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第八章:試練と覚醒

リオンが13歳を過ぎた頃から、アッシュの指導は一層厳しさを増した。それは、まるで刃を研ぎ澄ますかのような、容赦のない鍛錬だった。打ち身や捻挫は日常茶飯事となり、時には、父の剣から放たれる風の刃が、リオンの体に微かな傷を残すこともあった。


「甘えるな!その傷は、お前の未熟さを物語っているだけだ!」


アッシュの怒声が、稽古場に響き渡る。リオンは、痛みに耐えながらも、父の言葉を必死に噛み締めた。父の厳しさは、リオンの可能性を信じているからこそだと、彼は理解していた。


稽古が終わるたびに、アリサはリオンの元へと駆け寄ってきた。彼女は、リオンの傷にそっと手をかざし、柔らかな光を放つ。


「大丈夫、リオン。少し痛むけれど、すぐに治るわ」


アリサの温かい声と、指先から伝わる魔力の温もりが、リオンの痛みを和らげていく。


「相手のことを大事に思う気持ちが、治癒魔法を成功させるのよ。そして、傷が治った状態を、心の中で鮮明にイメージすることも、とても重要なの」


アリサは、リオンの傷口に触れながら、優しく語りかけた。


「これからは、自分の手を、怪我した部分にあてて、治癒魔法の練習をしてみるのもいいわ。自分の体を、自分で癒す練習。それも、大切な力になるはずよ」


アリサの指導を受けながら、リオンは、自身の体の中に眠る魔力が、以前よりも強く、そして豊かになっていることを感じていた。夜の訓練でも、カップの水だけでなく、枯れかけた草花に魔力を注げば、僅かに緑を取り戻すようになっていた。


そして、この厳しい修行の日々の中で、リオンの心に、ある確信が芽生え始めていた。それは、時折フラッシュバックする、現代日本での記憶。高層ビル、車、飛行機、そして、ボランティア活動。あの夢は、単なる夢ではなかった。自分には、もう一つの記憶、前世の記憶があるのだと、リオンは明確に認識し始めていた。


同時に、アッシュとアリサへの愛情が深まるにつれ、漠然とした「違い」も、よりはっきりと感じられるようになっていた。弟や妹とは、明らかに違う。そして、アッシュやアリサとも、どこか違う。彼らが、自分をどれほど深く愛してくれているかは、肌で感じていた。だからこそ、血の繋がりがないこと、自分が彼らの実の子ではないことを、なんとなく察していた。しかし、その事実は、リオンにとって、恐怖よりも、むしろ感謝の念を強く抱かせるものだった。


リオンが15歳の誕生日を間近に控えた、ある日の夜。いつものように、父と母が、リオンを部屋へと呼び出した。二人の顔には、いつもの優しさに加え、どこか真剣な、そして決意に満ちた表情が浮かんでいた。


「リオン、お前と、大事な話をしたいことがある」


アッシュの声は、いつもより重みがあった。アリサも、リオンの隣に座り、静かに彼を見つめている。リオンは、二人の言葉を待った。この呼び出しが、自分の人生における、新たな転換点となることを、彼は予感していた。


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