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ちょんまげ=お一人様ひとつ限り

 その日の授業は授業参観だったので、生真面目な俺は眠らずにちゃんと目を開けて授業を受けていた。


「では次、五十嵐燈雁くん、お願いします」

「はい!」


良い子な俺は、教師の呼び掛けに対し、元気な声でハキハキと応答を返し、起立した。


「ぼくのしょうらいの夢は…


そしてそのまま原稿を片手に教師の隣の、教壇の前に立ち、両手に原稿を広げ読み上げるのだ。

と言うのも今日の授業、作文の発表なのである。

パパとママが見てるので良い子にしてたら褒めてくれる筈なので、お小遣いの500円玉を貰った暁には友達と駄菓子を買うのだ。

…小学生かっ!

あ、これ小学校の時の夢じゃね?

次点で俺、実はまだ小学生だった可能性があるな。

どうしよう、社会のお勉強がよくわからないよう…あと国語も。

これからうまくやっていけるのか、僕、ちょっと不安だよぅ。



「…ぼくは人にはできない、とくべつなことをできる力を、初めから持っていてうれしいと思いました。

先生やお母さん、お父さんが言うようにこの力を使って悪い人達を()っつけてあげたいと思ったので、ぼくはしょうらい、けいさつかんになりたいと思います。

だから、けいさつかんになるためにこれからも勉強や運動をがんばりたいと思います」



え、俺って警察官になりたかったの?

初めて知ったわ、そんな事。


大きな拍手が教室に鳴り響く。

教師なんか


「君のように特別な力を持った生徒が、自分の為だけじゃ無く、みんなの為に自分の力を使いたいと言えるような、思い遣りのある生徒に育ってくれて、先生はとても嬉しく、ゔれしく思いますぅぅゔーーー。

ぜんぜいは、みんなのよゔなぁ、ぜいとをぉ、持つことができ、できてぇ

とてもしあわぜでずぅ」


なんて、途中から泣きながら語り始めたりしちゃってるの。

あの頃は何とも思わなかったようだけど、今思い出すとなんかこう…ドン引きですね。



なんとなく思い出して来たけどこれ、この世界での俺の小学校ン時の記憶だわ。

しかしなぜ今になって…もしかして白昼夢?

ライバルとの死闘の最中、窮地に陥った俺は第三の目が開眼した事をキッカケとして刹那のうちに過去の記憶を辿り、重大な約束か何かしらを思い出すのです…

その後、何故か都合よくパワーアップして戦況を覆し、目の前の敵を一方的にボコにしてしまうありきたりな展開を繰り広げる!

「俺の新しい力を見せてやる

くらえっ、エターナルクリムゾンデスカイザー」


イャァァア、厨二の頃の記憶をおもいださせないでぇぇぇぇえ!


掘り返される前の世界での記憶。

前の世界とか真顔で言っちゃう電波系のワタクシは

未だに厨二病を患ってる訳じゃないからな?

信じてくれ、本当だ。

静まれ、我が左腕よ…



 それはさておき、これが夢だという事は認めてやろうじゃないか。

小学生に戻ったついでに過去の黒歴史をさっくり無かったことにしたいとか、小学生にしか許されないスカートめくりを再びやってみたいとか思ってないんだからね!


少し残念だが現実的な話、またどっかで居眠りしてるんだろな、俺。

イケナイ、イケナイ。

思うに睡眠時間が足りてないんだ、だから今日はシッカリ眠りたいと思うので、また明日からまた頑張ろう。


と言うことで今日はこのまま、おやすみー。

夢ならまた時間ある時に見るから、今はグッスリ眠らさせてくれ。




…その日、授業中に居眠りしていた俺はクラスマッチの球技大会という、

美味しいボーナスイベント逃してしまった。


クラスの逞しい男達が、他所のクラスの女子に、ボールやバットを見せつけて競いあって

キャーキャー言われて盛り上がってる中、

俺は一人寂しく眼に悲しみの涙を浮かべながら、教室で弁当を食べる事になりましたとさ。

普段は見られないあの子のうなじが見られたかもしれないのにぃー!


シクシク(T ^ T)



 しかしさあ、子供って単純だよな。

大人が教えたことやテレビで言ってる正義とか、

周りの連中が無邪気に信じ込んでる正しさが

そのまま自分の中の正しさに繋がっててさ、

それに背いた奴、周りから悪い奴と断定された者から、『正しさ』の輪の中から摘みだされる。


あの頃は普遍的な正解の存在を言われるまま信じていて、

それを邪魔してくる悪い奴の存在も疑わなかった。

正義は自分たちのモノで、悪はアイツが振りかざすモノで…

今思えば自分たちの正しさを普遍的にしたいがための、

我儘を通す為だけの引き立て役に過ぎなかったというのに。



でも、成長するに従って、それまでの価値観が少しづつ変わっていって、例えばかけっこが一番速い男の子がモテてたのが、成長段階でサッカーが得意な他の男子に人気を食われたりさ。


魅力的で面白い奴

運動ができる奴

勉強ができる奴


やがてソレは相手を判断する為の価値基準に変わり、いつの間にか物事は単純じゃなくなってる。

かつては同じ『正しさ』の中で暮らしてた連中が、今では別の正しさを信じて行動している。



その辺、俺も例外じゃないからさ。

昔はクラスの人気者だったというのに、今じゃ怖くて口も利けない危険物扱いですから。

かと思えば時たま急に媚びを売ってくる、下心の見え透いた連中も絡んでくるし、世界が変わっても相変わらず俺は一人がお似合いらしい。



 昔は良かったなあ。

あ、この世界での昔の話ね?

あの頃は人より多く殺せる回数あるだけでクラスの人気者だったもん。

それがいざ道徳のお勉強で命の尊さとか言うまやかしを教えられたら、命大事にチキンプレイですよ。

命を粗末に扱うのよくない、ですだぁ?

本当は自分のハジメテを大事に取っておきたいだけでしょ?

それとも自分の命が大事なだけか?


お前らの拳銃は一発しか込められてないけど、俺だけ弾帯巻き付けた機関銃抱えて、仲良く花一匁なんて嫌だよな?


あの人、あの恐ろしい機関銃で次は誰を殺すんだろうってか?

自分は嫌だ、あの子を殺ってよ、次は私の番よ、お願い聞いてよ。


         「あの子に嫌なことされた」

      「許せないね、じゃあ殺ろうか?」

           「わーい、殺ったあ♪」

     「その子に借りパク、でも知らん顔」

     「アイツ、ウザい」

     「殺っといたよ」

      「ありがとう」

   「嫌い」

         「殺れ」

  「はいはい、殺るよ…」

            「キライ?」

           「ヤロウヨ?」

「イヤだよ、アイツ、トモダチだし…」

      「みんなキライなのに?」

       「殺ってくれないんだ」

       「嘘つき」

   「殺れよ」

「ほら、コイツはお前にコロシテ欲しーンだってさ、だよな?」

「嘘だ」

「早くシテよ」


ヤれヤれ


−グサリ…


あーあアイツ、ヤっちゃた

何でコロしたの?

トモダチだったのに、何でー?

許せ無いね〜


は?謝って済む問題じゃ無いよね??

別に悪口言ってただけじゃン

冗談と本気の区別もつかないとかヤメテよね

別に殺ってよほしいとまでは言ってた無いよね

殺レ殺レ、またトモダチが減ってしまったヨ


―― ダレカサンのせいで





本当さ、都合の良い頭の作りをしているよね、アンタら。

お前らかみんなして俺様ワッショイ祭りで盛り上がるから、自分が王様か何かだと勘違いしちゃったじゃないか。

王様が民の為に最善を尽くすのは、上に立つ者として当然の務めだって思ってたよ。

ノブレスオブリージュってやつ?


でもさ、クラスに誰か特別なヤツがいたら、自分も何か特別なんじゃないかって勝手に勘違いしてたお前らもお前らじゃん?

確かに俺はお前らに望まれて殺してあげましたが?

で、それが全部オレのせいってか?



 あれだけ


かーって嬉しいはないちもんめ♪

まけーて悔しいはないちもんめ!


って言って誰を消すかで盛り上がってたのにな。


たーんす長持ちあの子が欲しい

あの子じゃ分からん

相談しましょう、そうしましょう。


そう言って俺を取り合って仲良くヤッテキタじゃん?

嫌いな奴だけ片方のチームに残して、後は機銃を一斉掃射なのです♪

そうやって仲間意識の低い連中を総括して革命の日を夢見てきたじゃん?

で、都合がよくなったら最後、結局俺だけ売れ残るってわけね


俺が怖いの?

たから無視すんの?


あの子だけ特別だと気がついた日には仲良く俺だけ仲間外れですってな。




 遣る瀬無いねぇ、何が遣る瀬無いって、俺だけあんたらの言う不平等で省いて置いて、

いざ自分にとって気に食わないこと、不都合な事が有ると、決まって俺に縋って不公平に人民の選別を迫る。


でも殺して欲しいって?

あの子がキライ?

お願いコロシテだって?

そうやって都合の良い時だけ鼻かんでポイ捨てされるティッシュみたいに話しかけんのやめてくれません?


自分勝手にほざき倒す国民の様相を見るに見かねた俺様は、勝って嬉しい花一匁や負けて悔しい花一匁を十両払ってまとめ買いしちゃいました。

機関銃の一斉掃射でな。

俺以外みんな敗者だよ、これで文句無いだろ?




 本当、遣る瀬無いなぁ、なんだがさ。


大体さ、この世界の数多大勢は一回しか殺せないから、単純に殺せる数が多いやつが強くて、それ以外が雑魚、っていう風潮が歴史的背景からも根付いちゃってるのがデカイよな。


だっていつの時代も生まれてこの方一部を除き、残りの連中は一度きりしか与えられていないもの。


戦争なんてしようが無いよね?

敵兵一匹コロしたら使い物になら無い兵士なんて邪魔なだけだし

率先して殺されて相手の弾数を減らしてくれ無いと後が支えるし。

フレンドリーファイアなんて以ての外。

一人減らしたら壁となって相手方に減らされるのが仕事ですよ?

そんなんだから自分の大切な一回は取っておいて、他の連中にヤってもらって陰に隠れておきましょうって、セコイ考え方が蔓延ってしまうんですけども。

士気なんて敵も味方も最低ラインをスレスレに。

勇敢な連中だけが真っ先にくたばるお涙ちょうだいな感動的システム。

残ったのは自分が大好きネガティブ人間ばかり。


結果として戦争して勝っても、残った兵士を養うのに苦労して勝手にスクラップ帝国ですしね。

もう二度と発光しないケミカルライトでも、コンサートの思い出が詰まった大事な宝物だから、勝手に捨てられたらみんな怒るじゃん?


どうして?あなたの為に頑張って光ってたのに。

俺はお前達の為に戦ったんだぞ?

英雄だぞ?もっと敬え崇め奉れ。

僕らは道具じゃ無い、人間だってヴァ!


ミミズだって

オケラだって

アメンボだって

みんなみんな

生きているんだ

友達なーんだー♪


豚もおだてりゃ木に登る

増長して威張り散らしても使用済みでカチコチになった冷たいカイロである事実に変わりは無いのだからやっぱりゴミはゴミだな。

だから無駄に吠えるな、チネ。

無抵抗に殺される二度と暖まらないカイロを処分する為に、また新たな使用済み製品が生み出されると言う矛盾が生じ、ゴミがゴミを生む化学反応がここに誕生した。

あと次の戦争の敗戦国も。


人権?

何ソレ??

戦に勝つ為には数が必要なんですよ?

次の兵士はどっかから適当に産み出せば良いのですよ、できるだけ数多くね。

さあさあ皆さんサクサクやってサッサとイキましょうね〜、戦に勝つ為に。


―― ズドーンバゴーン


おや、君は他の連中と違って沢山ヤれるみたいだね〜。

丁度良い、君にはコレを使ってじゃんじゃん※※シテもらおう!


―― ビギンビギャンビガ〜ン


きゃー素敵〜白馬の王子様〜

革命じゃー、革命を起こすのじゃー

英雄よ、お前がナンバーワンだ


やれやれ、本当にお前らは自分じゃ殺せない癖して選民意識が強いのな。

そんなわけで、俺が英雄

お前らは俺を崇める群衆

お分かり?

生まれながらにして命の価値が違うんですよ

人より多く人を殺せるだけでね。


さ、今日も頑張っちゃうぞ~


「センセー、この問題はどうやって解いたらいいんですかぁ?」

「ひっ?!

わ、私何か粗相をしましたでしょうか?」


 最近、どうも居眠りが多かったので授業内容が頭に入っておらず、

この調子だと次のテストが不安だったので本腰を入れて予習と復習を再開しようと思い、

授業終わりに教師を捕まえて解けない問題の解説を伺いに参ったわけですよ。


「いや、どうやったこの問題が解けるか聞いているんですけども」

「ごめんなさいすみません許してください!」


で、これが全然うまく行かないんですよ。

会話にならない訳ね。

困っちゃうな、トモダチ(笑)も居ないし…

先生だけが頼りなんだけどなぁ…


 なんとか教師が落ち着きを取り戻すまで、辛抱強く解説の要求を迫ったわけだが、

これだけで早くもお昼休みが終わってしまったのだ。

その後、体調を悪くしたとかで早退しちゃうものだから、放課後に聞くことも出来なくなったし。


 で、あと残り3回人を殺す回数がある校長先生に

「あまり彼を困らせないでくれ」

なる、ふわっとしたお説教をされちゃう始末。


あれ?俺悪くないよね?

若干納得いかなった俺だが、ここ最近の度重なる質問タイムに彼の教師はノイローゼを引き起こしたらしい。

なんでも「次の標的は自分になったから、いつ殺されるか気が気じゃない」ンだと。

しばらく休職するらしいので、少し悪いことをしたかなっと思った。


 仕方がないので校長先生に質問をすることにしたので、最近は校長室に入り浸ることが多くなった。

周囲からは校長を心配する声が多数上がっており、俺の上履きに画びょうを入れる事案と、

付随して「コイツがやりました」という情報がリークされ、

いじめられっ子が俺の前で怯えすくんで保健室送りにされるパターンが定着してきているわけだが?


 勘弁してもらいたいところだわ。

どうせリークした奴も主犯に指示された、別の誰かさんで、

主犯に焚き付けられて俺への特別待遇的な不満を直接ぶつけに来てるんだろう。

で、それに便乗した主犯は我関せず、陰でコソコソ見守る…と。


陰湿すぎる人間関係に、俺はボッチであることを少し誇らしく思うのであった。

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