話其の弐拾壱/未来
村に帰った桃太郎は、人間達を説得して回った。
自分の住む村、そして、周辺の村々も。
そして、人間社会の中で少しづつ、
自然保護に対する意識も、より高まってゆく。
数年後には、人間と鬼との交流も始まる。
桃太郎が、その橋渡しをした。
そして、少しづつ人間の社会の中に鬼が、
鬼の社会の中に人間が、交ざるようになっていき、
自然保護という点においては、
協力関係を強める事も出来た。
そして、桃太郎が鬼との話し合いをしてから十年後以降も
人間と鬼は、共存の道を歩んでゆく事となる。
そんな中で、人間と鬼との交配も行われるようになる。
そして、世代が代わる度に、血の交ざった人間や鬼が
増えていく事となり、そんな中で、
今度は、差別という問題を抱えるようにもなる。
そして、時には争い、時には共に笑い、
幾つもの時を重ね、幾つも世代を超えて、
いつしか人間と鬼との間に、
種としての違いは無くなってしまう。
それでも、争いや差別を無くす事は出来なかった。
種としての違いが無くなろうとも、
個としての違いが無くなる訳ではない。
だから、争いや差別は、解決しても解決しても、
次から次へと生じてきてしまう。
そんな中でも、この世界を守る為に、
協力出来る所は協力しながら、歴史を積み重ねてきた。
そして、これからも争いや差別を、
無くす事は出来ないだろう。
でも、それでいいのだ。
例え、争いや差別が悪いものだとしても、
その悪いものを無くしてしまったら、
何が悪いのかが判らなくなってしまうだろう。
悪いものに対して改善しようとする、
その過程を通じて、物事の本質に近づく事も出来る。
だから、争いながらも、この世界を守る為、諦めずに、
それぞれが、それぞれに、出来る事をやっていきながら、
協力出来る所を模索して、出来る所は協力する。
そうやって、歴史を積み重ねていくしかないのだろう。
それは、これまでも、これからも、何も変わらない。
そして、この世界は、まだまだ続いていく。
少しづつ、少しづつ形を変えながらも、
諦めない限りは、ずっと、ずっと続いていく。
めでたし、めだたし。
完