第19話 私をスキーに連れて行って
俺はリガリア南東部でアルプ国境にそびえ立つリガリアアルプにいた。
俺はこの地にスキー場を作るのだ。
リガリアアルプは4000メートル級の山々が連なる地域だ。一年中氷河がとけない場所もある。
そんな素敵な場所にゴンドラを建設した。
アルミニウム合金で作られた箱を、鋼鉄のワイヤーで吊るし、モーターでリフトして、人々を山頂に運ぶのだ。
動力は原子力電池を使用する。
山頂からリガリアアルプの美しさを眺める幸せを共有したい。
そして下りはスキー板にその身を預けて、山から一気に滑り降りるのだ。
スキー板を作ってくれたのは、いつものようにエリックだ。
アルミニウム合金とガラス繊維で作り上げたグラスファイバーで板をサンドイッチして、両端には鉄でエッジをつけたスキー板。
現世でも当たり前になったグラマラスなカービングスキー板だ。
そのスキー板に足を接続するための靴とビンディング。
俺の拙い説明を、具現化してくれる神業職人。
そうしてスキーというレジャーが誕生した。
マリーは高校時代、修学旅行でスノボをやったことがあったので、スキーではなく、スノーボード派だ。
そういえば真里亞が2年生の冬に行った修学旅行で、俺は真里亞と一緒にペアリフトに乗った事を思い出した。
その時真里亞は俺と全く喋ってくれなかったので、俺は真理亞に嫌われてるのかと思っていたのだけど、真里亞はリフトに乗っている間中、緊張して喋れなかったことをずっと後悔していて、忘れる事ができない苦い思い出だと教えてくれた。
そんな昔からマリーは俺の事を愛してくれていたんだなあと改めて幸せな気持ちになった。
それなのでちゃんとスノーボードもエリックに作ってもらった。
それもフリースタイルと、アルペンの両方のモデルを取り揃えた。
何十年もの時間を飛び越して、俺とマリーはスキーとスノボを楽しんだ。
それからは俺とマリーは友人達や子供達を連れて、リガリアアルプに度々スノーリゾートにたびたび出かけるようになった。
エヴァに頼んでスキーの映像を撮ってもらい、映画の中のワンシーンとして使ってもらったりもしてみた。
その映画がきっかけでスキーのブームが巻き起こってしまった。
リガリアアルプにスキー場ができてからは、飛空艇や、飛行機の定期便コースもできて、多くの観光客がスキー場を訪れるようになった。
スキーとスノボはリガリアから世界中に広がっていき、俺の死後にはリガリアアルプで最初の冬の世界大会が開催される事になったそうだ。
やはり回転はイレーヌが得意なのだろうな。
滑降なら俺も負けてないけどね。
ただ俺が滑ると追い風参考になっちゃうんだけどね。
連載終了カウントダウン。あと2話です。




