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クアレンタベインテ


時は2014年 3月15日




 「お前の『多分』は当てにならねぇんだよ!ボケが!」ドン!と強く蹴り飛ばした部下に怒鳴り声をあげた。愛想のない憎たらしい苦笑いを見せる淳平の手には部下から差し渡された無数の写真が右手の圧によって潰されていた。


「俺はなぁ?姐さんの潔白を持ってこいとお前らに命令したんだよ!それがこんなもん持ってきやがって……お前ら、これ…っ、こんなもんアイツに…くそっ!見せれる訳が…畜生!!ボケが!」

殴る蹴るを繰り返す淳平に部下の叫び声を聞きつけて組員が止めに入るも淳平はやめなかった。

「補佐…っう補佐頼んます、ホンマに申し訳ありやせん…っ!」

「申し訳ねぇなら訳ぇ考えてきぃやボケがァァっっ!」


5人がかりで暴れる淳平を押さえ込むも淳平は口を閉じようともせず、既に青黒く腫れ上がっていた部下の顔が淳平の足に蹴られ強く床に叩き付けられた。これでもかと暴れる淳平に部下はひしひしと土下座を続けた。皆、何があったのか把握できない様子で淳平を押さえ込んだ。

「何があったんですか!?補佐っ!しっかりして下さい!」


止めに入った組員等には暴走する理由が見つからず、普段は冷静な若頭補佐の浅田淳平がココまで取り乱すという事を今までに見た事がなかったのだ。

「はなしやがれっボケどもがっ!」

組全体に響きわたる叫び声で止めに入った組員も淳平の引き攣った気色悪い笑いに、ふいと手を離してしまった。とたんに淳平も我に返り、荒い息を繰り返しす。右手に血だらけの無数の写真をいっその事燃やしてしまいたいくらいに強く、強く握っていた。「はっ……どうしてくれるんだよお前等…」

不気味な笑いに部下が大声で床に頭つけた。

「補佐!ホンマに申し訳ありません!」続ける部下に、組員がこれ以上補佐を暴れさすまいと淳平1人を取り囲む。


「おめぇらどけよっ!俺をなんだと思ってやがるっ!!糞どもがァっ!」


みなガタイが良い組員に囲まれては、淳平はどうにも出来なかった。淳平の怒鳴り声で組内本部に行き渡る程強く、そして今淳平に出来る最高の強がりだった。




ざわざわと近くで組員達が頭を下げ、淳平を取り巻く円に少しずつ道が出来てゆく。



「頭!補佐が!」

「頭!補佐を止めて下さい!」

「補佐がっ!」


あちこちで挨拶と不安がが飛んだ。淳平に傷をおわされた部下達もすぐさま立ち上がり深く頭を下げた。

 「一…っ希…さん……」


淳平は息を呑む。




 そこには、赤毛の男が立っていた。眩しいくらいに肌が白く、長いまつげに隠れる青白い瞳がこちらを見る度に印象を残してくる。クビまで隠れているロングの黒いコートに黒いズボンはより男の美しい肌を引き出している。

 大江一希は大江会若頭である。


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