第5話 空からの攻撃
エドガーから出た作戦は俺たちが絶対的に有利な制空権をもっている空からの奇襲作戦だった。
飛空挺1号機に俺とマリーとハンナが乗り込んだ。
フルショアの地上攻撃が届かない上空から、拡声器によって増幅されたマリーの声がフルショア公国の王都全てに響きわたった。
この拡声器は無線機で開発された音声増幅技術を応用したものだ。
「私はマリー・シマンスカです。
リガリア王国からみなさんの待つフルショアに帰ってきました。
今、フルショア公国にはダニエルとダミアンという闇の雲が重くのしかかっています。
彼らは自身の私利私欲のために、正統な大公を殺め、アダム王太子を追い出して、フルショアの富を独り占めしています。
このままフルショアの民は彼らの奴隷に成り下がったままで良いのでしょうか?
貴方達はいつまで彼らの横暴を我慢するのでしょうか?
彼らはフルショアの守りの石がある限り、全てが守られると思っているでしょう。
そんな彼らを私は絶対に許しません。
今から私がフルショアの守りの石を砕きましょう。
神さまの加護が私にあるのなら、守りの石は瓦礫となる筈です。
これはダニエルとダミアンの悪政に対する戦いなのです」
マリーのスピーチの後、俺とハンナは飛空挺を飛び降りた。
そうタンデムのスカイダイビングだ。
俺とハンナはちゃんとスカイダイビングで使うようなダブダブのつなぎを着て、ハンナが俺を後ろから抱きかかえるようにして飛び降りた。
ハンナは闇魔法で俺の姿を見えないようにしてくれている。
下から見上げても俺とハンナの姿を視認することはできないだろう。
どんどん加速する落下速度を、俺の膨張魔法で下方の空気を膨らませることによって、強い上昇気流を作る事で緩和する。
きちんと守り石の真上に落ちるように、風の流れを読みながら、左右の微調整も行った。
最後に特大の膨張魔法で地面に逆噴射を作って、音も立てずに守り石に着地した。
ハンナは着地と共に、俺とつないでいたベルトを断ち切り、すぐにフルショア王都内へと隠密行動に移った。
守り石の頭頂部の砦の中には、フルショアの魔法部隊の精鋭が揃っていた。
突然現れた俺とハンナに彼らは慌てふためき、魔法の詠唱を始めた。
申し訳なかったが、彼らには全て死んでもらうしかなかった。
守り石を中心に、全ての空気を一気に拡散した。
風の悪魔と呼ばれることになった前回にも使った魔法である。
一気に下がった気圧によって目と耳を奪われた魔法部隊の攻撃は俺を捕らえることなかった。
俺に対して繰り出された魔法は盛大な同士討ちとなったのだった。
さらに低下を続ける空気圧によって呼吸をすることもできない魔法部隊の精鋭達は反撃することも出来ず、目と耳から血を吹き出しながら次々と死んでいった。
守り石周辺の兵を片付けた俺は、守り石に手を当て、全力で石を握りつぶした。
さすがは数百年の歳月、フルショアを守り続けた巨石だ。数十秒もの間、俺の圧力魔法に耐えた。そして一気に轟音をたてて砕け散った。
「やはり神はダニエル、ダミアンの悪事を許しませんでした。
フルショアの守り石は砕かれました。
さあフルショアの正義の民よ。彼らを倒すのです」
マリーの声が再び天から落ちてきた。
フルショア市内は大混乱になった。
多くの市民が蜂起に参加していた。
ダミアンの兵達は反乱を始めた市民への無差別の虐殺を行なっていた。
しかしダミアンに従っていた貴族の兵達は守り石が砕け散った事で、完全に戦意を喪失してしまった。
それぞれが割り当てられていた守りの陣地を放棄して、我先にと自領へと引き上げを開始した。
これに合わせてエレーヌ傭兵団はプハラからフルショア王都に進撃を開始した。
アダム王太子とノヴァック領の兵達もエレーヌ傭兵団と共に出撃した。
プハラからフルショア王都までの進軍ルートの領主達は、次々とアダム陣営に寝返っていった。
彼らは口々にダニエルとダミアンの悪口を言い、アダム王子とマリーを讃えたが、とても信用などできたものではない。
エドガーは彼らを後方支援に加えつつ、とりあえず彼らから兵糧の提出を受けながら、フルショア王都への進軍を続けるのであった。
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