第2話 アカデミーの入学式
入学試験から2日後に合格発表が行われた。合格者は大体30人くらいだった。20人くらいは落ちちゃったのかな。アカデミーの入学試験は半年に一回あり、例え落ちても何度でも受けることができるのだそうだ。
入学試験問題だけれど、もしかすると毎回あまり大きく変わらないのかも知れないなあ。あの問題であれば十分に準備して回答を用意すればそれほど難しいものではない。逆にもしも毎回あんな問題がランダムで出題されているとしたら、受験対策はあまりにも大変だもんなあと思った。
日本のように試験の傾向と対策、赤本なんてものがあったら楽なのになあと一人で納得していた。まあ大勢が受ける試験ではないからあれで良いんだろう。
アカデミーは1年の中でもっとも昼の時間が長くなる夏至の日に夏休みが始まり、その後2カ月ほどの夏休みの後に新学年となる前期が始まるので今は初秋といっても良い時期だ。そうしてもっとも夜の時間が長くなる冬至の後には新年の休みが1か月ほどあり、その後に後期の授業が行われる。入学試験はこの夏休みと冬休みの終わりの時期に行われていて、合格発表からすぐに入学式があるのだそうだ。
入学式は比較的普通な感じだった。前方にひな壇が設けられた大きな会場の中で、在校生と新入生全員が列になって前を向いて椅子に座っていた。生徒は総勢300人くらいかな。座っている生徒に対して、ひな壇からは王族の入学を祝う挨拶があり、その後に学長の挨拶があり、教職員の紹介などがあり、さらには在校生代表からの新入生への言葉があった後に、新入生を代表して俺の名前が呼ばれた。
「ザワザワ。ザワザワ」
名前を呼ばれた俺を在校生の一人が壇上に案内してくれて、何か挨拶をするように告げられた。
「えー、今期の新入生代表って子供なのか?」
「あいつって魔法実技で鉄の剣を素手で握りつぶしたって言うけど、本当かよ?」
「たしかあいつってトーマスの弟で、あのクーリエ家の怪力次男坊だよなあ」
「けっこうかわいい子じゃない。私はタイプだわ」
「さらさらの金髪が綺麗よね」
壇上に向かう俺に対して、在校生の間で色々な噂話が飛び交う。在校生の中に座っていたトーマスとは目があった。逆に新入生の中には明らかに敵愾心をむき出しにした視線を向ける者が多い。俺のような小さな子供に新入生代表をとられたことに腹を立てているんだろう。一部には羨望のまなざしもあったのだけど。
「ただ今ご紹介いただきましたピーター・クーリエです。王太子殿下。学長先生、教職員の皆様からは温かい歓迎のお言葉をいただき、新入生を代表して感謝の気持ちを述べさせていただきます」
「おー、子供がちゃんと挨拶してるじゃないか!」在校生の間から失笑が沸き起こる
「わたくしはクーリエ領という田舎育ちで、王都での暮らしはどのようなものなのかあまりよく分かっていません。またうちはとっても貧乏な暮らしだったので、礼儀作法を学ぶ機会にも恵まれておりませんでした。皆様の温かい慈愛の心に守られて、このアカデミーで出会えた仲間たちと切磋琢磨をしていきたいと思っております。なにとぞご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。新入生代表 ピーター・クーリエ」
言うべきことを言い終えて、すたこらと自分の席に戻った。一応パラパラと拍手があったので、そんなに問題はなかったのだろう。
読んでいただきありがとうございました。
第2章に入ってきて、けっこうノリノリで楽しんで書いています。これからしばらくは毎日7時に更新をしていくつもりです。
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