第15話 リガリア復帰
北部海岸地域には最初の風力発電所が稼働を始め、地域に電気を供給し始めていた。2号機についても計画が進んでいる。
電気を使って動く機械についても、徐々に出始めてきた。フルショアに産業が芽生えつつあった。
中東部ではカシス酒の出荷で現金収入が出始めたし、その他の事業も概ね順調に進みつつあった。
約半年余りのフルショア各地での新婚旅行を経て、俺たちは王都に戻った。
王都に戻った俺たちを出迎えたのは、巨大なマリーのブロンズ像だった。
クフクラで俺たち夫婦の銅像が作られて、けっこう恥ずかしかったのだが、王都のマリー像は見上げるほどの大きなものだった。
俺の像が無くって、マリー像だけだったので、俺はかなり嬉しかったのだが、マリーは俺の像がないとオカンムリで、アダム大公に抗議をした。
一応後継者戦争での功績はマリーの偉業として公表しているため、ピーター巨大像はダメという事だった。
マリーは怒りが収まらなかったので、アダム大公は仕方がなく、俺にフルショア大公勲章を授与するって言った。
まあマリーに言わされたようなものだ。
結果としてこの勲章授与により、リガリア王立アカデミーは俺に30単位を与える事になった。
つまりはアカデミー卒業に必要な200単位をクリアーしてしまう事になったのだ。
そもそもマリーは内乱の危機を避けるために、リガリアに避難していたのだ。
後継者戦争が終わり、アダム大公が即位した今となってはリガリアに戻る必要はない。
俺も元々子爵家の次男坊だし、マリーと結婚して、フルショア大公の義弟になったのだから、もうリガリアに戻らなくても良いかなという感じだ。
ところがそれを許さない者が居た。リガリア王家である。
王家の友人として、王族に準じる俺はリガリア王国の発展のために尽くす義務がある。
エリーゼ王女との婚約は破棄された訳ではない。
リガリア王家から見ればあくまでマリーは俺の側室なのだ。
フルショア公国の後継者戦争からの復興が終わったのなら、さっさと帰ってこいとの指令が無線機から告げられた。
「無視しちゃう?」
って、マリーに聞いてみたが、マリーはリガリアに戻って、アカデミーで学生生活を続けたいと言った。
大公の妹として公務にあたるよりも、もっと学園生活を楽しみたかったようだ。
たしかにリガリア王立アカデミーは自由で楽しいところだからね。
ちなみに俺はアカデミーでの新入生指導義務を果たして居ないので、このままでの卒業宣言はダメだとされた。
マリーとは2ヶ月、エリーゼとは3ヶ月しか暮らしていないので、足りないと判断されたのだ。
そんなわけで、俺とマリーはリガリアアカデミーに戻ってきた。
ほぼ一年ぶりのリガリアである。
帰ってきた俺たちを待っていたのはエリーゼだった。
一年間でエリーゼは見違えるほどに成長をしていた。
チンチクリンだった体がどこからみてもグラマラスな美女といえるほどに変わっていた。
まるで青虫が蝶々になったみたいだ。
俺はこの1年間ほとんど完全にエリーゼの事を忘れていた事を素直に謝った。
フルショアで生涯マリーだけを愛すると誓った事も隠さずに打ち明けた。
そしてエリーゼとの婚約を破棄したいとお願いしたのだった。
エリーゼはあっさり同意した。
エリーゼは俺の代わりにナイトになったジョルジュと恋愛関係になったそうだ。
流石はジョルジュ。手が早い。グッジョブだ。
俺たちにとっての最大の懸案事項が解消して心が晴れやかになった。
エリーゼはさんざん俺の心の中に魔法をかけたのに、俺を落とす事ができなかったせいで、自信喪失になっていたそうだ。
それで新しくナイトになったジョルジュにも同じように魔法を使ったみたら、あっさりそういう関係になってしまったそうだ。
女になったエリーゼは一気に女性ホルモンが回り始めたみたいで、チンチクリンを卒業して、王妃様似のグラマラスな美人女性になったそうだ。
俺は素直に二人の幸せを心から祝福した。
俺とマリーはもうちゃんと結婚をしているので、今回のアカデミーでの寮の部屋割りは、俺とマリーとの二人部屋が認められた。
マリウス時代の分と合わせて、新入生指導義務として認めてくれるとの事だった。
マリーの護衛であったハンナはアカデミーを中退して、マリーと一緒にはリガリアに戻らなかった。
ハンナはエレーヌと結婚して、赤ちゃんを生んで育てるのだから、もう戻る事は出来なかったのだ。
エレーヌもフルショア公国での仕事と、ハンナと協力して子育てをするということで、リガリアには戻らず、アカデミーは中退するつもりだったのだが、アカデミーがエレーヌには卒業を認めた。
俺には認めなかったのに、ずるいよねえ。
アカデミーではトーマスが俺のいない間に卒業をしてしまっていた。
ノイヤー伯爵令嬢ともすでに結婚をして、もうすぐゴードンの後を継いで、クーリエ子爵になるとの事だった。
親父はもう隠居するつもりなんだあ。
帰国の挨拶も兼ねて、クーリエ領にマリーと二人で帰った。
マリーとの結婚宣言から、後継者戦争、復興支援事業と1年余り、全く顔を見せていなかったのだから、久しぶりの帰省だった。
クーリエ領はますます人口が増えて、すっかり大きな街になっていた。
トーマスの嫁さんは妊娠をしていて、ゴードンはもうすぐお爺ちゃんになるんだと、目尻を下げていた。
確かに親父は隠居するくらい、歳をとったんだなあと俺も思った。
ナンシーの娘のイレーヌはすでに歩き始めていた。俺も抱っこをさせてもらったが、大泣きされてしまった。
イレーヌはマリーに抱かれても平気なのに、俺はダメなんて。
俺は君のパパなのに。
でもマリーがナンシーと仲良くしてくれて、俺はホッとしたよ。
ナンシーの暮らしぶりも見られて安心できた。
俺は本当に周りの人に恵まれていると改めて感謝した。
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