第3話 苛立ち-ダニエル王子視点
300人のアダム王子襲撃隊が何もできずに惨殺されたという知らせが届いた。
しかも、そもそもどうして300人が死ぬことになったのか、全く情報が得られないのである。
死んだ300人はみな身体は無傷であったそうだ。
目玉が飛び出ていて、耳から血を流し、苦痛に顔を歪めていたとの情報しかない。
また300人が死んだ後に突風が吹き荒れ、一部の死体が舞い上がっていたそうだ。
そして死体の中心には恐ろしい風の悪魔が一人で立っていたとのことである。
フルショアの兵達はこの話に怖れおののき、新たにプハラに向けた進撃隊を組むのは不可能であった。
このためとりあえず新たな攻撃は見送ることにして、プハラ周辺には偵察隊が複数出す事にした。
偵察隊からの情報では、リガリア王国の飛空艇が何度もプハラを訪れ、その度にリガリア王国軍とみられる兵士を補充しており、少なくともリガリア王国から数百人がプハラの戦力に加わっているとの事であった。
リガリア王国はマリーとハンナが留学している国だった。なんらかの理由でリガリア王国はアダム王子の側についたと見て、間違いはないだろう。
しかしリガリア王国とフルショア公国の間にはゲルマンの諸国があるため、リガリア王国としては侵略戦争をしかけるつもりはないだろう。
とりあえずは王都フルショアを確実に守りつつ、戦力を増強する以外はあるまい。と言うことで、ますます厳しく税を徴収することにした。
民など、生かさず、殺さず、締め上げるべきなのである。前大公のように温い政治をしているから、このような戦乱になるのだ。
しっかりと国軍を養っていないから、大公位を簒奪されるようなアダムみたいな間抜けが生まれるのだ。
俺は大公の長子として、フルショア公国の富を独占して良いのだ。
俺の宰相となったダミアンは全てをよくわかっている。学生時代から、やつは頭の切れる奴だった。
奴に任せておけば、大概の事は上手くいった。
そもそもフルショア公国王都は鉄壁の守りを誇る防災都市である。
かつてモンゴロイドの襲来があった時にも、フルショアは長期の防衛戦を戦い抜き、敵の補給不足による撤退まで、長い時を守り抜いた歴史がある。
フルショアの防壁の要となっている守り石は直径30メートルの大岩で、フルショア攻略のキーとなる前面に大きく突き出した天然の砦となっている。
この守り石に魔法部隊を配置すれば、どんな敵をも防ぎきる事ができるのである。
リガリア王国が遠路はるばる増援を寄越したとしても、せいぜい千から数千が限界であろう。
このフルショア王都には約2万近い兵がある。
十分な兵糧も蓄えてある。
リガリアの兵糧が尽きるまで、フルショアが守れば、いずれリガリアは撤退しないわけにはいかないだろう。
風の悪魔が気になるが、所詮は一人では何もできまい。
アダムになど肩入れしたリガリアの馬鹿どもを追い出してから、じっくりとアダムを料理すれば良いのだ。
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