第1話 ノヴァック領-アダム王子視点
いよいよ第4章スタートです。
俺はアダム・シマンスキー・フルショア。フルショア公国第2王子だが、正室の長子であるため、これまでは王太子であった。
先日長らく病床に伏せっていた父大公が死に、第1王子であるダニエルがフルショア公国の次期大公を宣言した。
ついに後継者争いを勃発させてしまったのだ。
ダニエルを担ぎ上げたのはフルショア公国最大の所領を持つダミアン・ビチック伯爵。
ダニエルの母である前大公の第1側室ドミニカ妃の兄の息子である。
つまりはダニエルとダミアンは従弟の関係だ。
ダミアン・ビチックという男は非常に評判の悪い男だった。
フルショアアカデミーで起きた様々な陰惨な事件において、常に裏の首謀者としてかかわりながら、自身は必ず無関係な善意の第3者を演じることで、周りの評判を獲得しているような奴だった。
アカデミー在学中からダニエルと親しく交わり、自身の派閥を大きくすること。自身の収益をあげることに異常に執着する男だった。
その男がダニエルの後ろ盾になっているのだ。
俺に対する暗殺や、俺の派閥に対する攻撃は近いうちに行われるだろう。
現時点での想定ではあるが、フルショア公国の貴族のうち、9割がダニエル派で、俺の方の派閥にいるのは、俺の妻の実家である元宰相のノヴァック家くらいしかないのではなかろうか。
王宮の警備を担当する騎士団も、ビチック家の息がかかっており、親衛隊すらも信用はできない。
このため俺は側近と呼べる数人の部下だけを連れて、王宮の緊急避難通路を使用して、大急ぎで馬車を使ってノヴァック家の別邸に身を潜めた。
さらにはノヴァック家の私兵に守られて、フルショア公国の西の端にあるノヴァック領プハラに逃げ込んだのであった。
プハラはモルダウ川の肥沃な流れの恩恵を受けた土地で、フルショア公国の王都フルショアからは大きな山脈が間にあるため、攻略しにくい土地であった。
王都とその周辺に地盤を作りたいダニエルとダミアンはすぐには俺を追っては来なかった。
ただこちら側も動かせる兵力がノヴァック家の私兵1000人足らずであり、打つ手がないのが実情だった。
ビチック家は単独で5000人以上の兵を動かすことができるだろうし、その他の貴族の兵を集めれば10000人以上にはなると思われた。
俺を王都で取り逃がしてしまったダニエル達は、俺を討つための準備として、フルショア公国の民から戦費調達のための重税を民に課した。
これまでは父大公の方針で、王家は贅沢などせず、民への税負担は極力抑えてきていたのだが、新大公ダニエルの名の元に、一気に搾り取る方向に傾いたのだった。
こうして着実に俺への攻撃準備が整いつつある状況で、リガリア王国から飛空艇に乗って、マリーとハンナがプハラに到着したのであった。
あれほどマリーにはフルショア公国に帰ってきてはならないと念押しをしたにも関わらず、まったくマリーは強情である。
しかしマリーは一人でフルショアに帰ってきたわけではなかった。
マリーの隣には精悍な目をした、美しいリガリア青年がいた。彼はピーター・クーリエと名乗った。
マリーはすでに彼と結婚をしたとの事だった。
ピーターはリガリア王国では王家の友人として、リガリアでは王族に準じる扱いを受けている貴族だった。
また飛空艇の開発者であり、先日マリーとの会話をすることができた無線機の開発者でもあるとの事だった。
そんなピーターがもう一隻の大型の飛空艇に、リガリア王国騎士団の精鋭50人を連れて、我が国に来てくれたのであった。
もしかすると、この後継者争い。
リガリア王国の侵略戦争になってしまうのではという危機感を感じた。
だがしかし、現状彼らの力がなくては我々に打つ手はない。
俺は甘んじて彼らの力を借りることになったのであった。
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