考えていると、舞奈が俺の方を見て口を開く。
「えっと……その……生き返らせてくれてありがとうござ――」
と、そこまで口にした所で、俺は言葉を被せる。
「――すまん、その言葉は受け止められない。……なぜなら、俺は舞奈を生き返らせたわけじゃないからだ。そう……舞奈に使ったのは……蘇生魔法ではない」
「そ、え?」
当然の如く、意味が分からず素っ頓狂な声を発する舞奈。
……さて、と。しっかりと説明しなければならん……な。
魔法は成功しましたが、果たしてどういう事なのでしょうか。
といった所でまた次回! 次の更新は11月15日(月)を予定しています!




