第6話 莫大な借金
星見の水晶が割れてしまって、場は騒然となった。
「なぜ?」
「どうして?」
「何が起こった?」
壊れてしまった水晶を見つめながら、うーん、これってアロン◯ルファとかでくっついてくれないよね? などと無意味な事を考えていた。
壊れた水晶の断面をよく見ると水晶は外側から大きな圧力を加えられて、それに耐えきれずにへしゃげたようになっていた。
俺はごく普通の子供である。神父様が5歳に間違えてしまったように、身体はそれほど大きな方でない。力の方もそれなりで、水晶を握りつぶすような途方も無い馬鹿力などあるはずもないのだ。
「どうやらこの小さなお坊ちゃんは途方も無い魔力をお持ちのようだ」神父様がつぶやいた。
「あのー、どういう事なのでしょう?」メアリーが尋ねた。
「この小さな身体の中に星見の水晶が耐えきれないほどの魔力を秘めている。そうとしか考えられません。末恐ろしい子をお持ちになられましたね。クーリエ子爵」
「でもこの壊れてしまった水晶、どうしましょう?」メアリーは現実的な方向に話を引き戻した。
「これはもうどうしようもないな。水晶を貸してくださったノイヤー伯爵にどう申し開きをすれば良いのやら」ゴードンは渋い表情で頭を抱えていた。
ちなみにこの水晶は金貨10枚もの値段がするそうだ。この世界の貨幣経済では銅貨1枚が日本での100円くらい。銅貨100枚で銀貨1枚だから銀貨は1万円くらいだ。その銀貨100枚で金貨1枚だから、金貨10枚は1000万円にもなる。
あとで教えてもらった事だが、クーリエ領の1年間の税収の上がりは金貨2枚くらいしか無いそうだ。つまりは俺の失敗で5年分の年収が吹っ飛んだという事だ。
流石に寄子の子爵家をぶっ潰してしまうわけにも行かないノイヤー伯爵はすぐに弁償しろとは言わなかった。しかしクーリエ子爵家が返さなくてはいけない莫大な借金を背負ってしまったのは確かな事だった。
細々としたワイン農家が広がっているだけのクーリエ子爵領に降って湧いた災難であった。
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