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ダブル異世界転生 現代科学で人を幸せにしたい  作者: とと
第1章 クーリエ領の怪力次男坊
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閑話2 ゴードン・クーリエの頭痛

 私はゴードン・クーリエ子爵。クーリエ領の領主という立場だ。私には二人の息子がいる。10歳のトーマスと6歳のピーターだ。兄のトーマスは何から何まで私によく似ていて、結構な世話好きだ。弟のピーターは美しい妻のメアリー譲りのきらきらの金髪と大きな蒼い瞳が特徴的で、体の成長はちょっと遅れているが、その分むしろとても可愛い。


 10歳になったトーマスのために寄り親であるノイヤー伯爵に頼み込んで星見の水晶をお借りしたのだが、ピーターの奴があろうことか水晶を壊してしまった。すぐに伯爵家に馬車で向かい、土下座して謝ったのだが、伯爵家としても水晶がない状態を看過することはできない。


 再度星見の水晶を購入するために必要となる金貨10枚をなんとか返してもらえないだろうかと頼まれた。期限は設定しないが、なるべく早い方が助かると言われても、そう簡単な話ではない。


 元々我が家の収入は年に金貨2枚ほどだ。妻のメアリーは色々と節約してお金を残してくれているが、それは息子たちが王都のアカデミーに行くための教育資金だ。さらにアカデミーに行かせるために家庭教師にもけっこうな費用が必要になるのだ。


 しかし無い袖は振れぬ。家庭教師もメイドも執事も払える給料がないのだ。辞めてもらうしかしょうがない。子爵家としての体面を考えればありえないことだが、せめてトーマスだけはアカデミーに行かせてやりたい。


 それだけ節約をしても10年で金貨10枚を返すのは難しいのではないだろうか?


 そんなことを思っているとピーターが私の事を森に連れて行った。ピーターに連れて行かれたその場所は異様な光景だった。本来森にあったはずの木がすべて倒されているのである。正確には根っこから50cmほどだけは木が立ち上がっていたが、それより上は潰されて倒れていた。


 倒されて数日は経っているのだろう。一部の木は乾燥し始めていた。私はピーターに頼まれてその木を火魔法で焼き払った。普通の火であれば倒して数日の生木を焼き払うのは難しいであろうが、火魔法を使えばそれほど難しいことではない。他の森の木への類焼を防ぐこともできる。


 ピーターは焼き払った森に新しく黒ブドウ畑を作れと言ってきた。なぜ黒ブドウ畑なのだろう。クーリエ領では代々白ブドウを使った白ワイン作りが盛んだが、新しい畑では黒ブドウを使った赤ワインの方が良いとピーターは言うのだ。


 ただ言うだけでなく、ハイジと呼ぶ紫スライムを使って、赤ワインと白ワインの作り比べの実験まで見せてくれた。この子は一体何者なんだ。水晶を叩き壊した魔力といい、魔物を簡単に手なずける様といい、魔王ではないのだろうか。本当に私とメアリーの間にできた子供なんだろうか。


 もう頭が痛くて考えるのが嫌になってきた。とりあえず悪魔に魂を売ったと思ってピーターの言う事をすべて信じて、西の国ラケルトから黒ブドウの苗と技術者を招き寄せた。ピーターは技術者達にワインの作り方を教えている。


 次にピーターは樽とガラスの職人を集めて欲しいと言ってきた。樽の職人は王都から。ガラス職人は南のベルティアから連れてきた。それらの職人とピーターは蒸留酒とスパークリングワインというものを作り出した。


 蒸留酒に使ったのは去年作ったワインで売れ残ってしまった古ワインだ。スライムの体内で出来た蒸留酒とやらをちょっと飲ませてもらったが、鼻の頭をぶん殴られたような衝撃的な味だった。ピーターはこの酒を少なくとも2年、できたら5年以上、樽に入れておいておくと言うのだ。


 1年たったワインでも味がどんどん落ちるのに、そんなに長く置いておいたら飲めるわけがないと思ったのだが、ピーターのやることである。信じるしかあるまい。ピーターは樽を山の麓にある岩の割れ目のスライムの泉という場所に持って行くように頼んだ。そこは1年中ほとんど温度がかわらず、また常に湿気に満ちた場所だった。ここに保存していれば酒の味が落ちず、長く置けばより美味くなるのだそうだ。


 出来上がった酒は新しく作られた透明なガラス瓶に入れられ、これまた新しくピーターがデザインしたラベルを貼って王都に出荷するようになった。しかしピーター、ラベルにブドウの絵を書くのは良いが、ブドウの一粒一粒が紫スライムになってはいないか?


 本当に訳が分からないことばかりだが、ピーターの作ったものは王都で飛ぶように売れ、これまでの10倍以上の値段で取引されるようになった。


 ノイヤー伯爵への借金返済は10年かかっても無理だと思っていたが、なんと4年で完済することになったのだ。


 最近頭が痛いのはノイヤー伯爵がピーターを欲しがっている事だ。星見の水晶を叩き壊した時には恐ろしい悪魔のように言われたが、うちの商売がうまく行っていることを不思議に思って、領内を探らせて、ほとんどのアイデアをピーターが出していることに気がついたみたいだ。


 このままピーターにやりたい放題をさせておくのは不味いのではないか? え、ピーターに王家から督促状が届いた? ノイヤー伯爵だけではなく、王家らもピーターに興味を持ちだしたようだ。この先我が家はどうなっていくのだろう? 私はどうしたら良い? おい、ピーター早く教えておくれ。

読んでいただきありがとうございました。

第2章からは毎日7時に更新をしていくつもりです。


更新頑張れ!

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