第5話 マリーとハンナ-
「マリウス様、随分とピーターと親しくされていますね?」
「実はね、ピーターも私と同じ転生者だったの」
それでね、前に乗せてもらった飛空艇の他にも、冷蔵庫や、電話機なんていう、前世で使われていた便利な道具をこちらでも作っていたの。それで私にも手伝ってくれないかって」
「マリウス様、あまりピーターって者を信用なさらない方が良いのではないでしょうか?」
「ハンナ、どういう事?」
「実は言いにくいのですが、私と同室のエレーヌとピーターは婚約をしていますよね。しかしピーターはこともあろうに、エレーヌの使用人のナンシーとも深い仲のようなのです」
「え、それはどういうことなの?」
「はい、エレーヌは実は女性同性愛者みたいなのです」
「すいません。私にはハンナが言っている意味がよくわからないのですけど」
「つまり、ピーターはその~、随分と女性関係が怪しいのです。ですのでマリウス様が本当は女性であると、ばれないようにするべきだと思います」
「そういうことなのですね。わかりました。同じ転生者ですが、気は許さないようにいたします」
「そうなさることが賢明であると思います」
「私の部屋ではエレーヌとナンシーがただれた行為をしていて、私は気の収まる時がございません」
「私はピーターと同室で気兼ねなく過ごせていますよ。ただ前世はアメリカ人男性だったと嘘はつきましたが」
「そういえばマリウス様がお気に入りのクーリエーヌですが、こちらもピーターが作っているそうですね?」
「ええ、クーリエーヌだけでなく、コニャックもピーターが作っているそうですよ」
「あのように素晴らしい酒を、あのようなふしだらな者らが作っているとは不思議ですね」
「ハンナは随分とピーターの事が嫌いのようですね」
「私は常にマリウス様の御身を案じているだけです。
私はマリー様に命を救っていただきました。
私が今日生きているのはマリー様のおかげなのです。
ですので、マリー様の幸せこそが全てで、私はそのためだけに全てを尽くしたいのです」
「そんなに思いつめないで、ハンナ」
「いえ、マリー様には毒ヘビに噛まれて、右脚を切断する以外に手がなかった私の傷を治すだけでなく、完全に毒まで取り除いていただきました」
「私はハンナの生きようとする力をほんの少しだけ手助けしただけの事です。
力を持つものが、救いを求める者のために、その力を使うことは当然の事なのです」
「そればかりか、マリー様は私の母の蘇生まで行ってくださいました」
「あの時は本当にごめんなさい。私の体力が足りなくって、貴女のお父さんと弟さんまで助ける事が出来なくって」
「いえ母だけでも救っていただけて、本当に感謝しております。
それにマリー様は母の蘇生の後、三日三晩、意識が戻らず、大変な思いをされたではありませんか」
「いえ、私にもっと力があれば、全員を救う事が出来たのにと、今でも悔しくて仕方がありません」
「マリー様はどうしてそこまでお優しいのですか?」
「私は前世で、自分が最も大切に思っていた飛田先生を殺してしまうという大きな罪を犯しました。
しかし私が殺してしまった先生は、私を恨むどころか、私の転生にまで、自分の持っているものを分け与えて下さったのです。
私も先生の様に、他の人に自分の持っている全てを分け与える事ができる人間になりたいと思っているんです」
「その飛田先生という方がマリー様の前世のご恩人なんですね」
「そうです」
マリーはもしかするとピーターこそが真里亞の恩人である飛田先生ではないかと思い始めていました。
逆にハンナはマリーの前世の恩人のためにも、ピーターの毒牙からマリーを守らねばと心に固く誓ったのでありました。
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