クアレンターイベインテ
あの人は、いつも何かを手にしていた。
本にボールペン、書類や温かい珈琲、大抵いつも煙草を手にしていたけど、思えばあの人にはとても煙が似合っていた気がする。
白い肌に、判別が付かない瞳の色。髪の一本一本純粋な赤毛が、太陽に当たるとどうしてか白く光り、私にはそれがあまりにも眩しくて、きっと振り向く事も出来なかったんだと思う
声をかけて貰って、手を差し出してくれた事にも気づかないまま、そっぽを向いていたのはずっと私の方で、失って初めて気づく様な、当時はあまりにも幼くて残酷だった。
恋をしてはいけない人に恋をして、愛しあって、そして、あの人の全てを失った。
序章
「弱いものを助け、強いものを挫かねばならないものとする」これは初代大江組、大江健太郎の教えであり、現在7代目まで語り実行されている。極道とは言葉を暴けば外道と隣合わせであり、ヤクザであるからには、博打で極道を飾る事が常識だったが、2011年、東京都、沖縄県で暴力団排除条例の施行と同時に裏の日本全組織の力は弱くなるばかりだった。極道、すなわちヤクザには、住みにくい国になってゆく一方、一つの組織が奇妙な成長を見せていた。表と裏、両方に膨大な利益と権力を見せる、大江会はいつしか日本一とも言われはじめるのだ。
——全ては1人の美しい男からはじまる———