第17話 上級戦闘訓練
中級戦闘訓練を1日でクリアしてしまった俺はガブリエル・オフマン騎士団長が教授を兼任する上級戦闘訓練に参加することになった。
このクラスにはトーマスも参加中であった。
「ピーター、流石だなあ。最短記録を更新して上級まで上がってきたな」
「え、そんな記録あるんだ」
「ああ、中級を一回の授業でクリアしたのは初めてだそうだぞ」
「さて諸君、上級戦闘訓練コースの新人を紹介しよう。君たちも知っていると思うが、今期の新入生代表のピーター、クーリエ君だ」とオフマン団長
「皆さん、よろしくお願いします」
クラスのメンバーはあまり友好的ではない視線で俺を見つめていた。
そういえばオフマン団長って、ジョゼフのお父さんだったっけ?
あんまり似てないなあと思った。
ジョゼフも年を取るとあんなにいかつい感じになるのかな。
さて上級戦闘訓練だが、アカデミー所有のダンジョンの3階で初日の授業が行われた。
アカデミー所有のダンジョンには入り口には転送装置が用意されていて、複数の教官と生徒を指定した階層に送ってくれるようになっていた。
各階層には一種類のモンスターしか登場しないのだ。
ダンジョンの3階のモンスターはゴーレムである。
ゴーレムは守備に特化した魔物だ。
一応腕を振り回して攻撃してくるが、基本鈍いので生徒が攻撃を受ける事はあまりない。
いざという時のために騎士団員が複数で生徒の保護をしてくれていた。
このため生徒はゴーレムに対して魔法を次々と打ち込む事ができる。
俺はとりあえずトーマスの様子を見ていた。
トーマスはゴーレムに火魔法を打ち込んでいた。
ゴーレムに火魔法が当たると、ゴーレムは一瞬炎に包まれたが、次の瞬間には何もなかったかのように元に戻ってしまう。
ゴーレムの耐魔法守備力はかなり高いのだ。
特に土でできたゴーレムには火魔法は効果が出にくい。
トーマスには不利な組み合わせだ。
「ピーター君、見ているだけでなく、中級を1回でパスしてみせた実力を見せて、あっさりとゴーレムを倒してみてくれたまえよ」
周りからちょっと嫌味っぽい声が届いた。
「それじゃあお言葉に甘えて、ちょっとやってみますね」
俺は圧縮魔法をゴーレムの足関節に放った。
俺は無詠唱で、かつ範囲魔法を使用することで、直接手で触れることなく、ゴーレムの体を圧縮してみせた。
ゴーレムの足関節はすぐさま砕けちり、片足を失ったゴーレムは大きく体勢を崩して、地面に倒れこんだ。
俺は続いて倒れたゴーレムと地面に対して拡散の魔法をかけた。
ゴーレムは土が魔力で結合しているようなモンスターだ。
その結合を解いて、分子単位で拡散するようにイメージしてみたのだ。
ゴーレムはサラサラと崩れて砂になっていった。
最後に近くに泉の水があったので、その水を圧縮と膨張を掛け合わせることで、大きな水流を作り出し、砂になったゴーレムを流し去った。
ちょっと嫌味にムカついていたので、きれいさっぱり流してやろうと、おまけまでつけてしまった。
俺に嫌味っぽい事を言った奴は、ゴーレムがあっさりと流れ去ったのを見て、青くなってそそくさと逃げ出して行っていた。
「いやー、ピーター、お前やばすぎだわ」
トーマスが俺の髪の毛をグリグリしながら、抱きついてきた。
「もうちょっと軽めにしておけよ。いきなり飛ばし過ぎだぞ」
相変わらず心配性のトーマスである。
まあ俺のことを本気で護ろうとしての言葉なので、嬉しくもある。
上級戦闘訓練の2回目の授業ではダンジョンの8階に連れていかれた。
この階のモンスターは翼竜プテラで、地球では大昔の恐竜時代に存在したと言われているプテラノドンみたいな魔物だ。
多分プテラノドンよりは小さいのだろう。
高速で空を飛び、鋭い爪と長く尖ったクチバシで攻撃してくる。
翼と体との比率から考えると、風の魔力を使っているのかも知れない。
俺はプテラの周辺の空気を圧縮、拡散させて、大きく気流の流れを乱す事で、プテラを墜落させた。
そうしてちょうどプテラの落ちる場所付近に圧縮成形で土の槍を何本か作っておいた。
落下したプテラはそのまま土の槍に貫かれて生き絶えた。
この実習により、オフマン騎士団長は俺に上級戦闘訓練の合格を告げた。
基礎から通算で4回での上級戦闘訓練合格は最短記録の大幅更新だったようだ。
ごめんね。トーマス。せっかく一緒の授業で会えたのに、先に終わっちゃって。
ピーターの獲得単位数 18 (基礎戦闘訓練2 中級戦闘訓練5 上級戦闘訓練10 行軍訓練1)
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