5話
おかげさまでPV1000を超えました。
これからもよろしくお願いします。
また知りたくも無い真実を知った。
あ、いや、これは寧ろ早く知れて良かった情報だろう。
それにしても最弱で国を壊滅させるクラスって、じゃあ最強は? 目の前にいる邪神か。
正直、キロンからはあまり強そうと言う印象を受けない。はっきり言って腕相撲をすれば勝てそうなくらいだ。
しかし、どうやっても倒せるイメージが湧かない。何がどうあってもこの邪神が死ぬと言う事は信じられそうに無い。
仮にキロンの実力の底が知れれば、キロンが倒れるイメージも可能だろうが、そもそもその実力の底と言うのが見えないのだ。
『弱く視える』。これがキロンへの、俺の評価だった。
「そんな魔境から、どうやって生き延びて人里まで下れと?」
「それはエンマ君次第だ」
こいつ、頭イってんのか?
こちとら戦闘経験も無しに魔物の群れに突っ込まされるんだぞ?
「ああ睨まないで睨まないで。流石に何の準備も無しに人外魔境に放り出す程の鬼畜でも無いつもりだよ、私は」
どの口が言うか。って、まだそんな無茶振りをされた訳でも無いな。
「それじゃあどんな措置があるんですか。まさか人間の領域に転移させるとかじゃ無いですよね」
「違うよ、それだと君の格上げにならない。やるからにはやっぱりここら辺の魔物と戦って、大幅に強くなって貰わないと」
やっぱ鬼畜か?
いや、このまま放り出すなんて事にはならないだろうし、そもそも俺が死ぬのはキロンとしても望まない事の筈だ。
異世界召喚を何度も行えるならその限りじゃないけど、そう言う訳にもいかないのだろう。
キロンが『ガイド』なんて物をプログラミング出来たのは、恐らく以前にも異世界召喚を行った事があるからだろう。そうで無くとも、異世界に何らかの形で干渉した事があるのは間違いない。
しかし『成功した』などとも言っていたから、異世界召喚に関して不確定要素の方が強い様だ。
俺はどうやって異世界から人を連れて来るか分からないから、召喚魔術に何を使うのかを知らない。ただ、もし何らかの莫大な対価を必要とし、更に成功する保証が無いのなら、俺を死なせる訳にはいかないだろう。
まあ、後々の為にも強化するのには異論は無い。その為にキロンが何をするかは分かったものじゃないが。
しかし答えは少々意外で結構まともだった。
「差し当たって、エンマ君にはスキルを渡したいんだけど、どうかな?」
「スキルを?」
「うん、ユニークスキル。アタリもハズレもある、名前が違くても効果が重複したりする、世界に一つずつある、君の言う特別だよ」
特別なスキル、ユニークスキル。
そんなものを他人に渡せるのかとも思うが、ここは異世界。何とか出来るシステムがあるのだろう。
「そのユニークスキルを渡すに当たって、眷属の契りを交わす必要があるけど、良いかな?」
「ええ。結局、生き残るのに必要ならば」
よろしい、そんな台詞をつけてみたくなる様な仕草で頷き、キロンは何処からか刃渡りの短いナイフを取り出す。
そして、そのナイフでいきなり掌を掻いた。
血液と共に、視認出来る程の濃密な魔力が流れ出る。キロンはそれを、俺の方に差し出した。
軽く狼狽えていた俺は、その意図に直ぐには気付かなかった。
「私の血を飲む、正しくは血液に含まれる魔力を体内に流し込む。これが唯一と言う訳では無いけど、これ以外だと絵面的にアウトになるから、実質これ一択だね」
言われて、これが『眷属の契り』なのだと察した。同時に、これを行えば血縁に近い繋がりが邪神キロンとの間に構築される事も。
無論、血縁者よりはかなり薄い関係だろう。せいぜい、養子になるくらいの縁の筈だ。
俺は無言で、躊躇なくキロンの掌の傷口を口で覆った。
血を舐め取って喉の奥に送る。血を吸い出してまた喉まで。
それを繰り返す度に、邪神の魔力が体内に入り、巡り、浸透する。
繋がりが何だ、縁が何だ、眷属が何だ。そもそも命と天秤にかけられるものでも無い。
この世界に来てから、初めて話した人……人では無いが……である事もあるのだろうが、嫌いと言う訳では無いし、寧ろ好感すら抱いている。友人に対するようなそれではあるが。
しっかし、不味い。
元の世界でも血を舐めた事はないが、とても不味い。庭に生えてた草の次くらいに不味い。
錆びた金属の臭いみたいな後味がして、しかも何か粘ついたのが口の中に貼り付く様な嫌な感じがする。
吐き気を我慢しながら飲み続け、傷口から血が出なくなったのを感じて口を放した。
二、三歩離れて、何となくキロンの表情を見てみると、キロンは、何とも微妙な感じの笑みを顔に貼り付けていた。
「どうしたんですか?」
「ああ、いや、改めて異世界人の最適化を思い知ってね。普通、人間なら、いや、魔族でも私たちみたいな神族のほんの一部を摂取すると、全身に痛みが走る筈なんだ。これも血の一滴の話。
あそこまで大量に摂取すれば、痛みでショック死しても可笑しくは無い。
これらは他種族を身体に入れる事による拒否反応なんだけど、異世界人だとそれが起こらないみたいだ」
何かとんでもない事になってたっぽいな。てかそうなるんなら忠告ぐらいしろ……って、これはそもそも忠告を聞かなかった俺も悪いな。まあ異世界人には何とも無いって事だから良かったけど。
「何がともあれ、『契り』は為されたんだ。ステータスを見てみな、称号に【邪神の眷属】的なものが増えてる筈だから」
なら早速、【ステータスオープン】
ステータス
名前 不知火炎真
種族 魔族(狐人)
性別 女性
天職 (現在未設定)
スキル
【交渉】
【拷問】
【吸血】
スペシャルスキル
【基本属性魔法】
パッシブスキル
【A'camlayenn世界言語】
【A'camlayenn神界言語】
称号
【異世界人】
【邪神の偽子】
………
あ、スキルが増えてる。
【吸血】だって。キロンの血を吸い出したからかな?
それにしても、相変わらず天職は(現在未設定)か~。
え、白々しいって? うん、知ってる。
現実逃避? してるよ、そんなの。
はい、現実逃避終了。なに? 【邪神の偽子】って。
眷属でも部下でも配下でも無く、偽子?
「その様子だと、予想外の称号が付いてたみたいだね」
うん、正解。
「【邪神の偽子】って言うのが」
「【偽子】って……別に可笑しな事じゃ無いな。あの量の血を飲んだのなら」
え、飲んだ血の量で称号が変わんの?
異世界だからか、同様の儀式でも一遍の結果が出る訳では無いのか。眷属になる為の儀式だからと、必ずそうなる訳では無い様だ。
「それにしても、少し面白い事になったよ」
「面白い? 何がですか」
「いやね、【偽子】の称号持ちは【眷属】の称号持ちよりも主と対等なんだ。それはもう、主と敵対出来るくらいには。
エンマ君にとっては、その称号にはメリットが多い筈だよ。【眷属】よりも強い恩恵が受けられる上に、絶対服従の制約が無い。元々君に命令する気なんて無かったけど」
って事は、下剋上が可能って事か。それに、強い恩恵ってのは、より強い力を授かれると言う事。生き残る上ではかなり重要だ。
服従のデメリットが消えて、他のメリットが強化されたって感じで良さそうだな。
だが一応、念のため。
「他に、【眷属】との相違点は?」
「無いよ。君から私への影響も大きくなる以外は何も無い」
あ、【偽子】って事は仮にも子って事だから、【眷属】よりは深い関係なのか。
互いに齎す影響が大きくなるのは当然だな。
「つまりユニークスキルの伝授も問題無いと」
「そう言う事。差し当たって、君には次の内のどちらかを選んで欲しいんだけど」
ユニークスキル、これが今の本題だった。
ここの地名は知らないが、国を破壊出来る魔物しか居ない場所だ。脱出するにしても強くなるにしても、今のままでは絶対的に弱い。
【邪神の偽子】による恩恵があっても、それは変わらないだろう。
その為のユニークスキル。
不知火炎真が、生き残る為のスキル。
「超強力なユニークスキルを一つか、或いは役立たずしか無いかも知れないユニークスキル群を五つ。君はどちらを選ぶ?」
⚠︎ATTENTION⚠︎
この頃のエンマは、召喚されたと言うカルチャーショックで多少混乱しています。