第10話 PPP-エレーヌ視点
わたくしはエレーヌ・ポムドール。ポムドール公爵家の三女で、王立アカデミーの新入生だ。
本来は入学式で新入生代表の挨拶をする予定だったのだけど、小さな男の子に代表を奪われてしまった。
わたくしはこれまでの人生で負けたと思ったことがありません。
私のお姉さま達も美しく賢い公爵家の美姫と呼ばれていて、上のお姉さまは西隣りのラケルト王国の王太子の正妻になりました。
下のお姉さまはエギル王太子の婚約者に決まりました。
わたくしにもたくさんの縁談が来ていますが、お姉さま達以上に美しく、お姉さま達以上に賢い貴婦人たる私に吊り合う男性などなかなかいません。というか、そもそも男性などみんな醜い者ばかりです。
「そんな完全無欠、眉目秀麗なわたくしがなぜに新入生代表では無いの?」
新入生代表になったのは吹けば飛ぶような子爵家のピーター、クーリエとの事でした。
どんな奴なんだろうと思っていましたが、やっと新入生親睦行軍訓練で初めて会話をする機会がありました。
「ぼ、ぼ、僕の作ったワインを喜んでいただけて、とても嬉しいです。」
綺麗な金髪に、大きな碧い瞳が麗しい、小さなかわいい男の子。わたくしはあっという間に心を奪われてしまいました。
ここ最近のわたくしのお気に入り、「クーリエーヌ」はピーター君が作ったワインだったのですね。
グラスの中でキラキラと光る泡はまるでピーター君の瞳のよう。爽やかな酸味と、鼻をくすぐる甘い匂いは、ピーター君の体臭のよう。
もうわたくし、ピーター君無しでは眠れませんわ。いえいえ、クーリエーヌ無しではって意味で、決してエッチな意味じゃあありませんわ。
でもどうやらそんな風にピーター君に心を奪われてしまったのは、わたくしだけではないようです。
多くの女子達がピーター君を憧れの目で見つめているのに気がつかない筈はございませんもの。これは何か手を打たなくては。
そう思い、わたくしはわたくしの取り巻きをしている回りの子達に、
「ピーター君の純真無垢なハートを汚してしまうような事はあってはいけませんわ」と声をかけてみました。
「そうですわ。誰かが抜け駆けをして、ピーター君を汚してしまっては、リガリア国の損失ですわ」
「ピーター君はまだ12歳。わたくし達が清く正しく導いて差し上げなければ」
みんな口々に同意を表してくれました。
こうしてPPPが誕生したのでした。PPPとはピーター、ピュアハート、プロテクションの略で。つまりはピーター君のファンクラブです。
そうしてわたくしがPPPの名誉会長となりました。
「みんなでピーター君の純真無垢なハートを守る活動をしていきましょう。」
ピーター君の兄のトーマスとはわたくしが交渉をしました。ピーター君のスケジュール管理はわたくし達とトーマスで行う事になりました。
ピーター君によこしまな気持ちで近づいて来るような輩は、わたくし達が追っ払ってみせますわ。
来週の光の日はエギル王太子がピーター君の予定を抑えているんですって。
「んまー、許せませんわ」
「たとえ王族といえども、わたくし達の鉄の結束力でピーター君を守りぬいてみせますわ」
ピーターの知らないところで、ピーターに対する包囲網は確実に絞られて行くのであった。
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