第8話 光の日トーマスと王都で1
今日はアカデミーの休日だ。今日はトーマスが王都を案内してやるとはりきっていた。
トーマスとはアカデミーの中では今週ほとんど会わなかった。エントリーが違うとけっこう接点がないものである。
寮で食事をするのも、朝夕はエギル先輩とその侍従たちとだし、昼はエントリーの合間に軽く食べるので、顔を合わす機会がなかったのだ。
「ピーターはスタートから大活躍の一週間だったなあ」とトーマス
「え、そうかい」
「そうだよ。まずはいきなり新入生代表だろう。そんで次はエギル王子のグループに入っちゃっただろ。そんでもってベクトル教授の実験室メンバー入りね。最後は新入生女子を全員ハーレムにしちゃった事件な」
「え、ハーレムって何だよ?」
「いやー、俺も他から聞いただけだから、詳しく知ってるわけじゃあないけど、エレーヌ・ポムドール公爵令嬢と普通にタメ口きいてたとか。」
エレーヌって公爵家だったのかあ。そうだよなあ、ノイヤー伯爵が直々にワインを贈答するくらいだもんな。
「新入生女子の間ではピーター争奪戦が始まっていて、出遅れたうちの同期女子達がなんとか遅れを取り戻そうと、俺になんとか情報引き出そうと大変だったんだぞ」
「え、トーマスのところにも影響出てるんだ」
「ああ、けっこうな。本当の狙いはエギル殿下なんだろうがな。なんとかピーターを伝にして、エギル殿下の気を引きたいって女子は多いからな」
「あれ、エギルってもう婚約者がいるってエレーヌが言ってたよ。エレーヌの姉だって」
「おいおい、公爵令嬢だけでなく、殿下も呼び捨てかよ」
「だって本人がそうしろって言うんだよ」
「マジかよ。お前どんだけ認められてるんだよ。普通そんなのねーぞ」
「え、そうだったの? アカデミーって外の身分って無関係だって言ってたよねえ?」
「いや確かにそう言うことにはなってるけど、建前と本音は違うんだよ。ちゃんと礼儀作法で勉強しろよ」
「あっ、ロベール先生の授業、もうリタイヤしちゃったよ」
「ありゃりゃ、ほんじゃあピーターはこのままずっと常識外れ路線確定だな」
「だねー」
「おいおい、ちょっとはフォローしているこっちの身になれよ!」
「あ、そういえばフォローで思い出したんだけど、親父に連絡取れる?」
そう言いながら昨日メモした新入生女子達の連絡先をトーマスに渡す
「このリストの所にクーリエーヌを一本ずつ届けて欲しいんだけど」
「これ何だよ?」
「昨日の行軍訓練の時にエレーヌがうちのワインを褒めちぎったんで、みんなが欲しい欲しいって言って、収集つかなくなったんで、一本ずつクーリエーヌをプレゼントするって約束しちゃったんだ」
トーマスは涙目になりながら、俺の肩をがっしりと鷲掴みにした。
「ピーター、このリストをそのまま親父に渡したら、親父の心臓が止まるぞ」
「はあ?」
「だって公爵家、辺境伯家、伯爵家がオンパレードじゃないか。それもうちの寄親のノイヤー様とは敵対している家まで入っているぞ」
「それって、なんか問題になるの?」
「なるに決まってるだろうが。ノイヤー様に反旗を翻して、他の派閥に鞍替えしようとしているって思われるよ」
「あ、そう言う意味になるんだ。別にお金とるわけじゃないんだし、プレゼントってだけだよ」
「いや、むしろお金取る方がよっぽど良い。プレゼントだともらった側は必ずお返しをしなければならないからな」
「そういうもんなんだ」
「特にうちは子爵家でも吹けば飛ぶようなもんだ。贈られた側は貰った物の数倍のお返しをすることになるだろうなあ。もう頭が痛くなってきたよ」
「あちゃー、そんじゃあプレゼントなしにするわ」
「馬鹿かお前は。もうプレゼントするって連絡先までもらってるんだろ。今さら無かったことにはできないよ。わかった。もうお前は何もするな」
「うん」
「とりあえず俺からノイヤー伯爵様に連絡をして、ノイヤー伯爵様からプレゼントをするようにお願いするよ。親父にもそう伝えておく」
「ありがとうトーマス。クーリエーヌの在庫はまだなんとかなるから」
「在庫管理とかちゃんとできるのに、社交は無茶苦茶なんだなあ」
「うん、頼りにしてるよ、兄上」
トーマスは大きな大きなため息を漏らした
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