表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/44

#004「お付き合い」

@鷹取のアパート

ナツメ「それで、和泉くんとはどこまでいったのよ?」

アツコ「博物館と映画館に行ったわ」 

ナツメ「ほうほう。天然発言は無視するとして、それから、どうしたの?」

アツコ「山手に上がって、一緒に画材を見たわ」

アツコ、片手で矢印を作る。

アツコ「このマークの店よ」

ナツメ「指詰め注意?」

アツコ「もう。分かってるくせに」 

ナツメ「それは、こっちのセリフよ。それから、それから?」 

アツコ「三宮で解散したわ」

ナツメ「昭和の逢引か。いまどき、少女漫画よりも健全だわ」

アツコ「物事には順序というものがあるのよ」

ナツメ「何十年かけるつもりよ。もう三十路なのよ?」 

アツコ「そりゃ、あわよくば厄年までに結婚したいけど、仕事も優先したいし」

ナツメ「あぁ、もう。何も言えないわ」

  *

@御影の文化住宅

ヨウゾウ「それで、敦子ちゃんとは、どこまで進展したんだ? 洗い浚い白状したまえ」

イヅミ「えぇと、まず、プーシキン美術館展を鑑賞しました」 

ヨウゾウ「なるほど。『素敵な絵ね』『君のほうが、ずっと素敵だよ』という訳だな?」

イヅミ「そんな、イケメンにしか許されないような、お寒いことは言いませんよ」

ヨウゾウ「ベタなくらいが丁度良いってのに。そのあとは?」

イヅミ「お昼に和食をいただいてから、フランス映画を観ました」

ヨウゾウ「おぉ、良い雰囲気じゃないか。『ジュテーム』『ノン、ノン。きっと、はじかみの味がするわ』『構うものか』という展開が」

イヅミ「待ってません」

ヨウゾウ「濡れ場は?」

イヅミ「全年齢対象です。プロバンスの緑豊かな田園地帯を舞台に、気難しいお婆さんと、いじめられっ子の孫娘とのひと夏の交流を描いた、ハートウォーミング作品です」

ヨウゾウ「次回はレイトショーにしろよ。それで?」

イヅミ「そのあとは軽くお茶して、生田ロードを北へ上がって」

ヨウゾウ「生田神社で安産祈願?」

イヅミ「せめて、恋愛成就でしょう。その手前の都市型ホームセンターで、買い物に付き合ってもらったんです」

ヨウゾウ「何を買ったんだ? 長い夜に備えて」

イヅミ「あいにくですが、そのあとは駅に行きましたよ」

ヨウゾウ「そうか、そうか。お前は蕗谷虹児の雑誌に出てくる好青年か、各務」 

イヅミ「八頭身でも、眼がパッチリした細面ではありませんよ?」

ヨウゾウ「見た目ではない。純粋すぎる。清く、正しすぎる」

イヅミ「慎重に段階を踏んでるだけですよ」

ヨウゾウ「こりゃ、何を言っても無駄だな」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ