第8話 当たらないスポットライト-ジョゼフ視点
俺はジョゼフ・オフマン。フルショア公国の後継者戦争に派遣されたリガリア王国騎士団300人の団長だ。
この戦いはまずピーターの風の悪魔戦役でスタートした。俺たち騎士団先遣隊50人のフルショア到着直前に勃発したものだった。
当然俺たちが着いた時にはもう戦いは終わっていて、アダム王子の宿泊所の周りに目と耳から血を流して死んでいる死体の山があったのだ。
俺たち騎士団は丁重にそれらの死体を弔ってやったのだ。
続く飛空挺を使ったビラ撒き作戦では、俺たちが飛空挺からビラを撒いたのだ。
俺たちははりきってビラ撒き作業にあたったが、高度1000メートルの上空からビラまきをしている俺たちの姿を多分地上からは見ることはできなかっただろう。
そして続く守り石破壊作戦では、俺たち騎士団は飛空挺で降下するピーターとハンナを援護すべく、敵陣の地上突破を行った。
飛空挺で敵のいない上空を王都まで進むのと、敵が待ち伏せている地上を騎馬で進むのと、どっちが難しいかわかってくれるだろうか?
その上ピーターは敵をなるべく殺さないでくれと言いやがった。
当然味方の被害だって出したくない。フルショア王都までの道のりはほとんど全てが敵地なのだ。
飛空挺から見た情報を無線機で教えてもらい、フルショアの闇魔法使いに姿隠しの魔法をかけてもらう協力を得ながら、時には強行突破を交えて、慎重に王都に向けて進んだ。
フルショア王都までの決死の隠密地上突破はなんとか成功し、ピーターとハンナのスカイダイビングの開始前には、守り石周辺には俺たち騎士団が、ピーターの援護のために待機していたのだ。
ピーターの周りにいた敵の魔法使い達は、最初のピーターの空気拡張魔法で全滅した。
しかし守り石の周縁部にはまだ複数の生き残りがいて、ピーターを狙って魔法を打とうと動き出していたのだ。
それらを俺たちが弓で仕留めたのだ。
ピーターは岩を握り潰すのに一生懸命で、きっと気がついていなかったのだが。
守り石の崩壊後に俺たちは王都に侵入した。
そしてビチック家私邸に駆けつけて、ハンナとダミアンの死闘を見守った。
運よくダミアンの居場所を知っている奴に案内してもらえたのだ。
ダミアンとハンナの決闘の最中、俺たちが途中で助太刀すればハンナが嫌がると判断して、最後まで手を出さないように我慢した。
しかしハンナが倒れ伏し、ピーターがダミアンの首を飛ばした瞬間、俺の槍はダミアンの心臓を貫いていたし、俺の部下の弓も数本ダミアンの身体に突き刺さっていたのだ。
ハンナはピーターに助けられた事だけが許容範囲だったみたいなので、俺たちの援助が見つからないように、俺たちはすぐにダミアンの首を持って、その場からこっそり他の場所に移動したのだ。
そのあと俺たちはダミアンの首を王都中心の広場に晒してから、市民たちの反乱を助けて回った。
あくまで市民達が主役になるように俺たちはなるべく陰からこっそり手助けをしてまわったのだ。
ダニエル王子の居場所を見つけて、市民に身柄を確保させたり、王都に進軍してくるアダム王子とエレーヌ傭兵団への状況連絡も俺たちの仕事だった。
アダム王子とエレーヌ傭兵団を王都に迎え入れた後のビチック家の残党狩りはエレーヌ傭兵団でも十分な仕事だった。
俺たち騎士団はいつまでもリガリア王国のエギル王太子をほうって置く事も出来ず、早々に飛空挺を使ってリガリアに帰還したのだった。
フルショア公国後継者戦争における俺たちの活躍には、スポットライトに当たるような事は何一つなかった。
きっと戦記物が出版される事になるだろうが、そこに俺たちが参加したと記される事はあるのだろうか。
ピーターとエドガーはそんな俺たちにXO-1(Extra Old)っていう高級ブランデーを一樽飲ませてくれた。
XO よりもグレードが一つ下のVSOP(Very Superior Old Pale)ってやつでも、一瓶金貨5枚するっていう高級酒だ。
騎士団の給料では絶対に飲むことなど不可能なものだ。
流石にピーターは俺たちの事をわかってくれている。
エドガーも良い奴だ。
奴の立てる作戦はえぐいが、エドガー本人は良い奴だ。
学生時代からの友は一生の宝だ。
俺たちは奴らのためなら、また次も死線を超えてやるぜ
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