プロローグ
はじめての投稿です。よろしくお願い申し上げます。
俺はふと空を見上げた。そこにあったのはスカートをはためかせて落ちてくる女子高校生。何も考えることもなく、俺は落ちてきた少女を抱きとめた。
ふと気が付けば真っ白な部屋の中であった。いや部屋という概念すら怪しいかもしれない。広いのか、狭いのか、境界があるのか、ないのかもよくわからない。そんな不思議空間に俺は居た。
「あ、こりゃ死んだな」
投稿サイト“小説家になるかも”の熱心な読者である俺は概ね状況を把握した。
案の定神様と呼ぶべき存在が声をかけてきてくれた。
「ほっほっほ、おぬしのように状況をすぐに理解してくれるお客さんは助かるの~」
おいおい、お客さんって、心の中で突っ込みながら
「やっぱり俺は死んだんですか?」
「おー、そうじゃ。みごとに潰れておったぞ。しかしおぬしが受け止めた女子高生の方はおぬしのおかげで死なずにすんだわ」
「その落ちてきた女子高生なんですが、ちらっとしか見えなかったんですが、白井ですよねえ?」
「おぬしはなかなか鋭い眼を持っておったのじゃな。たしかに彼女は白いパンツをはいておったのう。死んだおぬしの顔は彼女のパンツの下敷きになっておってのう。最初に発見した人はおぬしが女子高生にわいせつなことをしようとして潰されたと勘違いしていたくらいじゃ」
「いや、パンツが白かったかどうかって話じゃなく、彼女の名前が白井。確か白井真理亜っていう名前で、俺が担任をしているクラスの女子生徒だったんじゃないかって事をたずねたんですよ」
「ふむ、ちょっと待て。ふむふむ。確かに彼女はおぬしの言う通り、白井真理亜っていう娘らしいのう。まだ生きている人間はわしの管轄外じゃから、ちょっと調べるのに手間がかかるのじゃ」
俺は白井真理亜という生徒の事を思い浮かべる。彼女はたしかに俺の担任をしているクラスに居た。俺は私立の女子高校の化学の教師だ。俺の努めている女子高校は大学の系列校なため、よほどのことがなければそのまま大学に上がることができる。このため外部を受験するような子はほとんどおらず、選択科目となる化学や、物理はかなりの不人気教科だ。一応3年C組の担任をしているのだが、実際に3年C組の授業をすることはなく、化学を選択してくれている生徒が集まって、週に2時間だけ化学の授業をしている。
白井真理亜はその化学を選択してくれている生徒であった。彼女の印象はというと真面目だが、かなり暗いイメージが残っている。印象に残っているのは、彼女の実験に対する姿勢だ。化学の授業時間が短いせいで、なかなか実験を行うような授業をすることができなかったが、彼女は化学の実験は気に入っていたようで、いつも熱心に実験に取り組んでいた。ほとんどの生徒はグループでわいわいとしゃべりながら、俺の説明を聞き逃してくれて、色々とトラブルをまき散らしてくれるのだが、彼女だけは黙々と実験器具にかぶりついていた記憶が残っている。
そうだ彼女はいつも一人だった。友達とつるんでいる姿を見たことがない。もしかするといじめられていたのかもしれない。それを苦にして自殺したのかな。俺がもっと担任としてきちんと見ていれば救えたかもしれないのに。そんな後悔が心をよぎった。
「おい、深刻そうな顔をしておるなあ」
「あー、すいません。ちょっと白井の事を考えていました」
「彼女なあ、さっき死んだわ」
「え、え、え、助かったんじゃなかったんですか?」
「うん、おぬしは確かに彼女を助けた。しかしおぬしを死なせてしまったのは彼女には耐えられなかったみたいじゃ。今度は心が擦り切れて、衰弱しきって死んでしまったわ」
「ってことは、俺は無駄死にですかねえ」
「まあそういうことになるわな。ただ彼女が自殺でそのまま死んでいたら、地獄に落ちてしまって転生できないが、病死じゃから、無事に転生はできるぞい」
「あ、そういうシステムなんですね。それなら多少は役にたてたんですかね?」
「まあそういうことになるな。おぬしはなかなかの善人のようなので、転生させるにあたって、少しボーナスをつけてやろう。なんか転送先に希望はあるかの?」
「おー、神様ありがとうございます。せっかくのお言葉なので、やっぱり転送先は魔法が使える世界が嬉しいです。」
俺は“小説家になるかも”でよくある設定のファンタジー世界で、魔法が使える人生を想像してみた。実は俺は今年で30歳。そしてよくある童貞だ。彼女いない歴は年齢と一緒で、この世界でも魔法使いと自称できる権利はある
「ふむふむ、魔法が使える世界じゃな。あいわかった。おぬし自身もちゃんと魔法が使えるように設定しておいてやろう。他には希望はないかな?」
「神様、ありがとうございます。俺は化学が大好きで、実験さえできたら、あとはもうなんでも良いんですよ。あ、そうだ白井も転生できるんですよね。もしも可能だったら、白井は容姿端麗な女子にでもしてやってくれませんかねえ?」
「なに、おぬしのボーナスをおぬしが使うのではなく、おぬしが助けた生徒に使うのか?」
「いやー、白井のこと、結局救えませんでしたし、もともと俺が白井のことにもっと早くから気がついてやれていれば、そもそもこんな事態にはならなかったわけだろうし」
「あいわかった。おぬしの希望はかなえてやろう。ついでじゃからおぬしとその白井真理亜という娘は新しい世界でであえるようにはからってしんぜよう」
「神様ありがとうございます」
「では、新しい世界に」
白い部屋はまぶしい光に包まれていった