話其の拾弐/誇りよりも情は強し
桃太郎と猿は犬と雉が待つ峠まで戻って来た。
「お待たせ。はい、これ」
桃太郎は二つの卵を雉に渡した。
「本当にありがとう」
雉は礼を述べた。
「それで全部?」
桃太郎が雉に訊いた。
「ああ。それよりも大丈夫か?」
雉が桃太郎に訊き返した。
「何が?」
桃太郎が更に訊き返した。
「俺が随分と突いてしまったけど」
雉は申し訳なさそうにしている。
「本当、突かれた時は痛かったよ。
でも、もう大丈夫だよ」
桃太郎は気丈に応えた。
そして、真剣な表情で雉が言う。
「本当に済まなかった。そのお詫びと、
子供達を取り戻してくれた礼にお前の力になりたい」
「力になりたいって?」
桃太郎が雉に訊いた。
「俺も鬼ヶ島までついて行ってもいいかな?」
雉が桃太郎に伺いを立てた。
「勿論。みんなで鬼ヶ島まで行こう」
元気溌剌に桃太郎が言った。
「ちょっと待った。みんなってお前も行くのか?」
犬が猿に尋ねた。
「ああ。だってお前は鬼ヶ島の鬼の方へつくんだろ。
だったら俺は、この鬼に味方する為に一緒に行く事にした」
猿が犬に向かって言った。
「何だって!?
俺達も、この鬼の味方をしようと話をしていたのに」
犬が不満そうに言った。
「こっちこそ何だって!?だよ。お前はさっき、
鬼ヶ島の鬼の味方をするって言ってたじゃないか」
猿も不満そうに言い返した。
「俺は先程の、その鬼の行動を気に入ったから、
その鬼の方を信用する気になったんだよ」
犬はまだ不満そうである。
「みんな、ありがとう。
だったらみんなで仲良く一緒に行こうよ」
桃太郎が話に割って入って来た。
「何で、こんな奴と仲良くしなきゃならないんだ!?」
犬があからさまな不満を言った。
「先程は済まなかった。無礼を詫びさせてもらう」
突然に猿が犬に謝罪した。
犬はびっくりしたが、すぐに応える。
「謝罪されたら仕方がないな。
俺は、そんなにガキじゃないからな」
そして、猿は雉にも謝罪する。
「卵を盗む無頼、申し訳なかった」
「俺も謝罪してもらえたので異存はない。
子供達も無事だったし、もう何の遺恨もない」
雉も猿の同行を受け入れた。
「みんな、ありがとう」
桃太郎が皆に礼を言った。
「それじゃ、俺は一旦、子供達を女房に届けて来る。
俺は飛べるから、すぐに追い付ける」
雉はそう言うと、二つの卵を抱えて森の中へ消えて行った。
「それじゃ、俺達は一足先に鬼ヶ島へ向かおう!」
桃太郎の掛け声と共に、
桃太郎と犬と猿は鬼ヶ島へ向かって歩き出す。




