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#000「改札口で」

@ジェーアール神戸線

アツコ(あぁあ。再び、味気無い生活に逆戻りだわ。働く女性に対する理解があって、束縛したり依存したりしてこない男性って、この国には存在しないのかしら)

車掌「まもなく、三ノ宮、三ノ宮です。この電車、三ノ宮を出ますと、次は芦屋まで停まりません。灘、摩耶、六甲道へお越しのお客様は、二番線に停車中の普通にお乗換えください」

  *

@阪急神戸線

イヅミ(また、色彩の褪せた生活が始まった。どこかに、親の家柄や資産を当てにせず、僕自身を好きになってくれる女性は居ないかな)

車掌「神戸三宮、神戸三宮、終点でございます。新開地、山陽方面へお越しのお客様は、着きましたホーム向かい側、一号線の特急にご乗車ください。ジェーアール、阪神、地下鉄、ポートライナーをご利用のお客様は、お乗換えです」

  *

@三ノ宮駅西口および神戸三宮駅東出口

アツコ「オッと」

イヅミ「ワッ」

イヅミ、尻餅をつき、手を後ろにつく。

アツコ「すみません。大丈夫ですか?」

イヅミ「平気です。そちらは、お怪我はありませんでしたか?」

アツコ「わたしは、何ともないです。立てますか?」

イヅミ、差し出されたアツコの手を握り、立ち上がる。

イヅミ「ありがとうございます」

アツコ「それでは、わたしはコッチなので。失礼します」

イヅミ「海側ですか。僕は山側なので、このへんで。ごきげんよう」

アツコ(ボンヤリした人ね。ちゃんと前を向いて歩きなさいよ。まったく)

イヅミ(セッカチな人だな。何をそこまで急ぐ必要があるんだろう?)

  *

――心理学に、単純接触効果と呼ばれるものがある。初めのうち、関心が無かったり苦手だったりしたものも、何度も見たり聞いたりするうちに、次第に良いと思えるようになる、という効果である。

  *

∞三日後、朝

イヅミ、アツコに会釈。

アツコ、イヅミに会釈を返す。

  *

∞五日後、夜

イヅミ、アツコに笑顔で会釈。

アツコ、イヅミに微笑みを返す。

  *

∞八日後、昼

アツコ「こんにちは」

イヅミ「あぁ、こんにちは。また、お会いしましたね」

  *

∞十日後、夕

イヅミ「こんばんは」

アツコ「どうも、こんばんは。いま、お帰りですか?」

イヅミ「そうです。そちらは?」

アツコ「わたしも、いま帰りなんです」

イヅミ「そうですか」

アツコ「このあと、何か予定は?」

イヅミ「いいえ。あとは家に戻るだけです」

アツコ「あの、よろしければ、一緒にお茶でも」


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