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猫耳娘は腹が減る!!  作者: MOJO
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「よく出来てるじゃないかリサリサ。あれ、ゴーレムかい?」

「オートマタよ。心核(コア)小悪魔(インプ)を封じ込めてるの。百年仕えたら、依り代にしている身体をあげる約束でね」

「さすが稀代の黒魔術師。今流行りの奇病もキミが仕込んだとか言わないだろうね?」

「まさか。自分の商売を危うくする様なこと、するわけないじゃない」

「それもそうか」

 僕は笑って、この店の女主人を眺めた。

 少し赤み掛かった長い髪を編んで豊かな胸元に垂らしている。艶かしい肢体にぴたりと張り付くような濃紺の衣装は身体のラインがはっきりと見てとれる。薄いヴェールで隠された口元。その奥でうっすらと微笑んでいる。

「それにしても、しばらくぶりね、リュウ。でも私の名前(こと)を続けて呼ぶのは、いい加減やめてちょうだい」

「キミだって僕の名前を略すじゃないか。まあ、僕はその呼び方が嫌いじゃないけどさ」

 この館の女主人、リサは微笑(わら)った。

「それで、今日はどういった御用向きかしら」

「戦士を一人、貸して欲しいんだ」

「あら、激戦斧(げきせんぷ)と呼ばれた貴方が他人を雇うなんて、世も末かしら」

「昔に比べて最近は物騒だからね。それにほら、今はこんな玩具(おもちゃ)しか持ってないから」

 僕は腰に下げたブロードソードに視線を落とした。

「そういえば、ハンターを引退してたのだっけ」

「今は小さなバルをやってるよ」

「ごめんなさいね。一度も御伺いしなくて」

 リサは口元の微笑みを絶やさぬまま、眉根を寄せて申し訳なさそうに小さく頭を下げた。

 僕は苦笑して手を振る。そりゃあ、来てくれたら嬉しいけど。でも実際のところ、彼女の様な美女に来られたら店の客がざわついてマトモな営業が出来なさそうだ。良くも悪くも。

 リサは暖炉がある応接間のソファーへと勧めながら、自分は僕と対面のソファーへと腰掛け、スルリと脚を伸ばして組んだ。つい太股へと視線が落ちそうになるのを堪える。喉が渇いてきたと思ったら、タイミング良く先ほどの使役魔(オートマタ)がお茶を運んで来た。ひと口含んで落ち着きを取り戻す努力をする。

「以前使ってた武器(オノ)はどうしたの」

 リサがヴェールの奥で微笑みを深くしながら訊ねた。からかっているのだ。どうも昔から彼女に逢うと調子が狂う。

「ーー今、経営難でね。ちょっと前に質に入れちゃった」

「あら」

「何れ売り上げが戻れば買い戻すよ」

「そうなる事を祈るわ」

 リサはそう口にしてから、少し考えるように小首を傾げた。豊かな胸を抱え上げる様に腕を組んで、フゥと息を吐いた。

「困ったわね。今は貸し出せる者が居ないのよ」

「そうなのか。随分と繁盛してるんだなあ」

「違うの。領主からの命で城砦の防衛に駆り出されてるのよ。この商売を始めた時に領主様と【税金を免除する代わりに有事の際は無償にて店が所有する戦力を貸し出す】という契約を結んでいたの。あの時は、まさかこんな事になるなんて思いもしなかったから」

「そりゃ、お気の毒に」

 旧知の魔女(とも)が気の毒だと思う半面、(あて)が外れて僕はつい溜め息をもらした。

「でも、そうね……一人だけいたわ」

 思い出したように女主人は小悪魔(インプ)が宿るというオートマタを呼んで何かを言付けた。


 程なくして使役魔(オートマタ)は僕たちの前に一人の少女を連れてきた。

「この娘よ」

 背丈は僕の肩にも届かないくらい。肩の辺りで短く切ったボサボサの黒い髪。緑色の瞳。髪の間から三角の耳が覗いている。

 まだ成長過程の、凹凸のない身体のライン。両足の隙間から長い尻尾が見えかくれしている。

「獣人か」

「まだほんの小娘(こども)だけれど、素質はあると思うわ」

「うん。ちょっと細い様だけど、でも引き締まった良い体をしている」

 僕が獣人の娘をまじまじと品定めしていると、恥ずかしそうにして使い(オートマタ)の背に隠れた。

「それはそうと、店の者は契約で貸せないんじゃないの?」

「ええ。確かに私が所有する者は貸せないわ」リサは頷いて言った。

「この娘は半年ほど前にウチに来たばかりでね。仕事で違法の奴隷商を捕らえたときに保護したのよ」

 リサは手招きして獣人の少女を呼び、頬に掛かった髪を優しく払って頭を撫でた。

「詳しいことは話さないからわからないのだけれど、両親はもういないみたいなの。まだほんの小娘(こども)だし、店で働かすのもなんだから、当分、私の所有物にはしないで店に置いてあげていたのだけれど」

 リサはそこでチラリと僕の方を見て笑った。

「丁度良かったわ。リュウが面倒みてくれるなら私もこの娘も安泰よ」

「え! いや、う~ん」

 リサが少女を僕に向き直らせる。

 確かに獣人は人間(ヒューム)より身体能力は高い。今から鍛えりゃ、何れ良い戦士に成れるとは思うけど。

「欲しいのは即戦力だったんだけどなあ」

「あら。この私が半年間、何もさせずに遊ばせてばかりいたとでも思ってるの?」

 稀代の女魔術師が妖艶に微笑った。

「必ず貴方の御期待に応えるわ。それに、どうせまだ独り身なんでしょ。生活に華は欠かせないものよ」

 結局、僕はまた彼女に言いくるめられてしまった。

 ホント、調子狂うんだよな、リサリサと居ると。

 僕はやり手の商売人でもある旧知の魔女に案外と少なくない金を払い、奴隷の主従契約を交わして、この獣人の少女を引き取った。

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