第14話 ウラン
俺とマリーはフルショアの様々な町村を旅してまわった。
その際にいつもその土地で手に入る鉱石について、鑑定を行うことを常としていた。
フルショア南西部はアルプ山脈につながる高い山脈がある地域で、そのあたりのある村に立ち寄った際に、強い黄色が特徴の鉱石を発見した。
この黄色い鉱石をハイジに取り込み、成分分析をしたところ、Uという元素記号が浮かんだとマリーが俺に告げた。
Uとはつまりウラン。もしくはウラニウムという物質だ。元素番号は92である。
地球において通常存在する物質の中で最も大きな元素番号の物質だ。
ちなみにウランの名前はほぼ同時期に発見された天王星に基づいている。
ウランはいくつかの同位性元素を持っている。
通常もっとも多いのはウラン238である。
原子力発電や、原爆などに使用されるのはウラン235というものだ。
流石のマリーもウラン238と235の違いまでは見分けられないとの事だった。
ウランは放射性であり安定体を持たない。
つまりはどの同位性元素も定められた半減期の期間に、その質量の半分を偏移する。
ウラン238の半減期は45億年で、次々とアルファ崩壊して鉛に変わっていく。
ウラン235の半減期は7億年だが、核分裂性物質なので、熱中性子を吸収することで連鎖的に核分裂を引き起こす物質だ。
この際にものすごい熱を発生させるのだ。
この熱を利用して電力を発生されるのが原子力発電であり、この熱を爆薬として使用したのが原子力爆弾である。
ちなみに天然に存在するウランの99%がウラン238であり、核分裂を引き起こすウラン235は1%弱しかない。
原子力発電や、原爆にはそのままの1%弱のウラン235では使えないので、あらかじめ濃縮を行う必要がある。
原子力発電ではウラン235が3%程度の低濃縮のものが使用可能であるが、原爆には90%以上に濃縮したものを使用する必要がある。
ウラン235と238は化学的な特徴が同じなので、濃縮するのはかなり難しい技術であるが、ウランに熱中性子をぶつけてできるプルトニウム239の方は分離が簡単なので、最近の原爆は主にプルトニウムで作られることの方が多いのだ。
まあいずれにせよウランは放射能を発生させるものであり、安易に人が触ってよい物質ではないのだ。
完全には解明されていないが、放射能を多くあびてしまうと、白血球などに異常を発生させることが多いことはわかっている。
このため、この地域での鉱石の鑑定をこれ以上マリーにはしないようにさせた。
俺はマリーが鑑定をすることによって、被爆をしてしまうのではないかと恐れたのだった。
放射線を使ったがん治療など、もしかすると大幅にこの世界の医療水準をあげることに貢献するかもしれない。
しかし俺はマリーを危険にさらしてまで、それを実現したいとは望まない。
全ての発明は身近な人の幸せのためにするのだと俺は改めて心に刻んだのであった。
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