3話
「それで、魔王業についての説明なんだけど」
キロンは土下座から直り、話も本題に戻した。
しかしキロンさん、もう弄るネタは色々とありますよ?
今は出さないけど。
「魔王になって、世界で暴れ回れって話だったでしょう。討伐されるパターンは嫌ですよ」
「いや、人間と敵対しなくても良いんだよ。具体的には私の、邪神キロンの使徒が頭角を示してくれればいいだけだからね」
はい?
あ、たぶん俺、今すっごい間抜けな顔してる。
頭角を示せばって、何で?
「理由としては、君と私の格上げだ。
まずエンマ君、君は私の召喚魔術で【A'camlayenn】に来た。そして、召喚対象は総じて召喚主の眷属、格下なんだ。
それはいつ如何なる時も変わらない」
「つまり、俺の格上げはそのままキロンさんの格上げになる。と?」
「うん、ナチュラルに呼び方変わったね? まあそれは良いや。
その通り、そこまで理解出来ているなら話は早い。即刻開始して欲しい、ところなんだけど、このままだと君に利が無いから、頷けないんだよね」
よく分かっていらっしゃる。
このままだと、俺だけが邪神に協力する事になって、ギブアンドテイクでは無くギブオンリーになってしまう。
もちろん、何も無くても俺は積極的に格上げ、レベリングをするつもりだったから、何もせずとも邪神キロンの思い通りにはなった。
ただそれだとあまり面白くないので、やはりテイクもあるべきだろう。
「エンマ君のメリットとしてはまず、私の格が上がる事で使徒の貰える恩恵が増える事だね。具体的には、新たにスキルを手に入れたり、スキル効果の増大だったりする」
眷属は主の配下として、その力の一端を受け取れる、と言うよりは主の影響下にあるって言った方が正しそうだな。そして逆も然り、配下の影響を主も受けると言う事だろう。
スキルについてはあんまり分からないけど、Web小説とかだと主の持つスキルの劣化版を強力な配下が使う事が出来る、って感じかな。
あと、同種のスキルを持っていればその効果、強さが何段階かアップするとか。
「君は【A'camlayenn】に来たばかりで、まだステータスを知らないんじゃないかな?」
「ああ、確かに。この手の世界ならそう言うのがあってもおかしくは無いですし」
「まあ、これは説明するよりは見てもらった方が早いね。【ステータスオープン】って念じてみな」
言われた通り、取り敢えず心の中で【ステータスオープン】と念じる。
すると脳内に、ある文字列が浮かび上がってきた。
もしかしなくても、これが俺のステータスなんだろう。
………
ステータス
名前 #不知火炎真__シラヌイエンマ__#
種族 魔族(狐人)
性別 女性
天職 (現在未設定)
状態 正常
スキル
【交渉】
【拷問】
スペシャルスキル
【基本属性魔法】
パッシブスキル
【A'camlayenn世界言語】
【A'camlayenn神界言語】
称号
【異世界人】
………
あれ? ちょっとおかしなスキルがあるなあ?
服をもらう(せびる)為に【交渉】はしたけど、【拷問】は流石に身に覚えが無いのだけど?
それをキロンさんに言ってみると、こんな返事が。
「あれは交渉とは言わないよ、精神的に」
だってさ。
後は、種族が魔族で性別が女性って事だけど、これは邪神の設定でこうなっただけだろう。
「それで、スキルの欄にはどんなものがあったのかな?」
「さっきも言った通り、【交渉】と【拷問】。スペシャルスキルに【基本属性魔法】。パッシブスキルに【A'camlayenn世界言語】に【A'camlayenn神界言語】が」
「うん、一応私は全部持っているね。因みに、今私たちが使っているのは【A'camlayenn神界言語】だよ」
……なんとなく、俺が喋っているのは日本語じゃ無い気はしていたが、やっぱりこの世界独自の言語だったか。
意味は理解出来るし、自然に口から出てくるから疑問にも思わなかったな。
閑話休題。
スキルの方にあるのは分かるから良いとして、スペシャルスキルだ。
「【基本属性魔法】とは?」
「それは、属性魔法系の上位互換だね。スキルの【火】【水】【風】【土】【雷】の属性魔法を取得すると統合されて、【基本属性魔法】になる。
もちろん、それぞれの属性が弱くなるなんて事は無くて、むしろ強化されている。
因みにこの五つの属性は、基本五大属性と呼ばれる」
だからこその上位互換か。
それにしても、スキルの統合か。スキルの数を数えるのが面倒な時には良いかも知れないな。それ以前に、常人がスキルをどれだけ持っているか知らないから、普通が分からないんだけど。
「そもそも魔法の扱いに慣れていないと宝の持ち腐れになっちゃうスキルでもあるけどね。高位の魔法使いでも、自分の適正のある魔法をベースに戦っているし」
「器用貧乏になりがち、と」
「そう。#森精族__エルフ__#や#妖精族__フェアリー__#みたいに数百年から数千年単位で修行出来れば、その限りでは無いんだけどね。
適正のある魔法に限れば、意外と短期で極められるんだけど、三つ以上の適正を持ってる人なんて片手で数えるだけ居れば多い方だし」
逆を言えば適正二つ以下ならそれなりに居ると言う事になるんだが、それでも少ない事には変わりないのか?
それよりも、知りもしない他人の事より自分の事だな。
ずばり、
「俺の魔法適正はどんな感じなんですか?」
これに尽きる。
「君は異世界人だから、【A'camlayenn】に来る前に最適化されてる筈だよね。
だったら、少なくとも基本五大属性には適正がある筈だよ。
あとは特殊属性や固有属性があるんだけど、それについては後で調べるから、今は後回しね」
いや、ちょっと待て。
三つ以上の適正がある奴は世界に五人と居ない筈だよな?
何で異世界人がそれを呆気なく越せる?
「ま、軽く説明すると、この世界の人は世界に適応しているだけだけど、異世界人は世界に最適化される。だから世界のシステムにも最適化されてるから、この世界の人よりも異世界の方がこの世界に馴染みやすいんだ。
元の世界でも居たでしょ、同じ世界でも環境が違う場所に来ると体調を崩しちゃう人とか。異世界人にはそれが無いんだ」
「変な話ですね。この世界に長く居る人よりも、異なる世界から来た人の方が適しているって」
「全くだね。まあ完全にそうである訳では無いんだけど」
「?」
そのセリフの後半、何故か声のトーンが下がったような気がした。
気のせいとは思えないが、今気にするべき事でも無いだろうと、話を続けた。
「まあ良いか。取り敢えずこれで俺のスキルについては把握したかな。まあ使いこなせるかは現在は未知数なんですけど」
「そうだね。後は条件とかでスキルが増えたりするよ。それと行動次第で称号が増えたりね。
称号の効果は人によって変わったりするから、それについては自分で調べるしか無いよ」
それは【異世界人】にも適用されるのか? されるだろうな。異世界人なんて、言っちまえば召喚されれば幾らでも増えるんだし。
寧ろ一様に同じだったらそれこそおかしいだろう。
やっぱりそれも後で調べるとして、次にする事は。
「確認するのは終わったし、次はやはり?」
「そうだね。後回しにするとか言ったけど、もうやっちゃおう」
即ち、俺の魔法適正の確認。