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予感  作者: シオン
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今日の出来事(1)


朝、起きた瞬間に、

「嫌な予感」がした。

こういうのは大抵当たる。

以前は友達との出かける約束の時間に起きて遅刻して怒られたし、

またある時は通学路でカラスの死骸を見たこともあった。


さて今日はどうだろう?

ふと時計をみる。

朝の7時20分。うん。今日はちゃんと起きれてる。

体を起こし、

寝巻きがわりのジャージから、

私服へ着替える。


外の天気が良さそうだ。最近は特に暖かくなってきている。

最近お気に入りの水色のパーカーを羽織って、

リビングへいくと母が朝食を作っていた。

「おはよう、今日の目玉焼きすごいのよ!」

と母が上機嫌に話しかけて来る。

おはよう、何がすごいの?と聞いてみた。


母はふふっ!と楽しそうに笑うだけで、

答えてはくれない。

かわりに朝食を出してきた。

今日はトーストに、サラダ、軽く焼いたベーコン、それから、

黄身がふたつある目玉焼きだった。

母が言うには、

卵はひとつしか使っていないらしい。

つまりはこの卵が双子だったことが、

「すごい」事だったのだ。


よかったね、

なんて言いながら母との雑談を交えて、

朝食を平らげ、

荷物の確認や身支度を整えて、

ゼミのレポートを作成するために、

大学の図書館に行くと母に告げ、

家を出ようと思ってた時間より10分ほど早く家を出た。


早めに出た理由は、

まだ「嫌な予感」の正体に出会っていないからだ。



家のそばに桜並木がある。

駅へ向かう途中必ず通る道だ。

六分咲きと言うところか、

満開にはまだ早いが、

気の早いやつは既に見頃である。


この時期は入学式にはまだ早い、

そんな微妙な頃だ。

再来週の入学式の頃には散ってしまってるのも多いだろう。


などと考えているうちに駅に着いた。

駅には既に沢山の人で溢れている。

いつものホームへ向かうと、

つい10分程前まで電車が遅れていたらしく、

まだ遅延していると放送で流れていた。

とはいえ、

ほとんど待つことなく、

電車に乗れたので、遅延しているとはあまり感じなかった。


大学の最寄駅に着いたのは幾分早い時間だった。

早い分には問題はない…が、

学内の図書館が開くまでに10分程時間が空いてしまった。

仕方ないので、

学内にあるコンビニへお茶を買いに行く。

もちろん自販機で済むのだが、

時間を潰すのが目的だった。


戻った時にちょうど図書館が開いたらしく、

職員さんが入り口付近でなにやら、

作業をしていた。

一応声をかけて中へ入っていいか、

聞いてみたが大丈夫そうだ。


図書館の中には学生が自由に使えるパソコン、

本の貸し出しはもちろん。

中にはDVDもあり、借りることができる。


今回は、

ゼミの課題で使えそうな本を数冊と、

程よい場所のパソコンを確保した。

それからずっとパソコンと資料の二つとにらめっこ。

そうしているうちにお腹が小さく鳴った。

時間を見るともう昼過ぎ、ずいぶん長い間集中してたようだった。

とはいえ、ちょこちょこ席を立ち休憩を挟んでいたので想像よりは疲労感は少ない。



とはいえお昼時だ。

朝食はしっかり食べたが流石におなかが空いた。

けれど大学内の食堂はこの時期はやっておらず、

学内のコンビニでなにか買わなくてはならない。

そのうえ、基本的に図書館は飲食は禁止。

ペットボトルのお茶くらいは見逃してくれるが、

お菓子を摘んでた奴は一度注意されていた。


お昼ご飯を食べるか。

そう決めて、パソコンの作業をさっさと終わらせて持ってきていた本はそのまま借りることにした。


持ってきていた鞄に本を仕舞いながら歩いていると階段付近でうろうろしてる学生を見かけた。

なにしてるんだろ?とは思ったが、

下手に声をかけても面倒だ。

「嫌な予感」の正体もまだわからない。(よく覚えてるなぁとか思ってるでしょ。自分もだ。)


スマホに視線を落とし横をさっと通り過ぎた。

相手もなにかの紙と睨めっこでこちらに気づくことはなかったのでさっさとコンビニに向かった。


おにぎりとお茶、それからチョコレートを買った。

このくらいのサイズだと案外、図書館の職員は気付かないのだ。

あとでこっそり食べよう。

食堂のテーブル席は食堂が開いてなくても自由に使うことができるので、

あまり人が周りにいなさそうな端っこの席を陣取って借りてきた本をおにぎり片手に読むことにした。


そうしているうちに2時間以上も本に没頭していたらしく、友人からのLINEでかなりの時間が過ぎたことに気づいた。

友人からは春休みのうちに遊びに行こう、とお出かけのお誘いの連絡だったようだ。

空いてる日をさっさと送りつけて、

どこいく?なんて雑談まじりに返事を送りながら図書館に戻る途中気づいた。


……まだいた。

さきほど見かけた学生がまだ階段付近をふらふらしていたのだ。

もうとっくに居なくなっているものだと思っていたのだが、どうも様子がおかしい。

さっきは気づかなかったが、

時計をチラチラみて時間を気にしているようだった。

なんだか様子が気になって、

気疲れなさそうなところから様子を伺うことにしてみた。


少しすると、

階段に腰掛けそのまま俯いて動かなくなった。

どうしたのだろう?

何気なく時計を見ると午後15時過ぎ。

なにか今日はあったかな?と思い、

まだLINEをしてくれていた友人に学内で今日なにかイベントとかあったか聞いてみた。

すると、13時半から15時まで色んな企業からの説明会のようなものがあったらしいと教えてくれた。

どうもかなり分かりづらい講義室で行われていたとかで何人か迷子になってたとサークルのメンバーが話してたとか。


そこまで聞いて合点がいった。

あの学生はその講義室での企業説明会に参加しに来ていたのだ。

だがたぶん場所のわからず行けなかった?ようでそのまま階段で蹲ってしまったと。


気の毒すぎる…。

なんだか状況が分かった途端どんどん自分よりツイてない人に出会してしまって可哀想になってきた。

見なかったことにして図書館に行くか?

いやいや、これはこのまま気になって集中出来なくなる!


よし。きめた。


スマホを一度仕舞い、少し深呼吸。

ちょっと緊張するけど行くか。

と俯いている学生の元へ。


「ねぇ、キミさ、チョコレート好き?」


へ?と困惑顔で顔を上げた。

もう一度、チョコレート好き?と聞いてみる。

「…好き、です。」とぽそっと言ったので、

よし、ならいいな。と先ほど買ったチョコを渡した。


「それ食べて元気だしなよ」


ついぶっきらぼうに言ってしまったので、

笑顔を作って、じゃあね。とその場を立ち去った。


そのあとはなんだか満足して、

その足で図書館へ向かい、レポートの残りをサクサクペースで進めた。

そして閉館になることにはレポートも書き終わり、しっかり保存してから、

ゼミの教授にメールで送りつけた。

全て片付け、さっさと家に帰宅した。


帰ってきて夕食を済ませて、

お風呂に浸かっているときに思い出した。

そういえば今朝の「嫌な予感」の正体はなんだったんだろう?

強いて言うなら…、あの学生にあとでこっそり食べるつもりのチョコレートをあげてしまったことだろう。

そう言うことにしよう。

と無理やり納得してお風呂から上がりそのままベットにダイブした。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

亀の足のようにゆっっっくりペースですが、

続けて読んでいただけると幸いです。


シオン

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