閑話2 ベクトル教授の優雅な実験室
わしはヘンリー・ベクトル。王立アカデミーで教授をしておる。
わしが王立アカデミーに入学した頃にはまだ王太子であったアベル・ブルボン・リガリアと同室となった。
アベルは地球のドイツという国で前世を送ったという記憶を持つ転生者であった。
彼はのちにリガリアの国王となり、国の制度や、このアカデミーの制度など様々な変革を行った。
彼による大胆な改革により、今でもリガリアはこの大陸最強の王国として君臨しておるのじゃから。
彼が遺した素晴らしい発明品を研究し、いつしかわしがこの国一番の知恵者、発明家、技術者と呼ばれておる。しかし所詮わしは彼のモノマネであり、彼と比べられるような偉大な事は何一つできてはいない。
そんなわしの元にピーター・クーリエは現れた。
ほんの僅か喋っただけで、わしは彼がアベルと同じ転生者であると結論づけた。
アベルと同じで何から何までこの世界の人間とは違うのである。
魔力ではなく、電力などというものを基準に考えているところが、明らかにこの世界の常識ではない。
アベルが発明した作品のいくつかを、彼は事もなげに修理し、さらには改善点を述べてみせた。
アベルが死んでから、メンテナンスができなくなってしまい、飛べない状態になっていた飛空挺を、彼はちょっと見ただけで修理箇所を指示し、さらにはスピードアップと安全性の向上を図ってみせた。
魔石によるエネルギー供給では、魔力のない平民は使えないからと、発電機なるものを課題作品として提出してきた。
確か飛空挺にも似たような構造の物が使用されていたが、ピーターの説明では全く逆の働きをするものらしい。
飛空挺に使われているモーターは電気エネルギーを使用して回転エネルギーを生み出し、プロペラを回す事で、空を進む力を生み出すものだそうだ。
逆に発電機は何かの力で回転をさせると、生まれた回転エネルギーを電気エネルギーに変換するものらしい。
ピーターはこれを風車や水車の軸に組み込み、必要な回転力を確保する事で、バッテリーという魔石の様なものに電気エネルギーを蓄えていた。
魔石から魔力を得るには魔力を持つ者が起動をする必要があるが、バッテリーからはスイッチ一つで誰でも電気エネルギーを使うことができた。
ピーターは誰もが幸せになるために発明品を考える癖がある様であった。
発電機を回すために蒸気機関というものを苦労して作っていたが、作品として発表をしなかった。なんでも過ぎたるものは人を幸せにするどころか、不幸にする事が多いのだそうだ。
その後も電灯、冷蔵庫、クーラーなど次々と発明品を生み出した。
一応世間では、わしはアカデミーでは教授であり、ピーターはわしの弟子という事になっている。
しかし本当は、ピーターがアベルと同じく、わしの師匠なのじゃ。
わしはピーターに感謝している。
ピーターが作ってくれた冷蔵庫で作った氷で、コニャックの水割りを毎晩飲んでいる。
寝室のクーラーも最高じゃ。
ピーターが次に何を持ってくるのか。
何を教えてくれるのか。
毎日がワクワクしておる。
神よ。わしにアベルとピーターに出会わせてくれて本当にありがとう。
こんな老いぼれがこんなにも毎日をワクワクして過ごせるとは。
なんかベクトル教授に賄賂を贈っているようなピーターでした。
読んでいただきありがとうございました。
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