第95話 新たな魔法
「ご主人、このヒトを使い魔にするとかは無理ブル?」
「……さすがに無理だな……」
横から声をかけてきた使い魔にそう返した所で、ふと思う。
――使い魔?
……そういえば舞奈は、俺が刻み込んだ疑似魔力回路によって、俺の魔力回路と連結されていたはず……
使い魔に擬似的な生命力を与えたように、魔力回路を通じて舞奈に擬似的な生命力を送る事で活性化させられる……?
……いや、それだけでは駄目か。魂魄を肉体に保持する必要がある。
となると、その上から霊的な膜で覆うとか……か?
だが、霊的な膜なんてどうやって覆えばいいんだ?
使い魔に込められている魂魄は、あくまでも魔力によって誘導して宿しただけで、魂魄そのものを擬似的に生み出したわけではないし……
「大いなる癒やしの力よ、我が前にて傷つき倒れし者に生命の息吹を与え給え!」
かりんが泣きながら、延々と呪文詠唱を繰り返す声が聞こえてくる。
……くっ、舞奈のように唐突に会得してくれたりはしないか……
……やはり、舞奈が特殊すぎ……って、ん?
……かりんも、十分特殊すぎる存在だよな。
幽霊のようで幽霊ではない存在……か。
使い魔……魂魄……誘導……生命……霊的な膜……
俺はかりんと使い魔を交互に見ながら思考を巡らせていく。
そして、あやふやであったそれは徐々に形になっていき……
そこで思考を中断した。
それは、俺のやろうとしている方法――『作ろうとしている魔法』が、ほとんど『呪い』と変わらないものである事に気がついたからだ。
……こんな呪いめいたもので、舞奈の命を繋ぎ止めて良いのだろうか……
延々と呪文詠唱を繰り返すかりんを見ながらそんな事を考える。
……殺されたのが少し前だとしても、もうあまり猶予はない。
このまま放っておけば、舞奈の命は完全に失われてしまう。
……それは――
「お断りだっ!」
俺は思考の途中で声を上げた。
「ど、どうしたブル!?」
「今から、舞奈の命を繋ぎ止める魔法を作り出す!」
そう口にしながら、俺は即座に隠蔽魔法を発動。
そのまま続けざまに自身の足元に魔法陣を展開しながら、
「かりん! 使い魔! 今から発動する魔法陣にそれぞれ移動してくれ!」
と言い放つ。
そして、かりんと使い魔が、俺の展開した魔法陣へ無言で速やかに移動するのを確認すると、俺は最後に舞奈の所にも魔法陣を展開した。
こうして、俺、使い魔、かりん、そして舞奈の足元にそれぞれ1つずつ、合計4つの魔法陣が生成された状態になったわけだが、これで終わりではない。
続けて魔法を発動させ、使い魔、かりんの魔法陣から、俺の魔法陣に向かって伸びる、鎖状の紋様を床に描く。
「これ……は?」
かりんがその鎖状の紋様へと視線を向けながら呟く。
「複数の魔法が……連結された……術式……ブル?」
使い魔がなんとなく感じ取ったのか、そう問いかけてきた。
「これの説明も後でする! とりあえず、そのまま動かないでくれ!」
そう告げるなり、床に手を付き目を瞑る俺。
と同時に、使い魔とかりんから俺へと向かって伸びる『光の線』を感じ取った。
……よし、行ける!
「――オル……マギネス……リイト……ターナ!」
俺は、今まで存在していなかった新たな魔法の『名』を口にする。
術式連結の為に、しっかり節を増やしてあるし、『名』はこれであっているはず……!
例えこれが……この魔法が、呪いめいた代物であろうがなんだろうが、舞奈の命を繋ぎ止められるなら、今はそれでいい!
だから……どうか上手くいってくれ!
新たな魔法を生み出したようですが、果たしてその効果とは……
といった所でまた次回! 次の更新は、11月12日(金)を予定しています!




