第27話フルショアの危機-マリー視点
フルショアに無線機が届いた日、私はお兄様と無線機で話をする事ができました。
ハンナとエレーヌ、ピーターとエリーゼが同席してくれました。
「マリー、よく聞いてくれ、先日お父様がお亡くなりになった」
無線機からアダムお兄様の声が聞こえてきた。
「お兄様、お父様は安らかに逝かれたのですか?」
「ああ、眠るように息を引き取られた。
ここ一週間は全く意識が回復しないままだったが、それまではよくマリーは元気だろうか?
寂しい思いをしてはいないだろうか?
とお前の事ばかり心配していた」
「お父様は私の事ばかり心配されていたのですね。
本当に親不孝な娘で申し訳ありません」
「いや、お前の事を心配しているのは、お父様だけではなく、私や母もいつも心配しているのだよ」
「お兄様、お母様、マリーはリガリア王国でとても幸せに暮らしています。
困っているようなことは全くありませんから、心配しないでください」
「それを聞いて安心したよ。
この無線機というものは本当に素晴らしいな。
フルショアとリガリアという遠く離れた地にいて、お前とこのように会話ができるなんて」
「この無線機は私の友人のピーターが、リガリア王国の人たちと協力して作り上げたものなのですよ。
私も微力ですが、お手伝いをさせていただきました」
「おー。マリーも発明家の仲間入りをしているのか。それは愉快だ」
「お兄様、お父様がなくなって、フルショア公国は大丈夫なのですか?」
「ああ、それはやはり困った事になっている。
ダニエルの奴が、自分が次の大公であると宣言をしてしまったのだ
それをダミアン・ビチックが後ろ盾になり、国中のほとんどの貴族があちら側についてしまった」
「ダミアンってハンナの兄ですよね」
「ああそうだ。まあ向こうはハンナの事を妹とは思っていないだろうがな。
ビチック家はフルショアで一番力のある貴族だ。先代のマテウスは死んだとはいえ、まだまだその力は衰えていない。
いやむしろダミアンの代になって、あくどさに磨きがかかっているくらいだ」
「お兄様は大丈夫なのですか?」
「今のところはな。
ただ向こうもいつまでも待っていてはくれないだろう。
俺を支援してくれるノヴァック家を頼って、プハラに落ち延びるしかないだろう」
「私もすぐにお兄様の元に戻ります」
「いや、それは絶対にダメだ。
マリーはフルショアに戻ることは許さん。
もしもお父様が生きていたとしても、きっと同じ事を言うだろう」
「いやです。お兄様。マリーはお兄様のお役に立ちたいのです」
「お前がリガリアにいて、リガリアで幸せに暮らしていけることこそが、私の願いだ。
お前がフルショアに帰ってきて、できることなど何もない」
「私からダニエルお兄様を説得して、アダムお兄様と仲直りをしてもらえるようお願いします」
「いや、もうそのような時期はすでに過ぎ去ってしまったのだ。
今や、ダニエルがどうのという状態ではない。
もうダニエルは担がれているだけの神輿なのだ。
本当の実権はダニエルを支援すると言ったダミアン・ビチックのものになっているのだ」
ハンナが拳を固く握りしめて、
「あの時、父と弟と一緒にダミアンの命を奪ってさえいれば・・・・」
「とにかくマリーは絶対に帰ってきてはいけない。
例え私が死ぬことになってもだ。
この言葉は私の遺言として聞いてくれ。
マリーはリガリア王国で誰かと結婚し、リガリア王国の民として暮らせ。
絶対にフルショア公国の地に来てはならない。
わかったな」
「わかりません。マリーはそんな言葉わかりたくありません」
「マリー、私はこれから側近と王宮を脱出し、ノヴァック領に向かう。
なんとか再起を図ってみるよ。
遠い地でお前の幸せを心より祈っている。ではさらばだ」
その言葉を最後に通信は切られてしまいました。
お兄様は無理をしているのだ。
私はなんとしてもお兄様を助けなければならない。
でも今の私一人の力では、お兄様の言う通り、何もできはしないだろう。
先生は無線機開発プロジェクトの時に言っていました。
自分一人の力は小さい。でも自分の応援をしてくれる人が力を貸してくれれば、大きな力になる。その大きな力こそが何かを成し遂げると。
私もリガリア王国で、私に力を貸してくれる人の力を借りよう。
きっと先生は私を助けてくれるはずだ。そしてハンナもいる。
私は一人ではないのだ。
そう決心を決めて、後ろを振り返った時、すでにピーターが私の決心を応援するように微笑んでくれていました。
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