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#029「言質取ったり」

@鷹取のアパート

リオ「ママをダメンズウォーカー呼ばわりするな。俺が駄目な父親みたいだろうが。――吸殻、捨ててくれ」

アツコ「その通りじゃない。法の番人のはずなのに、アウトローなことばかりするし、いつも事務所に入り浸って、滅多に家に帰ってこないし。そんな人間に、父親を名乗る資格は無いわ。何か他人に誇れる技能でもあるの? ――何箱吸うつもりなんだか」

イヅミ「お手洗い、お借りしました」

リオ「ロコモコを作らせたら、右に出る者は居ない」

アツコ「呆れた。何も分かってないわ。どうして男って、一つのことに拘るのかしら。ハイ、各務くん。模範解答を、どうぞ」

イヅミ「えっ、僕?」

アツコ「ほら、この前に言ってたじゃない」

イヅミ「いつの話ですか?」

アツコ「忘れちゃったの? 冷蔵庫と相談しながら『あり合わせの物で作るので、どれも六十点くらいの出来になるけど良いですか?』って」

イヅミ「あぁ、そういえば」

リオ「それが模範解答なのか? 女は、百点満点のロコモコを食べたくないのか?」

アツコ「トーストが零点だったら、平均は五十点になるじゃない。第一、朝からロコモコは重い」

リオ「パクパク食べてたじゃん。朝からガッツリと、見てるこっちが胸がすくくらいの食べっぷりで」

アツコ「思春期の恥を晒さないでよ。それに、語弊がある」

リオ「齟齬は無いと思うぜ?」

アツコ「誤謬だらけよ。勝手に脳内修正しないで」

リオ「そっちこそ、思い出補整してるじゃないか。補整するのは下着だけで。わっ、よせ、タンマ」

イヅミ「敦子さん、それは」

アツコ「大丈夫。軽くお灸を据えるだけよ。――品性を叩き直してやるわ」

リオ「良い子だから、灰皿を置け。アタッ」

  *

リオ「和泉くん。パパの頭、大丈夫かな? 血が出てない? 凹んでない?」

イヅミ「出血や陥没はありませんけど、小さなコブになってますね。でも、この程度なら、すぐに引きますよ」

リオ「そうか。和泉くんも気をつけたまえ。この姿は、和泉くんの近未来像であるぞよ」

アツコ「変なことを口走らないの。和泉さんは、お父さんとは違うんだから」

リオ「わかんないぞ。付き合って婚約したばかりのときは良い面ばかり見せてたって、結婚して子供が出来たら悪い面ばかり見る破目になるかもしれない。というより、良い面だと思ってたことが、悪い面に思えてくると言った方が正しいかな。経験者は語る」

アツコ「そんなことには、絶対ならないわよ」

リオ「言ったな? よし、それなら、和泉くんを実証者として、証明してみせてもらわないといけないな」

アツコ「望むところよ」

イヅミ「えぇっ」

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