第14話 王国の飛空挺
王宮での謁見の後、王と皇后、エギル王子とは別れ、ジョゼフとエドガーに案内してもらって、飛空挺を見に行った。
王国の飛空挺は約30mの大きさがある半硬式飛行船であった。
飛行船とは空気より比重の小さい気体をつめた気嚢によって機体を浮揚させ、これに推進用の動力や舵をとるための尾翼などを取り付けて操縦可能にした航空機(軽航空機)の一種である。
飛行船はその構造で硬式、半硬式、軟式の三つに分ける事ができる。硬式は外殻にジュラルミンなどの金属を用いたもの。しっかりとした外殻を作るのが難しいが、大型の物が作りやすい。
軟式は外殻や竜骨と呼ばれる重量を支える構造がないもので、内部に封入するガスの圧力と気嚢によって構造を支えるもので、ガスの圧力が無い状態では構造が維持できない。しかし気嚢の機密性や封入技術の進歩などにより、軽量で大型のものが製作できるようになったので、現代ではほとんどの飛行船がこの軟式だ。
半硬式は簡単な支持構造があり、気嚢は柔軟構造であるため、大型のものは作りにくいのだが、きっとこの世界の技術力でも製作可能であったのだろう。
浮揚のためのガスは水素を使っていた。
水の魔石と雷の魔石を使って、水の電気分解を使用し、水素と酸素に分離したものを使用していた。
ちなみに現代の飛行船では水素ではなく、ヘリウムガスが使用されている。
1937年に発生した「ヒンデンブルク号」の爆発事故を契機に水素利用の飛行船の信頼性は失墜してしまったからだ。
推進機構にはプロペラが取り付けられ、魔石を動力として動かしているようであったが、製作から長い年月使われたために、かなり破損している状態であった。
メンテナンスは頑張っているようだが、流石に回転系の老朽化にはきちんと部品交換が重要だ。
先先代の国王が亡くなった後は、最低限のメンテナンスしかできておらず、気嚢からもずいぶんと漏れがあるようで、かなり危険な状態であった。
この船をもう一度飛ばすには、各部の老朽化部品の交換に加えて、水素ガスから安全なヘリウムガスへの交換と、推進機構の動力改善が必要だと感じた。
まずは構造体の竜骨や、気嚢部の老朽化部品の交換をメンテナンス部隊に細かく指示をして頼んでおいた。
後の二つはこれからなんとか考えていくことにしよう。
まずは電力の利用のための発電機開発。
そして電力を使ったモーターの開発だな。
王様の後ろ盾もいただいた事だし、色々チャレンジをしてみよう。
ただヘリウムガスはちょっと難しいんだよね。
現代ではヘリウムガスは天然ガスから分離されていたはずだが、この世界には化石燃料が使用されていない。
ヘリウムは空気中には僅かにあるみたいだけど、分離して集めるのは難しいんだよね。
ヘリウムは不活性ガスだし。なんとか方法を考えてみないとだな。
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