第15話 コイルを作ろう
銅武器職人のエリックに頼んでいた銅線が出来上がったとの連絡をもらったので、ケルトンの職人街に会いに来た。
「ピーター様、こちらが頼まれましたものです。銅だけで作ったもの。色々と化合したものを試してみました」
流石に腕を見込んだだけに、どれも良い仕上がりで、太さも十分に細くて、曲げやすい上に、強度も十分であった。銅に不純物を僅かに加えて、強度と粘りを出すのに苦労をしたそうだ。
「うん、なかなか良い出来だね。流石は良い腕をしている。電気の流れやすさや、耐久性を試してみたいから、もらって帰るよ」
作ってもらった銅線の半分を受け取り、さらにもう半分にはさらなる加工をお願いした。
「この半分は外皮をつけて欲しいんだ。それと長さを可能な限り伸ばして欲しい」
今回作ってもらった銅線はいわゆる裸銅線だ。電導質だけでできているので。巻いて電気を通すと横漏れを起こしてしまう。
コイルに使うためには非導電質の外皮が必要なのだ。
確か初期に作られていた銅線は外皮に絹糸を使用していたはずだ。
ただ絹糸は高価だし、耐久性にも難がある。
「エリックは陶器に使われる釉薬を知っているか?」
「はい、器の水漏れを塞いだり、模様を描いたりするものですね」
「ああ、その通りだ。その釉薬をこの銅線に塗って焼いてみて欲しいんだ。」
できたらエナメル樹脂を使ったエナメル線を作りたい。
エリックには半分の銅線で、陶器の釉薬として使われている塗料を色々と使って、銅線に焼き付けてもらう加工をお願いした。
サンプルをいくつか作ってもらい、非導電質の遮蔽性と銅線の硬度や扱いやすさを試してみる必要がある。
「塗料はなるべく薄くして、曲げやすさがそこなわれないようにして欲しいが、簡単にハゲてしまっては意味がないからな」
「ピーター様のご注文は難しいものばかりですが、なんとか頑張って良いものを探してみせましょう」
「よろしく頼む」
薄い皮膜で柔軟性を失わず、耐久性が高い外皮塗装が見つかると嬉しいんだけどな。
そうしてエナメル線ができれば、エナメル線を巻いて、コイルを作る事ができる。発電機にも、モーターにもコイルは必要不可欠な部品だ。
フレミングの右手の法則というのを覚えているだろうか?
永久磁石が作った磁界が人差し指方向にあったとしよう。
その磁界の中でコイルを親指の方向に移動するように回転させる。
そうするとコイルの電線には磁界を打ち消すために中指方向に電流が流れるという法則だ。
このフレミングの右手の法則によって、発電機は回転力を電気に変えるわけだ。
磁石が強いほど発生する電圧は強くなる。
逆に磁界がある中で、コイルに電流を流せば、回転力が生まれる。これがモーターだ
こっちはフレミングの左手の法則である。
いずれにしろ、発電機とモーターにコイルと永久磁石が必要不可欠な事が分かっていただけただろう。
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