8話
エピローグ的な第一章最終回です。
その後、彼女、エンマ君は銀髪と尻尾を揺らしてうつ伏せに倒れ込み、そのまま深い眠りについた。
あれは、超強化による反動だね。本来なら黒竜を殺した時点でああなっていても可笑しくは無かったけれど、本能が拒否したのかな。数十秒は遅れて来ていた。
それにしても驚いた、まさかエンマ君が初日に、しかも死なずにあの銀竜……神銀竜を倒すとは。
あれは下級の神に匹敵する程の魔物だったんだけどな。まさか一分足らずで殺すなんて。
「運の要素の方が大きかったんだろうけど、少し出来過ぎだよ。いや、それのずっと前か。【邪神の偽児】の称号を手に入れていた時点から、エンマ君はイレギュラーだった」
神の血と言うものは、人族に対する魔族の血……或いはその逆……の様に、それ以外の種族に対しては身体を破壊する毒になり得る。
それを、事もあろうにエンマ君は、速攻で対応して来たんだ。
だからこその称号、即ち私の偽児。
ただ、あの子が神になる訳ではない。【A'camlayenn】の神話では、神と人との間に産まれた子は半神として崇められるが、実際には人だ。
半神と言う種族は存在しない。結局は人の上位存在が神であるだけで、神から、人から、その中間が産まれる事は無い。
だけど彼女は、何だか違う。
神の素質があるって言うのかな、いつか本当に私をぶん殴りに来そうだ。うかうかしていられないな。
だが、それも良いかも知れない。
私の所まで上り詰めてくれるなら、それはそれで楽しみだ。
スペシャルスキル【遠視】による観察を続ける。
竜を二頭殺した分の強化、嘗ての異世界人の弁によれば、レベルアップ。
恐らくは、そうそう殺される事も無いだろう。私の蘇生も必要は無さそうだ。
それにしても、あの緊迫した作戦の後で、よくあんな寝顔を晒せるな。神銀竜の臭いは他の魔物を寄せ付けないから良いけど、黒竜みたいな上位竜種が来たらどうするんだ。
まあ、あの近くには他の竜種はいないから良いけどさ。
はあ、ま、一応起きるまでは結界を張っておこうか。
多分だけど、もう彼女は相当強い。
邪神領でも十分に生きていけるだろう。
後は、数ヶ月中に邪神領の外に出て行くと思う。
……いや本当に、これが初日。しかも十時間以内。
目を覚ますのは翌日になりそうだけど、これからが楽しみではあるかな。
ふふっ、まあ、いつまでも待っているとするよ、エンマ君。
「君が魔王になる時を、ね」
………
ステータス
名前 不知火炎真
種族 魔族(狐人)
性別 女性
天職 魔王候補
スキル
【交渉】
【拷問】
【吸血】
【隠密】
【気配遮断】
スペシャルスキル
【基本属性魔法】
【竜纏】
【竜之覇気】
ユニークスキル
【枯木も燃えぬ火】
【三歩進んで四歩下がる】
【度忘れさせ】
【揺れに揺るる拳】
【三秒限りの不死身体】
パッシブスキル
【A'camlayenn世界言語】
【A'camlayenn神界言語】
称号
【異世界人】
【邪神の偽児】
【竜殺し】
………