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死後の世界というものは

困った。

俺は死んでしまったらしい。


夏のある晴れた日、俺は彼女を含めた友人達6人と、海水浴に行ったんだ。

海水浴は楽しく、いい思い出になった。が、その帰り道、友人達がいるなか俺だけが暴走車の犠牲になり、即死した。


らしい。


すべては天使みたいな人に伝えられた。

俺は死んだ後、一月ほど眠り続けていたらしい。即死した奴らは、みんなこんなかんじだそうだ。


「・・・よって君には、生き返れちゃうよ権が与えられる。数日間現世へと戻り、自らの気持ちを決めた後、またここへ戻り生き返るかどうか決断せよ。

なお、生き返らないと選択した場合、この一生の記憶を消去し、次の一生を送ってもらう。よく考えるのだ。」


なんか生き返れるらしい。

俺は監視役の天使っぽい人に連れられ現世へと降りた。


「それでは、勝手に行動してください。」


天使は面倒くさそうに言った。いやまて、なんだそのかんじ。


「なんでそんな面倒くさそうなんだよ」


聞いてみた。

天使のくせに面倒くさそうにするとは生意気な。


「だって、今まで生き返れちゃうよ権を行使した人って、いないんですもん。毎回無駄なことしてるんですから、面倒くさいに決まってるでしょう。」


なんだコイツ。

天使っぽいだけか。

とにかく生き返ることができるならいますぐ生き返りたい。が、


「あぁ、あなたの受付は明日からですよ。最近は死ぬ人が多くて混雑しているので、受付がうんざりしてるんで。」


関係ねーよ。うんざりしてるってなんだ。

まぁいいや。明日には生き返れるみたいだし、今日は幽霊ライフを楽しむとしようか。

れっつぽじてぃぶしんきんぐ、だな。



まずは俺の家だ。

家族の楽しそうな明るい声が聞こえてくる。

聞こえてくる。

俺死んだのにめちゃくちゃ楽しそうだな。


「ねぇ、お母さん。

私今度からお兄ちゃんの部屋使ってもいいよね。」


なんだと。

あの馬鹿妹め、俺の部屋を使うなどと百年はやいわ。

だいたい、そういうのは死んだ人を思い出すために、当時のまま残しておくものなんだからな。


「いいわよ。」


いいのか。

まぁそういう性格だしな。母さんは。


「あぁ、お兄ちゃんのベッドの下にある本と、棚にあるビデオは見ちゃダメよ。」


「見ないよ。気持ち悪いもん。」


何で知ってるんだ母さん・・・。

まぁいいさ。そんなもんだよな、普通はさ。


「ねぇお母さん。来月からさ、お小遣い上げてくれるんでしょ?」


「えぇいいわよ。お兄ちゃんの事故の相手から、いっぱい示談金もらったしね。」


この瞬間俺の時間は停まった。示談かよ。

俺は殺されたんだぞ。いきなり車で突っ込まれたんじゃなかったのか。


「でもそんなにあげられないわよ。いっぱいって言っても1000万ないんだから。」


俺は1000万の価値もなかったのか。

いやまぁ、交通事故だもんな。とれて数百万か。仕方ないよな。たぶん。


俺は家から出た。

もうここには俺の居場所はないような気がする。

大学はどうなんだ。

・・・あそこは特に思い入れもないな。彼女にあわせて決めたようなものだしな。

そう思えば、大学に払った金はどうなるんだろうか。俺は死んだんだ。

これも一応退学扱いになるんだろうか。そうなると払った金は全部無駄になるのかな。知らんけど。


なんか色々考えながら空を漂っていたら、友人の姿を見つけた。

なんか俺が死んだっていうのに楽しそうだ。


なんだかな、俺の予想じゃこんなんじゃなかった。

もっとみんな泣いてて、悲しんでて写真とか眺めてて。

一月経ってるからか。

そういえば俺もじいちゃんばあちゃんが死んだとき、めちゃくちゃ泣いたけど一週間ぐらいだったな。

そんなもんなのか。身内でそんなだったら、友人関係ぐらいじゃ全然ダメなのかな・・・。


彼女に会いにきた。

会うといったって、俺は眺めることしかできないんだが。

彼女は今、どうしているんだろうか。


「・・・・・・」


彼女は写真を眺めていた。俺と二人で写っている写真だ。

彼女は今にも泣き出しそうな顔をしている。俺はすぐにでも抱きしめたいが、今の体は彼女をすりぬける。


「もう泣くなよ。あいつもお前がいつまでも泣いていたら、心配して成仏できないぞ。」


親友もいる。こいつは俺とは小学生からの10年以上の付き合いだ。

彼女を慰めてくれていた。さすがは俺のべすとふれんど、だ。

俺が生き返ったら、彼女の次にお前に会いに行くぜ。


「そうかな・・・、でも私・・・そんなに強くないから・・・。」


かわいいぞ。

べりーきゅーと、だ。


「そんなことないって、君は強いよ。あいつのこともきっと乗り越えられるさ。」


「そう・・・かな・・・」


なんだか雲行きが怪しくなってきた。乗り越えちゃうのか。乗り越えないよな。


「だから俺と一緒にやりなおさないか?」


「・・・でも私、まだ彼の事忘れられないから・・・。それにまだそういうこと・・・考えられないから。」


「もう一月も経ったんだぞ。あいつを安心して成仏させてやるためにも、俺は、君に笑顔でいてほしいんだ。」


「そんな・・・それって、ちょっと・・・」


「受け止めてほしいんだ。君に、俺の気持ちを・・・。」


んっ・・・(ちゅー


「・・・私、うん、そうだよね・・・。彼もきっと言ってるよね。

お前は俺の事なんか忘れて幸せになれ、って。」


「きっとそうだよ。あいつはそういう性格だからな・・・。本当にいいやつだから・・・。」


「天国で応援しててね。・・・君。」


できねーよ。

なんだよこれ。え?ネトラレ?

ちゅー見ちゃったよ。やめてくれ。やるならやるで俺の見てないところでやってくれ。

いやまぁ今の俺が見えないのがいけないんだけどさ。


俺はまた空を漂っていた。夜の空を。いい星空だ。

今日一日いろんな場所をまわり、大勢の親戚から友人知人を見てまわった。

誰の生活にも変化はなかった。


「今日はいい一日でしたか〜?」


俺の監視をサボり、現世を漫遊してきた天使モドキが帰ってきた。


「ああ、今日は最高の一日だったよ。クソッタレ」


毒づいてみた。天使モドキは無表情でいう。


「皆そう言うよ。」


マジか。

死んだ奴は皆、このなんともいえないモヤモヤした感じを味わうのか。


「生き返りたいって言った奴はいないってのか・・・?」


「いるにはいますけどね。でも生き返れちゃうよ権は悪い事をした人には与えられないから。

生き返りたいって叫ぶのは悪人ばっかりだよ。」


天使は言った。

生き返れる権利が与えられるのは善人だけってことなのか。

俺って善人だったのか。嘘をついたこともあったんだけどな。

つーか、悪人は生き返りたいのか。

いや、違うか。

権利がもらえない奴は現世を見に戻れない。俺だって現世を見なかったら、即生き返りたいって・・・実際思ったしな。

でもそう思うと、この天使が面倒に思うのもわかるかな。

いや、なんとなくさ。



次の日、俺は自分の気持ちを紙に書いて受付に提出した。


「なぁに、来世でもきっとうまくやれるさ。」

人間はいうほど弱い生き物ではないのかもしれないなぁ、と。案がポッとでてから一時間で書いたので、もっと整理してから書けばよかったかなと。とにかく、死んだ人間の居場所は、意外とすぐなくなるものだ。ということが伝わればいいかなぁと。少し不謹慎な気もするので、不愉快になった人には謝っておきます。すみません

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― 新着の感想 ―
[一言] 読んでいて、思わず笑ってしまいました。 奇想天外な妹が一番良かったです。あと、それにキレる兄もです。 自分も死んだら、こんな風になるのでしょうか?と、つい考えてしまいます。
2008/04/06 22:35 退会済み
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